第1話

文字数 14,740文字

 心地良さを感じて目が覚めた。
 
 暖かい日差し、細かい車の振動、窓から入ってくる風、そのどれもが心地良かった。何か大きくて柔らかいものにすっぽり包まれて、守られているような気がした。
 
 目を開けて私は、まだ夢の中にいるんだなと思った。たまに、夢を見ていて醒めかけて、もう一度寝ると今度は違う夢の中にいることがある。今回もきっとそれだろう。
 さっきまで見ていた夢がどんなだったかは、全く覚えていない。でもここが夢であるということは、目の前の景色を見れば一目瞭然だった。
 透き通る青、煌めく青、靡く青。青の世界と呼べるほどの光景が、私の視界を覆い尽くしていた。
 まず空の青。雲一つ無い、澄んだ青が広がっていた。そして水の青。宝石のようにキラキラと光る水がそこにあった。海だろうか、大きな湖だろうか。水面は静かに揺れている。文字通り、どこまでも広がっているかのように見えた。空と水。景色はその二つだけ。そこに、私が乗っているこの車。夢だと分かっていても、水の上を車が走っているのは妙な気分だった。それに、この美しい世界の邪魔をしてしまっている気がした。
 目を開けた時、私は車の窓に頭を寄りかからせている状態だった。そのまま空と水を眺めていたのだが、あんまり綺麗で神々しかったので自分の体勢がなんだか恥ずかしくなり、身体を正面に戻した。その時、私がいるのが助手席で、隣に運転している誰かがいるということに気付いた。
  
「あれ、目覚めた?」
 私が運転席の存在に気付いた時、ちょうどその席から声がした。
 頭良さそうな人だなぁ。
 声の主である男性を見て、そう思った。さっぱりとした黒髪。瞳は知的で切れ長だったが、微笑んでいる為冷たい印象を感じさせない。若そうではあるが、すごく大人っぽい。
 なんと声を掛けたら良いか考えあぐねていると、後部座席からも声がした。
「目が覚めたんじゃなくって、眠りが深くなったんだろ。智也、ほんとにブレーキ踏んでる?全然進んでんだけど」
「サイドブレーキかかってんだよ。それなのに進むから、もうどうしようもねぇだろ」
 なんとなくイライラしたような口調だった後部座席の男性は、運転席の男性の返答を聞いてフンと鼻を鳴らした。
 明るい茶色の短髪。ぱっちりとした二重で、ウィッグを被ってニコリと笑えば女の子みたいな顔立ちだ。ただガッチリとした肩幅と、組んでいる腕の血管の立派さはどう誤魔化しても男性だ。
「俺、智也。後ろのが瑞稀ちゃん。イライラしてるけど、気にしないで」
「ちゃんを付けるな」
 瑞稀ちゃんと呼ばれた茶髪のゴツい男性は、後ろから運転席をガンと蹴った。
「私は、」
 二人が名乗ったので、自分も名乗ろうとした。しかし、言葉が続かなかった。

 私って、何だっけ?
  
