第1話

文字数 14,829文字

十二支物語
美しい白い雲の上に、神様が暮らしていた。
神様は、天界からその場所の神様として、任命されて来た。
地上には、動物の姿をした神やたくさんの精霊も降りていて、人間達を助けていた。

神様は、地上の世界の景色が見える水晶玉を見て微笑んだ。
精霊たちは、今日も人間を楽にするための仕事をしている。
辛い事もあるかもしれないが、それは幸せになるためなのだ。

「だけど、もしも‥、精霊同士で争いが起これば、大変な事になる。」
神様は、ふと不安に思った。
黒い影が、目の前に広がる美しい白雲の上に現れた。
それは、女の姿であるが不気味である。こちらに向かってくる。

黒い影が、神殿の中に入ってきた。
「悪魔め!」
神様は言い、魔術を出した。
ガタガタガタッ
神様の魔術で、悪魔は地上に降りて行った。
「ああっ!」
神様は、神殿から地上を見た。
少し顔をしかめた。悪魔を地上に降ろしてしまったのだ。

トントントン
ノックが聞こえたので、神様は立ち上がった。
「こんにちは、猫さん。どうぞ、おあがりください。」
「お邪魔します。」
着物を着て、人間のように歩く猫が神殿に上がり込んだ。

「さっき、変な音がしたんだけど、何かあったのかい?」
「女の悪魔が、神殿に入りこんだんです。私が魔術を使って、追い払いました。」
「そうだったのかい。」
「でも地上に落ちたので、また災いを起こさなければ、よいのですが。」
「大丈夫さ。動物の神が降りている。きっと奴らが人間達を守るよ。」

「それよりも、これを見てくれ。この前、江戸時代に行ってきたんだ。」
猫が江戸時代の面白い絵を神様に見せた。
「ははは、こんな物ができるんですねぇ。」
「江戸は楽しそうだよ。早く来ないかなぁ。」

「僕の能力は、時を見せる事。過去も面白いけど、未来を見る方がずっとためになる。」
「はい。あなたは、時を司る神様ですから。」

神様と猫はしばらくの間、談笑をしたり、カードゲームをした。
2人は、兄弟のように仲が良い。

突然、猫が何かに気づいたように、立ち上がって地上を見た。
「どうしたのですか?」
「神様が先ほど言っていた悪魔が、災いを起こしそうだ。災いは災いを呼び、あなたが心配している事が、現実になる。」

「私が心配している事‥?」
「僕は、それが何かまではわからない。誰だって、心の中までは見えないからね。」
「はあ。それでは、すぐに誰かを行かせましょう。」
「その必要はない。僕が行って、やっつけてくるよ。」

猫は雲を呼び、地上に降りて行った。
悪魔は森の中の道で、綺麗な女に変身した。

雲から悪魔を見て、猫は言った。
「誰かを誘惑して、殺すつもりだな。」

猫は、悪魔のすぐ後ろに降りた。
悪魔の女はつり目で後ろを見たので、猫は男に変身した。

灯りが華やかな街に来ると、悪魔は足取りも軽くなった。
悪魔は良い男に声をかけようとしたが女連れだったので、手をひっこめて嫌な顔をした。
悪魔は他の男に声をかけようとしたが、うまくいかなかった。
それは人間に変身した猫が、魔術を使っていたからだった。

灯りは少なくなった。どの店も店じまいなのだ。
悪魔の女は、残念そうに街を出た。

「どこに家があるのかな?」
人間に変身した猫は、森の道に行く女の後を追った。

女は息をきらし、道を外れ、山の森を登り始めた。
「山に入るのか?」

「なぜ、こんな事を。」
猫は人間から動物の猫の姿に変身をして、女の後を追った。
着物が破れた女がたどり着いた先は、小さなお墓だった。

「ミオちゃん、ごめんね、ごめんね‥。」
女は、姉妹を殺したようだ。

猫は、お墓の数を数えた。
「殺したのは、1人じゃないだろう。」

でも女は、一つの墓の前だけで泣き続けた。
猫は言った。
「きっと、はずみで、大事な人を殺してしまったんだな。可哀想に。」

そこに、12の動物の神が集まり始めた。
女には神の姿は見えないので、泣きやまない。
「だって‥、だって、私、辛かったんだから。」

サルが女の頭をなで、鳥が透明の布をかけた。
女は、寝てしまった。
ネズミが聞いた。
「これから、この女の人の事、どうする?」

馬が言った。
「わからない。罪を犯した人の扱いは、難しいんだ。」

十二支は、話合いを始めた。
「この人が、誰を一番好きだったかってことが、問題なんだよ。」
動物たちは、それぞれ自分を指した。

動物たちを見ていた猫はついに、茂みから出た。
「ちょっと待て。僕が、その人を片付けよう。」

「貴様、いつからいたんだ?」
「最初からだ。僕が元々、その人を見張っていた。」

「まさか、殺すつもりか?」
イノシシが聞いた。

「霊界に送るだけだ。その方が、この子のためになる。始終見ていたけど、この子は誰からも必要とされていなかったんだよ。」
「僕が、必要としている。」
犬が言った。
「だけど、君は神だ。人間じゃない。この子は罪人だから、誰からも愛されない。」

