お弁当

文字数 1,986文字

「最悪……。お昼休みまで委員会とかブラックかよ。」
「うわ、かわいそ~!あい!頑張れ!!」
「煽ってるよね?」
そんな会話を交わしながら、お弁当をもって席を立つ。ちほが「行ってらっしゃ~い」なんて言いながら、手をヒラヒラ降り、他の友達のところへご飯を食べに行った。
「あ、あいさん……。」
「あ!りおちゃん!」
委員会が一緒のりおちゃんが私の席へ来て、おどおどしながら話しかけてきた。
「い……一緒に行きませんか?」
「うん!行こ!」
敬語なの!?めっちゃ気まずいんだけど何この空気!貼り付けた笑顔をりおちゃんに見せて、私たちは委員会の部屋まで歩き出した。

ほとんど会話もなく、委員会の席につき、二人で無言でお弁当を食べる。あぁー。ちほたちと食べたい!それから委員会が終わるまで私たちは無言を極めたのだ。

「疲れた~。」
あれだけ仲いいちほとも部活は違う。私は運動部だし、帰りはめちゃくちゃ遅い。はぁー。一人で帰るの寂しいな。お昼も一緒に食べられなかったし、今日は最悪だよ。
「あれ?」
暗い夜道に明るい光が漏れる塾があった。そこにはリュックを背負った見覚えのある人影がいた。
「あ、りおちゃん……。」
見つけたけど、声かけてきまずくなるのも嫌だし、ここはスルー。多分あっちも気づかないよね?このまま静かに通れば大丈夫!
「お前うざいの!」
「きゃ!」
「うるさい!喋んなよ!」
反射的に電柱の影に隠れた。りおちゃんが突き飛ばされていた。誰かは分からないけど、3人組に囲まれている。これっていじめられてる?
「お前が頭いいせいで、私がいつも学年1位とれないじゃん!お前のせいなの!」
「すみません……すみません……。謝るからやめて……。」
「謝ればいいってもんじゃないの!」
3人組の中の一人が自分が肩から提げていたバッグを投げた。りおちゃんの腕に命中する。
「きゃ!」
「喋んなって何回言えば分かんの?うるさいんだけど!」
「あんたたちの方がうるさいんだけど?」
私は3人組に聞こえるぐらい大きな声で叫んだ。そのままりおちゃんの方に歩みより、盾になるように前に立つ。
「は?あんた誰?」
「私?私はりおの友達。」
「りおの友達?」
3人は驚いたように顔を見合わせ、あははと笑い出した。
「何がおかしいの?私には分かんないんだけど。」
私は3人を思いっきり睨み回す。その内の1人が私のことをまじまじと見つめてこんなことを言い出した。
「あんた結構可愛いじゃん。今謝ったら私たちのグループに入れてあげてもいいよ?」
「りおの友達なんて嫌でしょ?私たちの仲間になりなよ?」
拳を握った。こいつらには分からせる方がいい。私が拳を振り上げた瞬間、りおちゃんが私の腕に抱きついて止めてきた。
「りおちゃん!!離して!こいつらには一回分からせないと!」
「やめて!ひどいしないで!そんなことしたら、あいちゃんまで悪者になっちゃう!」
私が悪者になる?そのぐらいいいよ!
「りおちゃんはこんだけ言われて、悔しくないの?」
語尾を強くして聞く。りおちゃんはただただ少しだけ笑顔を見せてくれた。それから立ち上がって、私の手を握る。
「帰ります。」
3人組にペコッと一礼して、りおちゃんは駆け出した。私もつられるように走り出す。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「逃げるの?弱虫ね!」
私は立ち止まって振り向く。舌をつきだし、あっかんべーのポーズをとった。その後すぐに走り出す。
「は?何あいつ!」
「生意気にも程があるんですけど!」
やばい。ちょっと怒らせすぎちゃったかな。私が一人反省していると、あははという笑い声が聞こえた。驚いてパッと見ると、りおちゃんが笑っている。私も気がつけば笑っていた。私たちの走る音が夜道に響いていた。

「今日も委員会……。」
「頑張れ~!」
毎度毎度ちほに煽られる。
「あ、あいさん!」
「りおちゃん!」
「一緒に……。」
「行こ!」
私はりおちゃんの手を取る。一緒に駆け出そうとしたら、ちほがあれれ~?と言いながら目を覗きこんできた。
「一気に仲良くなってんじゃん!私も混ぜてよ~!嫉妬しちゃうよ?」
「じゃあ!今日3人で一緒に帰ろうよ!」
「え!いいじゃん!」
やっぱり食いついてきた。
「もちろん!帰りの焼きいもも忘れずにね?」
「分かってるよ~!」
焼きいものこと、わざわざ言ってくるぐらいいつも美味しいのね。うんうん、可愛いね。そんな話をしていると、りおちゃんが不安そうな顔をして聞いてきた。
「わ、私もいいんですか?」
「当たり前でしょ!後、敬語やめよ?」
ちほがすぐに言って、りおちゃんをぎゅっと抱きしめた。
「えぇ!?」
驚いているりおちゃんの声と重なるようにチャイムがなる。
「あ!遅れる!りおちゃん……りお!行こ!」
「う、うん!あ、あい!」
私たちは駆け出した。

お弁当。向かい合って食べるのは美味しくて。一緒に食べるだけで元気が出る。たまには一人もいいけれど、やっぱり皆で食べたいね!!
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