「大丈夫、そのうち思い出すよ」
「だから言ったろ。もう遅い」
 二人の優しく宥めるような言葉と、冷たく突き放すような言葉はほぼ同時だった。
 黒髪の男性、智也さんは話し続け、瑞稀さんが彼を睨んでいた。
「君は今リフレッシュした方がいいと思うから。橋が見えるまでは大丈夫らしいしさ。あ、俺たち、君と大学一緒なんだよ。」
「大学…」
「そう。俺ら三人とも、大学三年生。瑞稀ちゃんは学部違うけど、俺と君は同じ経済学部。講義が被ったこともあるんだよ」
「そうだったんですね…すみません、なんか思い出せなくて。思い出せないというか、私自身のことがよく分からないような気がして」
「うん、大丈夫。焦らなくていいよ」
 智也さんは優しく微笑むと、意味がないことに気付いたのかハンドルに置いていた両手を頭の後ろに回し、もたれかかった。
「瑞稀ちゃん、イス倒していい?」
「ダメだ」
「えー?後ろまだ余裕あるでしょ?」
「ドライブしてる場合じゃねぇ」
「だからそんなカッカすんなって」
 智也さんは私をちらりと見ながら、車の座席を後ろに倒した。座席が倒れたことにまるで気付かないのか、瑞稀さんは別のことで智也さんに文句を言い始めた。
「俺は本当は呼ばれてないのに、智也のせいで巻き添え喰らったんだ。上手くいかなくて、最後まで巻き込まれたらどうする」
「最後って?夢から醒めたら終わりだろ?」
「前じいちゃんにそういう話を聞いたことがある。夢から出られなくなった人を助けに夢の中に入ったヤツが、自分も出られなくなったって話。つまり、巻き込まれて助けに行ったヤツも一緒に死んだんだ」
「瑞稀ちゃんのおじいさんの話が本当なら、おじいさんは誰からその話を聞いたんだろうな」
「死んだ本人からだろうが」
 智也さんは海外ドラマの登場人物のように、わざとらしく首をすくめてみせた。今度はしっかりと私の方を向いていた。
「ごめんな。こいつ霊感強くて、そういうの信じてんの」
「今実際そういうのの最中なんだから信じろよ」
「いやー、変な夢見てたって言われればそれまでなんだよね。レポート多くて疲れも溜まってたし」
 智也さんの反応を聞いて瑞稀さんはもう一度運転席を蹴った。
「お前はどうだ?」
 そして私に話を振ってきた。
「三途の川とか、死後の世界とか信じるか?」
「えっ、と…あんまり」
「じゃあとりあえずそれはいい。ひとまず自分のこと思い出せ。なるべく早く」
「わ、分かりました」

 そう言われても、どうやって思い出したらいいんだろう。私は今大学三年生で、この二人と同じ学校で、智也さんとは同じ授業を受けたこともあるらしい。ただ、手がかりはそれだけだった。とりあえず二人に話を聞いて、手がかりを増やしていくしかない。
「思い出す為に、色々聞いてもいいですか」
「どうぞ」
「ここは夢の中なんですよね」
「そうらしい」
「三人で同じ夢を見てるという事ですか?」
「うーん、たぶん、そう。でも俺らは君の夢に参加したって感じかな」
「どうして参加したんですか?」
「呼ばれたから?」
「誰に呼ばれたんですか?」
「なんか、ヤクザ?」
「ヤクザ?」
「まぁ厳密にはヤクザじゃないらしいけど、まぁ何というか、大男?」
「大男…」
 夢の中で王子様とお姫様が出会う、みたいなお伽話なら分かるが、男子大学生が大男に誘われて見る、水に浮かぶ車の夢というのはどんなジャンルなのだろうか。
「つか瑞稀ちゃんも質問に答えろよな」
「腹減った」
「じゃあ瑞稀ちゃんなんか食べ物出してよ」
「は?」
「いや、夢の中って考えた物が勝手に出てきそうじゃねぇ?」
「夢と魔法ごっちゃになってるな」
「あーやっぱ瑞稀ちゃんの力を持ってしても無理か」
「俺を何だと思ってるんだ」
「オカルト大好き不思議少女瑞稀ちゃん」
「ふざけんな」
 瑞稀さんがまた運転席を蹴り、智也さんはケラケラと笑った。瑞稀さんの見た目は前述の通り顔を除けばかなりゴツいので、部外者の私がビクッと肩を震わせてしまった。細身な上穏やかそうな智也さんは、一見すると瑞稀さんに脅されているようにも見えてしまうが、慣れている様子だ。
 質問する前よりも疑問が増えた私だったが、二人のやり取りは不思議と気持ちを落ち着かせた。
「仲良いんですね」
「まぁ、幼馴染だからな」
「そうなんですか」
 私には、そういう存在いたのかな。いたら自分のこと思い出せるかな。再び二人の世界に入ってしまった男性陣の会話をBGMに、無い記憶を辿ろうと努力した。
「もう一人いればいいのにな。その上お前のこと知ってる奴だったらいいな」
急に瑞稀さんが私に話しかけてきた。男性陣だけで会話をしているものと思っていたので、驚いた。
「私も、自分に幼馴染っていたのかなとか考えていました」
私がそう言うと、瑞稀さんは満足そうな様子で座席にふんぞり返った。
「瑞稀ちゃん、同意されて嬉しいんだよ。態度デカくてごめんな?」
ふんぞり返るだけの瑞稀さんを見て、智也さんが解説した。
「大丈夫です。なんとなく、分かりました」
 瑞稀さん、見た目怖いし巻き添え食らったとか言っていたけど、案外いい人なのかもしれない。そう思い、二人に向かって微笑んだ。智也さんも微笑み、瑞稀さんは態度は変わらないものの柔らかい雰囲気になった気がした。
 その時だった。