猿が、女の額の上に涙を落とした。

「だけど、霊界の入口なんて、どこにあるんだい?」
牛が聞いた。
「僕は、それを呼び出せるんだ。」
猫が言った。

「おいおい、それは、どうやってやるんだい?」
ウサギが聞いた。

「こうやるのさ。」
女を抱えた猫は言い、ニャーオ!!大声で泣いた。

すると、大きな灰色の雲が着て、その中から筒状の雲が出された。
風が強い。猫が言った。
「竜さん、あそこまで運んでくれ。」
「わかった。」
竜は猫を乗せ飛び、見ていた蛇は人間に変身した。
羊は、心配そうに言った。
「あれは、地獄の入口だぞ。」

「うっ。」
物凄い風だ。
筒状の雲の中に、地獄の番人が現れた。
「ご苦労様です。その子をこちらへ。」
「あとの事は頼む。」
猫は番人に女を渡し、番人は消えた。

見守っている動物たちに、猫は手をあげ、動物たちも拍手をしていた。


猫はまた、神様の所にやってきた。
「悪魔を、霊界に送っていただき、ありがとうございました。」
「なんてことないよ。十二支も集まってくれて、僕を手伝ってくれたんだ。」
「そうでしたか。十二支以外にも、動物の精霊はいますが、それぞれに高い能力があるので、十二支からは外れているんです。」

「そうなのかい。」
「猫さんもそうでしょう?」
「ああ、僕にも、時を司る能力がある。」

「でもさ、1人の女のために、12も動物が集まっちゃったら、他の人間達が迷惑するんじゃないか?」
「はい。」
「それに、いずれ争いが起こる可能性だってある。」

「ですから、私、こう考えたんです。」


神様は、12の動物を集めて言った。神様の後ろには、猫も座っている。
「元日の朝、私の所に挨拶に来てください。
一番早く来たものから、十二番目までを、一年ずつ、順番にその年の大将にしてあげましょう。」

動物たちは、喜んだ。
ネズミが聞いた。
「その猫は、含まれないのかい?」
「猫とはなんだい、ネズミ君よ。僕を呼ぶ時は、猫さんと呼んでくれ。」

「すみません。」
動物たちが、ネズミを小突いたり、にらんだりした。

「ね‥猫さん、なぜ、あなたは競争に参加しないのですか?」
「僕はね、君たちにはない、特別な才能を持っている。それは時を司る能力だよ。」

「だけどこの前、地獄の入口を呼び寄せただろう?あれは才能じゃないのかい?」
猪に変身したイノシシが言った。
「あれもそうだよ。僕は能力が高いからねぇ、十二支とは、競いたくないんだ。」

「ええ‥。」
十二支は、少し引いた。

元日までは、時間がある。
十二支は、競争のためのトレーニングを始めた。
騙し合いや不意打ちをして、それもまた競争でもあった。


牛は、草を食べている。その隣では、馬と羊が、短距離走をするための準備体操をしていた。
猿と犬は相撲をし、鳥が行司をしていた。
大きな音を立て雲の中から、竜が現れた。

トラは、昨日のネズミとの会話を思い出しながら、歩いていた。
『明日、一緒にトレーニングをしよう。』
『いいけど、俺とネズミ君とじゃ体が違うから、一緒にトレーニングなんてできるのかな?』
『大丈夫さ。明日の朝10時に、神高原で待ち合わせしよう。』
『わかった。』
『じゃあね、トラさん!』
『おう。』

トラは神高原につき、他の動物の姿を確認したが、まだネズミは来ていなかった。
しかし、いたずら好きのネズミは、石の影に隠れていたのだ。
ネズミはトラの上に乗り、面白そうに笑った。
トラは言った。
「ネズミ君、まだ来ていないなぁ。」

猿と犬の相撲では、尻もちをついた猿が痛そうにしていた。
トラは声をかけた。
「楽しそうですねぇ。」

トラは、ネズミを探すことにした。
「ネズミ君、どこだろう?」

トラはそこら中を探し回り、森の中に入った。
トラは歌を歌いながら、森の中を駆け回った。
「ネズミ君!どこにいる?」

「ネズミ君!」
トラが茂みをかきわけると、人間に変身した蛇が、タヌキの巣をのぞいていた。
鳥の巣のようなところで、卵から、タヌキがかえったところだった。
「しー。」
蛇は、静かにの仕草をした。

「あれ‥、ネズミ君、見つからないなぁ。」
トラがうなだれた時、ドドド‥大きな足音が聞こえたので、振り向いた。
ドンッ
トラは飛ばされた。
「一体、なんだよ!」
「すまん。トレーニングに夢中になっていて、前を見ていなかった。」
それは、猪だった。

「トラさんこそ、どうしてこんな場所にいるんだい?」
「ネズミ君を探しているんだよ。どこかで見なかったかい?」
トラが聞くと、猪は目を垂れ目にしてニヤニヤと笑った。

