第1話

文字数 1,425文字

起)主人公の神宿優太(かみやどゆうた)は、温和だが地味な小学6年生。特別な事と言えばチャイムと共に一番に帰っていく事位だ。その行動をずっと気にかけていたクラスメイトで学級委員長の満島美由は、彼の後を付けるとこにする。すると彼女は見たことない雑居ビルが立ち並ぶ見知らぬ路地にたどり着いていた。
遠くを歩いていた優太が振り返り美由に問う、「お客さん?」
優太の家は雑居ビルの一室で【幽霊専門不動産】を営んでいたのだ。

承)優太の家(兼事務所)に入ると、すでに客と思しき中年男性が応接室に座っていた。長年独身で、40歳を境に中古のマンションを買ったらしい。しかしそこで起こる不可思議な現象に悩まされてあり、藁にも縋る想いでこの事務所を探し当てたと言う。男性の話を聞いた優太は、さっそく彼の家に向かう。美由は強引に同行する。彼のマンションは一見何の変哲も無かった。しかし優太が紋章の入った数珠をかざすと、いなかった筈の女性の霊が、キッチンに立っていた。女性は過去、男性と長年結婚を前提に付き合っていたが、彼女は子供が産めない体であると分かると男性の親族が結婚を大反対。気を病んだ彼女は自殺。その後成仏出来ず地縛霊となり動けなくなっていたのだ。優太は彼女を説得、新しい場所を紹介すると言い、身に着けていた勾玉の中に彼女を吸い込ませた。中年男性が報酬を渡そうとすると、拒む主人公。そのかわりとある場所の地図を渡す
「毎年2回は遊びに行ってあげてください。彼女も喜びます。行っても彼女が出てこなくなるまで、行ってあげてください。」

転)その後優太と美由はとある森林の中にむかう。そこには別荘の様な空き家が並んでいる。しかし優太がその中心に足を踏み入れた瞬間、無数の光が彼らを出迎える。そこは優太が連れてきた魂達が、あの世に行けるまでの期間を過ごす、霊達の安息の地だった。

実は優太は「憑き物筋」という妖怪に生贄を捧げる代わりに一族の繁栄を約束された一族の一人であり、生贄そのものであった。実家は日本で一番大きな不動産会社。一族は優太を恐れ、何でも与えたが、愛情を感じたことは一度もなかった。優太はその能力を自分と同じ寂しくて居場所のないモノに使おうと決めた。それで人目に付きにくい土地を買い、この施設を作ったのだ。 優太の境遇に絶句する美由。そんな最中山を登って来る大量の足音と声が聞こえる。やってきたのは空き家を発見し肝試ししに来た不良高校生集団。

結)不良たちは優太たちをからかいながら、無意味に中を物色し、荒らし始めた。勇気をだして不良に立ち向かおうとする美由。彼女を黙らせようと殴りかかる不良。
万事休すかと思い美由が目を瞑るが何も起こらない。恐る恐る目を開けると優太の本当の姿があった。尻尾が9つ生えた九尾の半妖だ。半妖(優太)は美由に言った。「今日君がつけてきたのは、放課後の遊びに誘ってくれようとしたからだよね。僕がいつも一人で帰るのを気にして。…嬉しかった。誰かに想って貰うことがこんなに幸せな事なんだって初めて知った。ありがとう、きみは絶対、僕が守るよ。」そう言うと、彼は一瞬にして集団を倒し、彼らの中の悪しき心と今起きた記憶を吸い出して食べた。
再びの静寂の中、優太は美由の記憶も吸い取ろうとする。しかし美由はそれを拒む。
「あたしがあんたを忘れたら、誰があんたを想うのよ!」
美由の大きな声と共にその場の魂達が輝きだす。優太と美由が光の中で笑い合っておしまい。
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