「優子ちゃん?」
 助手席側の後部座席、つまり私の後ろに、いつのまにか乗車している人がいた。

 振り返り、その目をみた途端、記憶がどっと押し寄せた。映画を巻き戻しているかのように。死ぬ直前から、この子と同じ教室で過ごした時まで。そしてそれ以前も。呼ばれた名前が、自分自身の名前だと分かる。相手の名を呼んだ。
「理沙ちゃん」
「うん、そう。分かる?小学校が一緒だった」
「うん。覚えてる」
 私と理沙ちゃんの目がもう一度合うと、その目が涙ぐんでいることに気が付いた。
「どうして自殺なんてしちゃったの?」
 
 ビニール袋の中の睡眠薬。
 ドラマみたいに、瓶ごと持って口の中へ放り込んでいきたかったけれど、実際同時に飲み込むとなると四粒が限界だった。
 錠剤を掌に出し、口に放り込み、水を飲む。何度かそれを繰り返し、瓶が空になる頃、頭がぼおっとして力が抜けていくのを感じた。手足が少し痺れるような感じがする。瞼がとても重い。眠っているうちに死ねるなんて幸せだと思っていたけど、目を閉じても嫌なことばかり思い出した。

 死ぬ時の事を思い出した私の目から、涙が溢れた。
 理沙ちゃんの言う通りだ。どうして自殺なんてしちゃったんだろう。
 確かにつらかった。苦しかった。でも死んでしまったら、取り返しがつかない。

「変な夢を見たの」
ただ涙を流すだけの私を見て、理沙ちゃんは話し始めた。
「男の人がやってきて、死神だって名乗った。紙を見せて、この子を知ってるかって聞かれて。優子ちゃんの写真が貼ってあった。知ってる、小学校の同級生だよって言ったら、その子の為に別の夢に行ってくれないかって言われたの。その夢の先は死後の世界に繋がってるけど、まだ間に合うからその子を説得してくれないかって」
二人もそうなのかと問いかけるように、瑞稀さんの方を見た。瑞稀さんは腕を組んだまま前を向いていたので、理沙ちゃんは話を続けた。
「私意味が分からなくって、戸惑ってたんだけど、死神がその子は自殺したんだって言って、びっくりして悲しくて、よく分からないままだったけど助けますって言ったら、いつの間にかこの車に乗ってた」
理沙ちゃんは恐らくミラー越しに今度は智也さんの方を見たけれど、智也さんは気まずそうに目を伏せていた為また話に戻った。
「他の誰かを殺したら地獄へ行って罪を償わないといけないけど、自分で自分を殺したら天国も地獄も無いんだって。その魂が二度とやり直せなくなるって。輪廻転生の輪に入れないってことなのかも。死神も、最近人から聞いたらしくて、死後の事はよく分からないんだって。でもそれが本当なら、私にできるなら助けたいって思ったの」
 理沙ちゃんは身を乗り出して、私の顔を覗き込むようにした。
「私、優子ちゃんに諦めて欲しくない。この世に一緒に戻ろうよ」

 正直、理沙ちゃんの気持ちは嬉しかった。でも私なんかが生きていていいのかという気持ちの方が強かった。私なんかの魂の代わりに、他の魂が輪廻転生とやらをした方が世の中の為なんじゃないか。