「ネズミ君なら、君の上に乗っている。」


「このチビ助っ‥いつから俺の上に乗っていたんだよ!」
「ずっと前からだよ。」
トラは、ネズミを追いかけた。

2人は追いかけっ子をして、神高原まで戻り、まだ追いかけっこをした。
途中、トラが崖から海に落ちそうになり、ネズミが他の動物を呼んで、助けた。

トラはネズミを叩き、ネズミはトラに噛みついた。
みんなの前で、喧嘩が始まった。
「やれやれ。」
影から見ていた猫がため息をついた。

夕方になり、動物たちは十二支の住処に戻るために、帰宅する事にした。
犬が言った。
「あのさ、今日、ウサギ君がいないんじゃないか?」
「そういえば、そうだな。」
少し首をかしげ、トラが言った。

「最近、ウサギさんは、葉坂村の奇習に関わっていると言っていました。何か関係があるのでしょうか?」
鳥が言った。

「まさか、ウサギが葉坂に関わっているとは!!」
トラが振り向いて、大きな声を出した。
猿が聞いた。
「葉坂に何かあるのかい?」
「葉坂はなぁ‥、首を狩って、風神雷神を呼び出すという奇習をしている村なんだ。一度、俺が行ってみたんだけど、逆効果だったんだよ。俺たちも神だから、現れると葉坂の人間は喜んでしまう。止めるにも、止めようがないんだ。」

11の動物は、立ち止まって空を見上げた。黒い雲が迫ってきている。

「じゃあ、僕ら、みんなで行こうか?」
犬が言った。
「だから、言ったじゃないか。それは逆効果だ。」
トラが言った。

猫は雲に乗り、動物の様子を見ていた。
「どうするつもりだろう‥。」

11の動物は、駆け出した。
猫は頭を抱えた。
「やはり、みんなで行くか。」

葉坂につくと、村は静まり返っていた。
パチパチ‥囲炉裏の音がしたので見ると、一件の家の中で、男が倒れていた。
「大丈夫かい?」
猿と鳥と犬が助け、男を馬の上に乗せ、羊は心配そうに見た。
「あ‥。」

「一体、何があったんだ?」
人間に変身した蛇が男に聞いた。
「嫁が連れて行かれた‥。」
男は、涙を押し殺すような声で言った。
「お嫁さんが‥?どこに?」
「海岸。」
11の動物は、海岸を見た。
煙が上がっている。

11の動物たちは、神の風と共に、海岸に向かった。

「ああ‥、ああ‥。」
死の恐怖に耐えた。
頭に袋をつけられている。
「ふんっ。」
男は、日本刀を振り下ろした。女の首は飛び、白い袋は真っ赤に染まっていった。
美人が首を狩られる姿と、狩られた後の姿は滑稽でたまらなかった村人たちは、嫌な感じで寄ってきた。

11の動物が、海岸に降り立ったが、もう手遅れだった。
妻の哀れな姿をみた男は、馬から落ち、羊が心配そうに見た。
「己!!」
蛇が言い、猪も目をつりあげた。
猿は怯えていたが、馬が背中を押し、ついに走りだした。
いつもは穏やかな牛も狂ったように、村人と戦った。

トラは、ウサギを探していた。
「ああっ!」
ついに、トラはウサギを見つけた。ウサギは炎の中にいたのだ。
トラは炎の中のウサギを助け出し、ウサギを噛んで、吠えた。

「ああー!!ああー!!」
妻を殺された男が、ついに叫び始めた。
その姿を見た村人たちは、動物たちにやられながらも、にやりと笑った。

蛇が透明な魔法のコブラになり、男を巻いて静かに倒した。

怒った竜が電気を流し、村人たちを倒した。

「悲惨すぎるよ。」
雲に乗った猫が、降りた。
「こいつら全員を、地獄に送る必要がある。」

ニャーオ!!
猫は大きな声で鳴いて、地獄の入口を呼び出した。
竜以外は雲に乗り、村人たちを運ぶことにした。

ふわふわした羊の毛の上に、猿と一緒に、黒焦げのウサギが乗った。

いよいよ、大掛かりな地獄送りが始まろうとする時、風神雷神が現れた。
そして、恐ろしい言葉を言った。

動物たちはひるんだが、村人たちを地獄に送るしかなかった。

大変な出来事が終わると、月がウサギを優しく包み、ウサギは元の姿に戻った。

十二支と猫がとぼとぼ歩いていると、「ホー。」木の上から、紫色のフクロウが鳴いた。
猿が言った。
「フクロウさん。学問の神様であるあなたが、なぜこんな場所にいるのですか?」
「僕たち、今日、大変だったんですよ。村人たちが、女を処刑したので、村人たちを地獄送りにしてきたんです。」
犬が言った。

「知っているよ、ホホホー。あいつらが、学問を少しでも分けてくれれば、幸せにしてやったのに。」
「そうだったのかい?」
「うん。あいつらは、知識を何も分けてくれなかったんだ。ホホホー。」

