第1話

文字数 1,394文字

 マヤは、おかあさんと、むらはずれのちいさないえでくらしていました。
 チョキチョキ シャシャシャ……
 したのおみせからきこえる、リズミカルなはさみのおと。きんじょのおばさんが、おかあさんにかみをきってもらっています。
「おくさん、こんなかんじでいかがですか?」
「いいねえ。わかがえったきがするよ。」
「とってもおにあいですよ。」
 かいだんで、こっそりかいわをきくマヤ。
(わたしも、おかあさんみたいなびようしになりたいなあ)と、ゆめみていました。

 あるよる、とおいみやこから、りっぱなばしゃがやってきました。
「おしろにきて、おひめさまのかみをきってほしい。むすめもつれてまいれ。」
 ひげをはやしただいじんにたのまれ、みやこへむかったふたり。おしろにつくと、おかあさんだけ、つれていかれました。
「よいか、おおごえをだしてはならぬぞ。」
 だいじんにそういわれましたが、ひろいへやにはいったおかあさんはびっくり。
 マヤとおなじくらいおさないおひめさま。
 ながくてうつくしい、きんいろのかみ。
 それがななつにわれ、へびのようにくねくねしながらのびてきたのです。
「キャ~ッ!」
 さけんだおかあさんは、はいいろのいしにかわってしまいました。

(ああ、やはりだめじゃったか……)
 がっくり、かたをおとしただいじん。ひろまへもどり、マヤへつたえました。
「すまぬ。ははうえは、まじょのまほうでいしになってしまった。」
 おどろいたマヤが、たずねます。
「どうしたらおかあさんは、もとにもどれますか?」
「ひめのかみをきるしかない。ひめがあかんぼうのころ、わるいまじょにのろいをかけられてしまったのじゃ。」
「じゃあ、わたしにきらせてください!」
 マヤがポケットからとりだしたのは、ちいさなぎんのはさみ。たんじょうびにおかあさんからもらった、たからものでした。
 マヤをみつめ、しずかにうなずいただいじん。「わかった、そなたをしんじよう。」

 マヤがおひめさまのへやにはいると、ななつにわれたかみが、くねくねとのびてきました。さきっぽには、ぶきみなあかいめ。
 こわいのをがまんして、にっこりほほえんだマヤ。「まあ、どのこがいちばんかわいいかしら?」
 ぴたりと、かみたちがとまります。
「でもこまったわ。みんなそっくりだもの。わたしならもっとかわいくできるのに……」
 すると、ひとつのかみが、まっかなくちをあけました。「わたしにしろ。わたしがいちばんかわいい。」
 よこから、べつのかみがとびだしました。
「なにをいう。いちばんはわたしだ。」
 するとつぎつぎに、
「わたしだ。」「わたしだ。」とおおさわぎ。
 マヤは、あまいこえでいいました。
「わかったわ。みんなかわいくしてあげる。いっしょにならんで~」
 ななつのかみが、そろってマヤのてのひらにとびこみます。それらをぎゅっとにぎりしめ……チョッキン!
 ぎんのはさみで、いきおいよくきりおとしました。
「ギャ~ッ!」
 ひめいをあげてかみたちがきえ、おひめさまがかおをあげました。さらさらしたきんいろのかみ。うるんだあおいひとみで、マヤにほほえみます。「ありがとう、たすけてくれて。」
 いしになったひとびとももとにもどり、マヤはおかあさんとだきあいました。
「マヤ!」
「おかあさん!」
 こうして、おともだちになったマヤとおひめさま。おかあさんとおしろへいくたびに、ふたりでたのしくすごしています。
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