 生きていていいんだろうか、という想いは、幼い頃から持っていた。
 産みの母親のことは知らない。私が小学校に上がる前、父の連れ子として、今の家の娘となった。新しい母親が、私を疎ましく思っていたのは火を見るより明らかだった。私がいなければ、この二人は新しい生活を満喫できたのだろうか。せめてもの償いとして、私は大人しく、母親や先生の言う事を聞く真面目な子どもになった。父は二人きりの時は変わらず私に優しかったが、再婚後は私よりも母親の気持ちの方が最優先すべき事柄だと考えていたようだった。
 学校で友人は出来たが、こんな家の状況を伝えられるほどの仲にはなれなかったし、高校の頃は遊びで遠出する時など、親の許可を得るのが億劫で、フットワークの重い子になってしまった。
 普段は気にしないようにしているが、学校行事や友人たちとの関わりの中で、自分が両親から正しく愛されていないことに気付かされると、心が傷んだ。自分の本心はさておき、せめて周りから「可哀想な子」と思われないようにする為にはどうすればいいか、そればかり考えた。
 それでも何とか生きてきて、大学生活は幸せの絶頂だった。家を出て一人暮らしできたし、アルバイトを始めて自分の好きにできるお金が発生し、友人と遊びやすくなった。たまに一人になりたくなっても、広い大学のキャンパスでは「可哀想な子」と後ろ指を指されることなどなかった。

 生きていていいんだろうか、という気持ちが再熱したのは、つい最近の事だった。
 友人が亡くなった。事故だった。バイクに乗っていたところをトラックにはねられたそうだ。
 友人といっても、学校外で会話したことは一度も無いような間柄だ。高校のクラスメイトと言い直した方がいいかもしれない。
当の彼は陽気な人柄で、クラスのムードメーカー。私のような真面目だけが取り柄の湿った存在にも気遣いができる、太陽のような存在だった。別に仲が良かった訳ではないし、ひょっとしたら向こうは私の事なんてもう知らないくらいかもしれないけれど、彼と私の人生を比べて、どちらかが死ななければならないとしたら、絶対に彼ではないと思った。
 これまで身近な人の死を経験した事がなかったせいもあるかもしれないが、私にとってその出来事は大事件で、昼も夜も何をしていても、死というものについて考えるようになった。

 死とはどのように決められるのだろう。神様が決めるのだろうか。どういう基準で?
 高齢になっても元気で、寿命迎えて安らかに亡くなる人がいる一方で、不慮の事故や病気などで不意に命を落とす人もいる。
 もし死に方を決めることができるなら、事故で死ぬのは私で良かった。
 私は誰のことも幸せにできない。父と母は二人暮らしができて幸せだし、自分が他人からどう見えているかということばかり気にしている、私のような人間とは誰も友達にならない方が幸せだ。現状そんな予定は無いけれど、いつか私が誰かと結婚するとして、きっと私は自分の両親より幸せかどうかを気にしてしまう。結婚する相手が、父のようになりはしないかと疑ってしまう。自分が社会的に見て幸せそうか常に考え、そう見える為に見栄を張ってしまうと思う。そんな結婚は、しない方が幸せだ。万が一子どもが生まれたとして、私はその子を育て上げる自信がない。長年親の愛情に飢えてきたが、何を補えばそれが満たされるのかを知らない。自分が愛情を知らないのに、子どもにそれを与えられるとは思えない。
 つまり、私が最初からいなかったら、ありとあらゆる人が幸せになるのだ。一方亡くなった彼は先述の通り、その人柄だけでも生きている価値があると言える。神様が彼を何故、若くして死なせたのか。価値のない私をまだ、生かしているのか。私への嫌がらせとしか考えられない。間違って生まれてきてしまった人間は、そのことをずっと反省しながら生きていくという罰が与えられるのだろう。

 死について考え続けた私は、学校の帰り道、バスの中で、静かに涙を流した。その日の帰宅途中に薬局へ寄った。

 私が理沙ちゃんの言葉に答えず、長々と回想している間、三人は押し黙っていた。
「生きてる意味、分かんなくなったから。いいんだよ、これで。どうせ碌な魂じゃないから、生まれ変わらないほうがいいと思うし」
 ようやく口を開いた私が言えたのは、それだけだった。
 あんまり話し続けたら、大声で泣いてしまいそうになる。
 理沙ちゃんは私の返答に対し、かける言葉が見つからないようだ。せっかく助けに来てくれたのに、申し訳ない。人の優しさに慣れていない。重い沈黙の中で、波の音だけが優しく響いていた。