「だからって、見捨てることないじゃないか。」
「知識をくれなきゃ、僕は力を使えないんだ。」
フクロウは、黄色、黒、赤、緑、紫に色を変え、飛んでいってしまった。

十二支と猫は、ため息をつき、住処に戻った。


「あー、今日も大変だったにゃ。‥カメレオン君、いるかい?‥おーい、眠りの神カメレオン、今日も快眠ミュージックを頼みたいんだ。」
猫がカメレオンを呼ぶと、どこからともなくカメレオンが現れた。

カメレオンは、眠りのための自然の音を流してくれる精霊だ。眠りは人間にとって、必要な物なので、眠りの精霊は他にもいる。
眠りのためのクラシックを流すユニコーン、眠りのための簡単なメロディーを流す妖精。

猫が布団に入り、眠ろうとした時、ある事に気が付いた。
「あの人の亡骸を片付けるのを、忘れていた。」
猫は目を動かし、少し冷や汗をかいたが、
「まぁ、よい。明日やろう。」
今日は眠ることにした。

海の中から小さな頭が出て、海岸にちらばった残骸を見ていた。

次の日の朝、猫は海岸に来た。
「あれ‥、だいぶ片付いている。」
猫は歩いた。
「女の遺体は、このままか。」
猫は、汗をかき、遺体を燃やし、海に潜り、綺麗なサンゴの場所に灰をまいた。

猫が海から顔を出すと、ペンギンが綺麗な石か確認して、袋に入れていた。
「あいつ‥。」

「お掃除ペンギンさん、なぜ君がここにいる?」
「猫さん。私は掃除しに来たの。でも、あなたがやってくれたから、もうする事はない。」
「そうだったのかい。わざわざありがとう。」
「こちらこそ、お礼を言うわ。猫さんに幸運を。」
ペンギンが言い、消えた。
猫の着物は、ペンギンの幸運の力で、モダンでお洒落な着物に変わっていた。


ウサギの調子はまだ悪く、寝込んでいる。
11の動物たちは見守っていたが、鳥の耳が動き、猿も窓の外を見た。
「仕事行ってもいいよ。」
犬が言い、鳥と猿は、外に走って行った。

ちなみに動物たちは、ある程度までは大きさを変えられる。
ブルル
馬が震えて、羊と蛇と馬は仕事に出た。

最後まで見守っていたトラも、ついに仕事に出た。

しばらく眠っていたウサギがゆっくりと目を開けると、目の前に、白衣を着た、顔がコアラの男が立っていた。
「コアラドクター。」

「調子はどうかな?」
「悪いです‥。」
「ふふ、そうかい。でも、すぐによくなる。君は神様だから、大丈夫だ。」
ドクターが魔法で治療をして、ウサギは楽になった。
ウサギが再び目を開けると、コアラのマスコットが置かれていた。

「コアラドクター。」

「ありがとうございます。」
ウサギはコアラのマスコットを抱き、涙をこぼした。

ウサギは悪夢を見て、うなされた。
「みんな‥。どこに行っちゃったの‥?苦しいよ。コアラドクター、助けてよ。」

ウサギが目を開けると、今度は、白衣を着たパンダの顔の男が立っていた。
「はぁ~い。元気ィ?大丈夫だよーん。」

「なんだよ、パンダさんか。コアラドクターの方がいいよ。」
「俺だって、医者だよーん。」
パンダが自分を指し、腰を動かしたり、踊ったりした。

「無理‥。もう僕、死ぬと思う。」
「大丈夫。つか、もう立てるってぇ!」
パンダが、ウサギを起こした。
「まだ、ダメだよ。」
ウサギは一度立ったが、パンダに寄りかかった。

「俺が、おかゆ作ってきてあげるから!」
パンダがおかゆを、ウサギに食べさせた。

気づくと、ウサギはもう一度寝ていた。
目を覚ますと、動物たちがのぞきこんでいた。

「大丈夫かい?」
「うん。コアラドクターとパンダさんが来てくれて、治療をしてくれたんだよ。」
「よかったね。」



クリスマス‥
フラミンゴは、猫がペンギンにもらった着物を真似た服を着て、歩いていた。
「こんにちは。ファッションの神フラミンゴ様に、クリスマスに会えるとは光栄です。」
竜が挨拶した。
十二支は、みんなにクリスマスの幸運を落とすために、今日は集まった。
人間に変身した蛇と、調子がまだ悪いウサギがサンタクロース役で、それ以外は、トナカイとして、そりを引く。
空を飛べるのは、竜の魔法によるものだ。
みんな、サンタとトナカイの衣装をつけている。

フラミンゴが言った。
「今日は、お洒落をしているんですねぇ。」
「はい。今日はクリスマスですから、みんなに幸運を落とすんです。」

「それは、良い事ですわ。」
「フラミンゴ様のお着物、素敵ですね。」
「ありがとう。これは、猫さんの着物なんですよ。私が身につけるのは、最高にセンスの良い物だけです。」
「へぇ~‥。そうなんですか。」

フラミンゴは妖艶に笑い、消えた。

十二支は、幸運の雪を降らせた。


ザッザッ
キツネと狼は、雪山を歩いていた。
キツネが言った。
「なぜ悪魔祓いの俺が、雪山のパトロールをしなければならないんだ。こんな寒い場所で、働きたくない。」
「仕方ないだろう。上の命令に背けば、俺たちの魂が消される可能性だってある。」
「だけど、別に俺たちじゃなくてもいいと思わないか?こんな仕事、白熊にやらせればいい。」
「確かに、それはそうだ。でも山はたくさんあるから仕方ない。」