「あんた、こいつの幼馴染か?」
話の途中だったかのような軽やかさで、瑞稀さんが理沙ちゃんに話しかけた。
「え、ううん、小学校の同級生だけど、家はそんなに近所じゃなかったな」
「ふうん」
「あ、幼馴染じゃないと来ちゃダメだった?二人は優子ちゃんの幼馴染なの?」
「ちげぇけど。俺が思ったからあんたが来たのかと思っただけ」
俺が思った、とは、理沙ちゃんが来る前の「夢の中だと考えた物が出てきそう」という話の続きだろうか。自分の記憶と、重苦しい空気のせいで、何年も前にした会話のような気がする。戸惑う理沙ちゃんに、智也さんがフォローを入れる。
「夢の中だと、考えた物が魔法みたいに出てきそうだよなって話を、さっきしてたんだ。腹減ってて」
「私飴なら持ってるよ」
理沙ちゃんはスカートのポケットをゴソゴソと探ると、手のひらを智也の方に差し出した。カラフルな包みにくるまれた飴が、ちょうど四つ載っている。ピンク、緑、黄色、水色。
「どれがいい?」
「優子ちゃん、先選んでいいよ」
智也さんがそう言ってくれたけど、私はこういう時自我を通せない。自分が欲しい色を、周りの気持ちを無視してまで欲しいとは思わない。そういうのを繰り返していくと、いつの間にか自分が欲しいものが自分でも分からなくなってくる。余り物が好きになる。
「私、どれでもいいよ。余ったやつで、大丈夫」
「えっ、優子ちゃん、水色じゃないの?」
「え?」
「小学校の時水色好きだったじゃない?」
そう言って私の手を取り、水色の飴を握らせた。
 水色が好きだったことを、最近は忘れていた。そもそも水色が好きだったというより、男の子になりたかった。ジェンダー的な意味ではなく、男の子だったら、親が授業参観を忘れて来なくても、図工で必要なものを用意してもらえなくても、親の手作りの巾着を持っていなくても、許されているような気がしたのだ。
 偏見かもしれないが、この頃の男の子はたいてい皆やんちゃで、学校のプリントなんて親にすぐ見せないから、そういったトラブルは付き物だった。逆に女の子は丁寧に育てられている子が多く、お家に帰ったらまず連絡帳見せてねって言われているし、本人が忘れても親が勝手にランドセルを開けて確認する。子どもに寂しい思いや、不便な思いを絶対にさせまいと先回りする。
 そういう事を幼いながらに感じていて、だから男の子になりたかった。男の子だったら、「だらしない」と思われることはあるかもしれないが「かわいそう」と思われることは少ないだろうと思ったからだった。
 女の子はピンク、男の子は水色。画用紙とか、ペンとか、時々学校が渡してくる物は、整理しやすくする為か二色に分かれていることがあった。そのせいで水色は男の子のイメージだったから、何でも好きな色を使いましょう、と言われた時、真っ先に水色を選んでいた。

「優子ちゃん、水色が好きなの?」
 いつどんなタイミングで話したのか覚えていない。好きな男性アイドルとか、アミューズメントパークに行った時の話をして盛り上がる、ませた女の子が集まるグループの一人に聞かれたことがあった。
 その子は毎日色んな髪型をしていて、色んな可愛い髪留めを持っていた。
「うん。水色って男の子の色だから。男の子だったらいいなって思うから、好き」
「そうなんだ」
 その時はまだお互い幼かったから、軽蔑されたとか嫌な気分になった記憶はない。ただ会話はこれで終わりというようにくるりと踵を返したその子のスカートが可愛らしいピンク色だったのを見て、なぜかあの子には理解できないだろうなと思った。それを残念だとも思わなかった。
 その後、卒業式を間近に控え、クラスでは色紙にお互いメッセージを書き合うという行事が流行っていた。先生が言い出したのか、生徒が言い出したのかという行事の発端はおろか、誰にどんな言葉を贈ったかも全く覚えていない。最後私の元に色紙が戻ってきた時、きちんと皆からメッセージが書かれているのを見て安心したことはよく覚えている。大人びた女の子達にメッセージを書くのに緊張したということも。

「優子ちゃん、この枠に書いて」
 色紙は各々が好きなように線を描いたり枠組みを作ったりして、空いているスペースに順番に記入していた。声をかけてきた女の子は折り紙でいくつもの丸を作り、その丸の中にメッセージを書いてもらっていた。その子が指し示した丸は、淡い水色だった。
「水色、好きでしょ」
「うん」
女の子から色紙を受け取り、その場でメッセージを書いた。普段あまり関わりのない華やかな子たちへのメッセージは、一度色紙を預かって自分の席に戻ってから考えて書いていたが、その子への言葉はすぐに書きたくなった。
「その色優しくって、優子ちゃんっぽいよね」
言われた言葉が嬉しすぎて、何と書いたか忘れた。その子から何て書いてもらったかも、忘れた。あの時感じた温かい気持ちも、長年忘れていたようだ。

「…覚えててくれたんだ」
「実は今思い出したんだけどね」
「私たち全然違う世界の住人だったのに」
「なんだそれ」
 あの時、自分の好きな色を「私らしい」と言ってくれた子は理沙ちゃんだった。変わっていない。胸元まである髪は明るい色に染まり、緩くパーマがかかっている。もともとぱっちりとした目も、スラリとした鼻筋も、形の良い唇も、名残はあるが、化粧で縁取られ、より美しくなっている。見た目は変わっているけど、心根は変わっていない。「違う世界の住人」と表現した私を、理解できなくても馬鹿にしたりすることはなく、ニコニコと笑っている。
「今もきっと違うね」
 理沙ちゃんはあの頃からずっと、生まれてきた価値があり、愛されている側の人間なんだなと思った。そしてあの時と同じように、そうじゃない側の人間にも優しくできる大人に育ったんだと感じた。私は深く息を吸ってから、三人に私の人生をかいつまんで話した。智也さんは窓にもたれかかり真っ直ぐ前を向いていて、瑞稀さんは腕を組んだまま下を向き、寝ているようにも見えた。二人とも私を一切見ないが、話を聞いてくれているのを感じた。理沙ちゃんは飴を載せていた手をいつの間にか引っ込めて、膝の上でぎゅっと握って前のめりで私を見つめていた。