「だけど、この山も、あの山も、見える山全て、俺たちに任されている。‥なぁ、早く終わらせるために、俺たち別々に、パトロールしないか?」
「だけど、吹雪いたら危険だし、1人では人間を運ぶのが大変だろう?」
「なんて、面倒なんだよ。」
キツネはため息をついた。

「あっ、十二支だ。おーい!」
狼が空を飛ぶ十二支を見つけ、手を振った。すると、十二支も振り返した。

「あいつらには、腹が立つ。」
「そうか?仲が良いのが、うらやましいよ。でも、もう離れ離れになるらしいんだ。なんでも、競争をして、順番に大将を決めるらしいよ。」
「釈迦はくだらない事ばかり考える。」
「釈迦じゃなくて、爺さんの方だ。」
「どっちにしても、胸糞悪い。そんな事やめてほしい。」


近場では、2匹は二手に分かれて、パトロールをした。
「おーい。」
キツネが狼を呼んだ。
「人が倒れてるぞー。」

狼は鋭い目をさせ、上ってきた。
「大丈夫か?」
狼は、顔を近づけた。
「まだ温かい。運ぼう。」

「ええ。でも、もう虫の息だぞ。」
「関係ないさ。」
狼は、万能の魔法使いだ。魔法でそりを出した。

2人が地上に降りる途中、女が倒れているのを発見した。
「女が倒れているぞ。」
キツネが言った。
「本当だ。」
狼とキツネは、女もそりに乗せた。

「また人がっ。」
キツネが、倒れている男を発見した。
狼はため息をついた。
「一度に運べるのは、2人までだ。後で、もう一度来よう。」

キツネが言った。
「君って、万能じゃないな。」
「ああ、もちろん俺は完璧な魔法使いではない。だから、雪山のパトロールを任されている。」

お掃除ペンギンが、十二支が落とした幸運の雪の結晶を拾いながら、山を登っていた。
そりを引くキツネと狼に会い、狼は笑いかけたが、キツネは言った。
「次に会ったら、喰ってやる。」

ペンギンはかまわず、幸運の雪を探し続けた。
そして、森の奥まで入った時、男を見つけた。
ペンギンは、拾い集めた幸運の雪を、男の上に落とした。

「幸一!幸一!(こういち)」
村人たちが、先ほどの男を探しに来た。
ペンギンは、地蔵の隣で地蔵になりきり、難を逃れた。


はぁはぁ‥
キツネと狼が舌を出し、息を切らしながら、再び山に登ってきた。
倒れていた男が村人たちに運ばれてきたので、キツネと狼、影に隠れた。
「なんとかなったみたいだな。」
「ああ。」

透明な美しい象が来た。
象は、良心の神様だ。美しい良心を持つ者の前に現れる。
「良心の神である象が、俺たちの前に現れたぞ。」
狼が言い、キツネは息を飲んだ。
象は、優しいまなざしでこちらを見つめ、ゆっくりと消えた。

「あはは、こんな場所で象に会えるなんて、良かったな。」
「うん。」
「俺たちが認められたという証拠だ。」
狼は言い、これで魔法力が高まればよいと思い、笑った。

2匹は、住処に戻った。

今日パトロールをしなかった山で、男がもうすぐ死にそうになっていた。
可愛らしい白い子ヤギが、近づく。子ヤギは安心感をくれる精霊だ。
男は、うっすらと目を開け、子ヤギをなでると、子ヤギは男をなめた。

男は、子ヤギを抱き目を閉じた。

ドクンッ
狼は、その光景を夢で目撃し、目を覚ました。
二段ベッドの下にいるキツネを見ると、キツネは寝返りをして壁側を向いた。

「人が死んでいるが見えたんだ。見に行こう。もしかしたら、助けられるかもしれない。」
狼が言うと、キツネが言った。
「死んでいるのが見えたのなら、もう助からないだろう。」

「でも、行ってみようよ。それが俺たちの仕事なんだから。」
「やだ。もっと眠りたい。」
キツネは布団をかぶり、ぶるぶると震えた。

チリリーン
可愛らしいピンク色のリボンがついた白い子猫が、しっぽを振った。
白い子猫は愛をくれ、黒い子猫は知力をくれる。

キツネは少し優しい気分になり、布団から出た。

狼とキツネが山に登ると、やっぱり男が死んでいた。
「もう息をしていない。」
キツネが確認をした。

「来るのが遅れて、すまなかった。‥でも、こんな場所に来る君だって悪いんだぞ。」
狼が言い、キツネは心配そうに狼を見た。

「ホー。」
白フクロウが木の上で鳴いていた。
「フクロウめ。死んだ男の知識を盗みに来たんだな。」
キツネが言った。

「ホー。そう。でも、この人は何もくれなかった。」
フクロウが言い、狼が怒って何か言った。
フクロウと狼は言い争いになり、狼は吠えて、フクロウを追いかけたが、フクロウは消えた。
その様子を、オコジョが見ているのに気がついた狼は、「人間が来たのに、何もしなかったんだな。」と怒鳴ると、オコジョは驚いて隠れた。