 私が話終わると、先ほどとは違う種類の沈黙が訪れた。
「ごめんね」
そういったのは理沙ちゃんだった。
「簡単に、一緒に戻ろうみたいなこと言ったけど、何も知らないくせにごめん。そんな単純な話じゃないよね」
私より理沙ちゃんの方が、今にも死にそうな顔をしていた。私はと言えば、三人に話したことで心が軽くなっていた。
「そんなことないよ。ありがとう。少し楽になった」
「俺の飴は?」
下を向いていたはずの瑞稀さんが私と理沙ちゃんの話を遮るかのように、理沙ちゃんの前に手を出した。
「あ、はい、どうぞ」
理沙ちゃんらしくない気の抜けた声で返事をして、飴を差し出した。
「俺、モモ味がいい」
「え、味違うの?」
そう言って智也さんが振り返った。
「あーほんとだ、ピンクはモモ。緑がメロンで、黄色がレモンだね。君、頭脳派っぽいから緑あげる」
理沙ちゃんが飴の包み紙を見た後、智也さんの反応を待たずに緑色の飴を差し出した。
「え?まぁ、別にいいけど。サンキュー」
「どういたしまして」
「水色の果物って何だ?」
理沙ちゃんが智也さんに飴を渡している上から、瑞稀さんがこちらに顔を出してきた。
「「確かに」」
理沙ちゃんと智也さんが私の方を見た。私は右手に握っていた飴を見た。三人の飴と少しデザインが違うような気がする。
「あ、ソーダ味だ」
「えー、ごめん、一個だけ種類違うの混ざってたみたい。優子ちゃんフルーツ食べたかった?」
「ううん、大丈夫」
「いや、当たりじゃん」
そう言ったのは智也さんだった。
「しゅわしゅわするやつだよな?大当たりだよ。お前今日いいことあるぞ」
瑞稀さんも同調した。
「二人って意外と子どもっぽいね」
飴をコロコロと口の中で転がしながらはしゃぐ男性陣を見て、理沙ちゃんは食べようと手に持っていた飴をポケットに戻していた。私も理沙ちゃんに合わせて、そっと飴をズボンの右ポケットに仕舞った。
「童心を忘れてないと言ってくれ」
智也さんがわざとらしくそう言うと、瑞稀さんはうんうんと頷いた。
私は気持ちを打ち明けてから泣くのをずっと堪えていたのに、今度は笑いを堪えていて変な気分だった。
「そういうのでいいと思うんだよな、人生って」
智也さんが座席を前に戻し、片手をハンドルの上に添えて運転しているような体勢で話し始めた。
「俺別に今までの人生でそんなに困った事とかなくて、なんとなく生きてて、これからの目標とかもあんま無いんだよな。でも人生つまんないかって言うとそうでもなくて、瑞稀ちゃんとゲーム盛り上がって寝不足で次の日の講義出たり、バイトで誰かが言い間違いしたのがツボにハマってずっと笑ってたり、日常の些細なことが楽しかったりするんだよね。でふとした時にあれ楽しかったなーって。それだけで俺は俺にとって生きてる意味あるよ。俺が楽しいのが俺の生きてる意味だからね。周りから、お前の人生はつまらないって言われても俺が楽しいんだから知るか、と思うね」
「その通りだな。俺は、今日も飯が上手い、それだけで十分だ」
「瑞稀ちゃんは感性が小学校で止まってるから」
「最初からそういう風に生きれたら、苦労しないよ」
ケラケラと笑う二人を遮って、理沙ちゃんが言った。
「私も普段は、好きなドラマとか、限定コスメとか、楽しみなものの事考えながら前向きに生きてるよ。でも何か嫌な事あったら、そればっかり考えちゃう。楽しみな事も二人が言うようなちっちゃな幸せも、見つけられなくなっちゃう」
「でも今元気そうだよな?どうやって克服した?」
「克服っていうか、時が解決したって感じ?」
「それだ」
瑞稀さんが得意げな顔をした。智也さんが翻訳するかのように続ける。
「つまり落ち込んだ時はとことん落ち込んでいい。もちろん死なない程度にな。そんで友だちに愚痴れ。そしたら後はそのうちなんとかなるってことだ。確かに、その高校の同級生は気の毒だし、知ってる人が亡くなったらつらいと思う。でもそのつらさを自分だけで抱えてたら、自分自身がしんどくなるだろ?」
「友だちはとりあえずもう三人もいるから、相談相手に困ることはないしな」
瑞稀さんは智也さんの翻訳に深く頷いた後、全く恥ずかしがらずにそう言った。
「君は一人じゃない」
「そういうこと」
二人は古めかしい洋画で見たような息の合わせ方で、私の顔を見た。理沙ちゃんは呆れたような顔をし、私の反応を伺った。
私は笑っていた。笑っていたけど、目からは涙が次々と流れてきた。
「え、ダメだった?」
「泣かせてんじゃねぇかよ、智也」
「大丈夫?優子ちゃん」
「なんか嬉しくて。私なんかのために、三人が色々言ってくれて。私の味方なんていないって思ってたけど、小学生の頃からいたし、今もすごく身近にいたんだって思って。嬉しくて」
泣きながらそう説明すると、三人はほっとしたような顔をした。
「小学生ぶりに会って言うことじゃないかもしれないけど、他の人のことでそこまで思い詰めるの、優子ちゃんらしいなってなんか嬉しくなった」
「そう?」
他人との調和なら常に気にしてきたが、自分らしさというものについて考えたことがなかったのでこそばゆい気持ちになった。
「そうだぞ。皆それぞれ個性があるんだからな」
「瑞稀ちゃんは個性強すぎだけどな。自分が居心地いい友だちと一緒にいると、そういうのも分かるようになると思うよ。他人から見た自分の良い所が知れたり、自分が思い詰めてた事って側から見たら大した事無かったりして、拍子抜けたりしてさ」
「…勉強になります」
これまでの人生で触れた事のない考えだったので心からそう言ったが、運転席の後ろからプッと吹き出すような笑い声が聞こえた。
「俺、来た意味ねぇなって思って居心地悪かったから良かったわ」
「え?瑞稀ちゃん、居心地悪いとかいう感性あったの?」
「うるせぇ」
「まぁ俺も、理沙ちゃんと同じ感じで死神に勧誘されて、ああ死後の世界とかそういうのは瑞稀っていう友人の方が得意ですって言ったのよ、そしたら二人まとめて来たって感じで。理沙ちゃん来てから、俺ら必要だったかなって気まずかったわ。自殺したってのも聞いてたし」
「そうだったんだ。私が話してる時、二人とも目合わせないから何かと思った。なんかね、生前関わりのあった人の想いで留まることができるんだって。留まっている間に、戻りたいと思って行動すれば大丈夫だって私は聞いた。だから説得しに来たの」
「俺もそう聞いた。俺なんて、大学一緒ってだけだからもっと仲良い奴呼んだ方が効果あるだろって言ったけど、今寝てる人じゃないと呼べないし、家族とか特に近しい人も無理らしい」
「死のルールの穴を掻い潜ってるらしいぞ」
「なんで瑞稀くんが得意気なの」
「瑞稀ちゃん、死後の世界とかオカルト系大好きだから。俺とヤクザが一緒に瑞稀ちゃんの夢に入って、ヤクザが死神だって名乗ったら、目輝かせて矢継ぎ早に質問してたもんな。巻き込まれたとか文句言ってたけど、ほんとは嬉しかったろ」
「俺のとこに先に来て欲しかったと思うくらいには嬉しかった」
「最初から素直になれよな〜」
「そうなんだ。私もオカルト好きで、大学で民俗学やってるよ」
「二人、話し合いそうだよな。戻ったら、また四人で会おうぜ」
「うん」
「おう」