「君は‥?」
キツネの前に、子フクロウが現れ、巻物にサインをした。
子フクロウは、人間の人生の物語を書いている精霊である。

すると狼が吠えながら、子フクロウに向かってきたので、子フクロウは消えた。

「仕方ない。この人間は置いて行こう。」
キツネが言った。
「え‥?」
「だって、死んだ人間を運ぶわけには、いかないだろう?時には人間達に雪山に来たら、死ぬという事を教えてやらないと。」

「そんなことする必要はない。この男を村まで、運ぶぞ。」
狼がそりを出したが、キツネは目をぎゅっとつぶり、歩き出した。

狼がキツネの後を追い、言った。
「だけど、あの人、可哀想だろう?」
「仕方のない事だよ。自業自得さ。」

ゴオオ
大きな音がするので見ると、大きなドラゴンが飛んでいた。
「ドラゴンだ。十二支の竜のお父さんだよ。」
キツネが言った。
ドラゴンは金色の光を降らした。
それは、キツネの鼻の上に落ち、キツネは泣いた。

狼はゆっくりと男の方に登って行った。
キツネは、やっぱり、前を向いた。自分が人間だった頃、雪山で死んだ事を覚えていたのだ。
そして、もう一度、戻る事にした。


クリスマスから大晦日まで、とても忙しい日々が続いたが、合間をぬって、十二支はトレーニングをした。
ネズミは馬の頭から背中まで、滑り台のように滑り、ジャンプして、羊の上で昼寝をした。
蛇は人間の姿で地面に這いつくばると蛇に変身して、他の動物の間をぬって走った。

体が小さなネズミは、他の動物にはかなわない。ネズミは言った。
「僕だけが体がこんな小さいから不利だよ。誰か、僕を乗せて運んでくれ。途中まででもいいからさ。」
「え‥。」
動物たちは顔を見合わせた。

竜は、蛇にこそこそと話し、竜と蛇は、手でバツマークをした。
牛は、草を食べている。

トラが言った。
「俺は‥ウサギを乗せていかないといけないんだよ。」

ネズミは、馬と羊を見た。
「自分は1グラムでも体を軽くして、一秒でも早く、神様の下へたどり着きたいので、余計な物は乗せたくありません。」
「僕もです。羊毛という、レースには不利な物を背負い、最後まで走りぬくので無理です。」
馬と羊は言った。

ネズミがサルの肩に乗ると、サルは痛そうに顔をしかめた。
鳥はネズミを足で持って飛んでみたが、よろよろと落ちてしまった。

犬はしっぽを振り、ネズミを乗せて走ったが、途中で止まった。
「どうしたの?」
「ちょっと、やっぱり、ネズミ君が乗っていると走りづらいです。」
「ああ‥。」
ネズミは、犬から降りた。
「ごめんね、ネズミ君。」

ネズミは、ライオンに変身した猪の前に来た。
ライオンはネズミをくわえ、石の上に乗せた。
「孤独なレースになるが、最後まで一人で耐えろ。そうすれば、栄光はお前だけに与えられる。お前が一人で耐えて、神のレースに勝ち抜くことができれば、お前の名前は、永久に歴史に刻まれることになるだろう。」


ネズミは落ち込んで、住処に戻り、言った。
「一人きりの栄光なんて、欲しくない!」

ネズミは涙をこぼしたが、小さな布団で眠ることにした。
コンコン
少し眠ると、ノックの音がしたので、ネズミは目をこすり、ドアを開けた。
「誰かな?」
そこにいたのは、牛だった。

「ネズミ君、よければ僕の背中に乗っていくかい?」
「いいのかい?」
「僕は足が遅いから、もう出発するんだ。」
「わかった。すぐに用意してくる。」

ネズミは風呂敷包みを背負い、牛の背中に乗った。
牛は、ゆっくりと歩き続けた。

夜明けと共に、トラがウサギを乗せ、出発をした。

大晦日、竜が蛇に言った言葉はこうだ。
「蛇君、申し訳ないが、正月も俺は仕事があるから、俺がすぐレースに戻れるように、竜の巣である雲を一緒に運んでくれ。」

人間の蛇は風船を持つように、雲を運んでいたが、朝日が射して来たので、蛇に変身して、神の場所を目指した。雲の風船は、尾の方に結んだ。

朝7時、馬と羊は体操をして走り出した。

朝9時、猿と鳥と犬は、住処から出てきた。
猿は伸びをしている。
犬は言った。
「みんないないね。なんでだろう?」
「さぁ‥まだ、寝ているんじゃない?」
猿が言った。

3匹は、キョロキョロと見渡した。
「わかったぞ‥。もうみんな出発してしまったんだ!!」
鳥が叫び、3匹は走り出した。

しかし、猪がまだ残っていた。
猪は、住処から出て、ため息をついた。
「ネズミ君。いるかい?」
やっぱり、ネズミの事が見捨てられなかったのだ。
「ネズミくーん?」
猪は、いろいろな場所を探した。

「猪君、まだここにいるのか。」
猫が現れた。
「みんな、もう出発してしまったよ。」

「え、そうだったんですか?」
「うん。ネズミ君は牛さんの背中に乗って、神様の所に向かっているところだ。」
「ええ?!なんだと?!」
「だから、君も急いで追いかけた方がいいぞ。」

「くそっ。許せん。」
猪は、猛烈に走り出した。
猫も雲に乗り、十二支の後を追うことにした。


「牛君、僕、お菓子持ってきたんだよ。」
ネズミがにこにこして、風呂敷からお菓子を取り出した。
「ほら、食べるかい?」
「いや‥。僕は草を食べるからいいよ。お菓子はネズミ君一人で食べてくれ。」
「そっか‥。」
ネズミは寂しそうにお菓子を食べた。

人間になった蛇は、近道をしようとして、ジャングルに入った。
すると、小さな沼のワニに遭遇してしまった。沼をジャンプして飛びこえようとしたが、ワニは凶暴だった。しかし、持っていた雲が、蛇を空に運んだ。
雲から竜が出て、一緒に空を飛んだ。

馬と羊は、だんだん疲れてきていた。
羊が馬の背に乗ろうとしたが、それは不可能だった。

ウサギを乗せたトラも、だんだんと疲れてきていた。
「ちょっと、休憩する?」
ウサギが聞いた。
「うん、そうだな。」

「どうだ?ウサギ君も少し歩いてみたら?」
「まだ、ダメ。」
ウサギは、まだ元気がない。
「はぁ‥。」
トラはため息をついた。

ウサギは、トラの背中で眠ってしまった。


猿と鳥と犬は、最初の方は楽しく走っていたが、途中、猿が足を痛めて、泣きながら座り込んだ。
「先にいってくれ。」
猿は言ったが、
「置いて行くわけないじゃないか。」
鳥と犬は笑った。

少しすると、犬が不機嫌になり、犬語を話し始めた。
『鳥君ばっかり、ずるいよなぁ。空を飛べるなんて。』
「仕方ないでしょ!僕だって、羽が疲れているんだから!」
2人は喧嘩を始め、猿は耳をふさいだ。

「じゃあ、いいよ。僕も歩くことにする。」
最終的に鳥がおれた。
しかし、空を飛べない鳥は、のろかった。
ステップをふむように、歩いていく。

「これじゃ、遅すぎるでしょう。」
猿が、鳥に言った。
鳥は犬を見るが、犬はそっぽを向いた。



3匹は、猫から遠ざかるように、急いでかけていった。
黒い雲がたちこめてきて、猫は、何かに気づいたようだ。

猫と共に走っていた猪(ライオン)が聞いた。
「どうした?」

「なにか‥不吉な予感がするんだ。」
猫は言い、さらに大きな気配を感じたように、黒猫になり雲から降りた。
「村人たちが、また奇習を始めようとしている。」

「じゃあ、止めないと。」
ライオンが言った。

「いや、僕が一人で行ってくるよ。君はレースを続けてくれ。」
そう言い、猫は雲のスピードを速め去った。

猫が覚悟を決めた時、雲に大きな爪がのった。
「俺も、乗せてくれ。」
それは、蒼いライオンだった。

「何をやっているんだよ。」
猫は、ライオンを引っ張って、雲に乗せた。
「ふぅ‥。」
「レースの方はいいのかい?」
「ああ。最後になっても構わない。十二支の一人に残る事ができればね。」

猫と猪は、奇習が始まろうとしている村に向かった。


その頃、牛とネズミが到着していた。
今日は十二支のレースのため、神殿は雲の上から降りて来ている。

神様が、殿の前で立ち、可愛らしい巫女たちが、テープを持っている。
ネズミは、牛から降りて駆け出した。
牛は、神様に頭を下げた。ここまで、美しい体で生きてこられただけで本当は充分だった。

「僕が一番だぁ!」
ネズミがテープを切り、牛も前に進んだ。
「よく頑張りましたね。」
神様が言った。

「はぁはぁ。」
ウサギを乗せたトラが、神殿の前に来た。
「ウサギ君、ついたぞ。ここからは1人で行け。」
トラは言い、階段を上り到着をした。
振り返ると、ウサギはその場所で横たわっている。

「え‥。動けないのか?」
トラは唖然とした。

「どうしたんですか?」
神様は階段を降りて、ウサギの下に向かった。
「奇習に合い、人間たちに焼かれた事は大変でしたね。」
「はい。」
ウサギは涙をこぼした。

「でも、あなたは神様です。強く気高い獣でなければなりません。」
神様は言い、階段を上り始めた。ウサギは立ち上がった。

そして、階段を上る神様を抜かし、ゴールをした。
ウサギは、階段の上から、神様に頭を下げた。

人間の姿の竜と蛇が到着をした。

ネズミは言った。
「牛君、僕が一番になれたのは、君のおかげだよ。本当にありがとうね。」
「どういたしまして。僕もネズミ君のおかげで、退屈しなくてすんだよ。」


馬と羊は、神殿の前で、本気の目になった。
本気の短距離走をし、馬が僅差で勝った。


猿と鳥と犬は、一緒に階段を上ってきた。
疲れている犬を、猿が手を叩いて励ました。

そして、テープの前で、3人は同時に手を出した。
猿、鳥、犬の順になった。

トラが言った。
「あとは、猪だけだな。」

黒い雲が出て来て、風も強い。
みんな、少しだけ、心配そうに神殿の外を見た。


「はぁはぁ。」
猫と猪は、奇習の村に到着していた。

「わぁー。わぁー。」
村人達の雄叫びが聞こえる。

神殿の神様は、水晶玉で猫と猪の姿を見た。
11の動物も、水晶玉をのぞきこんだ。
「まさか、2人だけで、奇習に乗り込むなんて‥!!」


村では、男が縄でつながれて、声が出ないようにされていた。

女も目隠しをされ、後ろで縛られている。

村人の女が言った。
「あんたは、村一番の男と結婚するんだから、もう二度と外に出られない顔にしてやる。」

村一番の男と結婚する女に火傷をさせる儀式らしい。

猪は猫を乗せ、必死で走った。
そして、叫んだ。
「止めろぉぉぉぉぉ!!!!」

男の目が見開き、村人の女は息を飲み、心を決めた。
「止めるんだぁ!!!」
ライオンが吠えたが、村人の女は、火をぶつけた。

「あああああ!!!」
村人達が雄叫びを上げた。

村一番の男は、後ろから棒で叩かれ、前につっぷした。
男は目を開けたまま、動かないが、泣いている。
村人が、村一番の男の背中を踏んだ。
その瞬間、黒猫に変身した猫が、村人に襲いかかった。

ライオンは、炎に包まれた女を助けたが、もう虫の息だった。
「可哀想に。」
人間の姿に戻ったライオンが、女を抱擁した。


雪山で何かを感じ取ったキツネと狼が、遠吠えをした。



雲は雷鳴を鳴らした。

「ニャーオ!!」
猫は、地獄の入口を呼び、大きな雲が広場の真上に現れた。

大きな風が吹き、筒状の雲が降り、地獄の番人が現れた時、
「待ってください!!」
武将が率いる軍が現れた。
「村人どもは、私が引き取ります。」
武将が、馬から降りて、言った。
武将は、猫の前まで、凛々しい顔で進んだ。

「分かった。でも、きちんと罰を与えてくれ。」
猫は言った。
「約束します。私の領土の人間が、騒ぎを起こして、本当に申し訳ございませんでした。」
「騒ぎなんて物じゃないさ。人殺しだ。こいつらは、妖怪以下だからな。」

ライオンも何か言った。

そして、黒猫とライオンは去り、武将たちは頭を下げた。

猫が言った。
「まずいぞ。元日が終わるまで、あと20分しかない。元日が終わるまでにたどり着けなければ、十二支に残れなくなる。」

神殿で、ネズミが聞いた。
「もしも、猪君がたどり着けなければ、僕たち、11人で大将を回す事になるのですか?」
「はい‥。それは、仕方のないことです。」
「そんな‥!!」
動物たちは騒いだ。


ライオンは猪の姿に戻り、猫を乗せ、走った。

「あと、5分‥。」
神様は、時計を見た。

猪は猫を乗せ、猛烈に走ってきた。
神殿の前に現れたので、動物たちは、歓声を上げた。

「あと30秒‥!!」

「ふんっ。」
猪は、階段の前で、猫を振り落とし、猛烈に階段を駆け上がった。
「3、2、1‥。」
猪は、ギリギリでゴールした。

「やったー!!」
動物たちは喜んだ。
「猫さん‥。」
神様は、猫を心配そうに見た。

猫は、よろよろと階段を上った。
「いや‥、最後尾についてくれば奇跡が起こって、僕も十二支に入れるかなと思ったんだよ。」
神様と動物たちは、心配そうに猫を見た。
「でも、やっぱりダメだった。君たちには叶わないよ。」

ネズミが言った。
「でも、神様の一番の友達は、猫さんじゃないか。」
「本当かい?」
猫が神様を見た。
「ええ。これからも、猫さんには、いろいろと助けてもらわないといけませんから。」
神様が言った。

「これからも、よろしくね。僕たちのこと。」
ネズミが言った。

猪が言った。
「君から始まり、僕で終わる。僕は、始まりにバトンを渡すんだな。」

「十二支が全て終わった時、何か良い事が起こるといいね。」
牛が言った。

「竜よりも、トラやウサギの方が早い理由は、まだ分からない。」
「ウサギになんて、すぐに一飲みできるのにさ。」
竜と蛇が言った。

「僕たちは、レースに負けたことを、恥だとは思いません。」
「始まりよりも、終わりの方が強いのですから。」
『その意味が分かるまで、ずっと戦います。』
馬と羊が言った。

猿、鳥、犬も、何か言った。


雪山で、狼とキツネは話していた。
「やっぱり、十二支は最高だな。」
「仲が良いのはうらやましい。」
狼とキツネは言った。


The End

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