 私がとうとう泣きじゃくっている間に、三人は穏やかに会話を続けていた。放っておかれている訳ではなく、好きなだけ泣いていいよと言われているみたいだった。四人で同じ空間にいて、自分だけ三人と違うことをしているのに、ちっとも焦らなかったしむしろ安心できた。話が四人で会おうというくだりになった時、返事を待つかのように三人は初めて私の方を見た。
「うん」
涙でぐちゃぐちゃの顔のまま、私は三人に笑ってみせた。
「でも話を聞いてて、一つ心配なことがあるんだけど」
「何?」
「死神が夢に来たって言ったよね?死神ってことは、もう私死ぬの確定じゃない?よく分かんないけど。魔法使いとかが助けに来てくれなきゃ、無理じゃない?」
「それは大丈夫だ。何でも、人間を自殺で殺したくない、物好きな死神で、業界から疎まれているらしい」
「死神に業界なんてあるんだ」
「上からお咎めのないギリギリラインのところで、自殺志願者を救っているらしいよ。瑞稀ちゃんはもう、ファンになってたよな」
「俺が死ぬ時は看取ってくれとお願いしておいた。すごいんだ、死神って、」
「まぁとにかく橋を渡る前に来た道を戻れば大丈夫だから、そうと決まったら戻ろう」
瑞稀さんの死神トークが長々と展開されそうな気配を察し、智也さんが話を進めた。
「そう言えばいつの間にか車動いてないね」
理沙ちゃんが辺りを見回しながら言った。
「優子ちゃんの気持ちが変わって嬉しい。小学生ぶりの私がそうなんだから、今関わりのある人たちはもっとだと思うよ。もっと心配してて、もっと嬉しいはずだよ」
「うん、ありがとう」
「家庭環境は選べないからな」
 智也さんに死神トークを遮られて不服そうだった瑞稀さんが、どこか遠くを見つめながら言った。
「家庭環境は選べなくて、ハズレだと感じるとしんどい。けど、人間関係は自分で選べる。そんでその人間関係の方が自分の人生において大事だと思う。俺のことを俺として扱ってくれるやつと一緒にいるから、今俺は楽しい。お前が楽しいと思えるやつらと一緒にいたら、人生は勝手に楽しくなる。と俺は思う」
「瑞稀ちゃんにしては名演説だったな」
「智也みたいな、家庭に恵まれてるやつには一生分かんねぇだろうな」
「でも知ろうとすることはできるよ」
智也さんが瑞稀さんの方ではなく、私を見て言った。
「うん。みんな本当にありがとう」
 私は今まで悩んでいたことが嘘みたいに、三人に気を遣ってとかではなく本心で帰りたいと思っていた。瑞稀さんはそれ以上語らなかったけど、屈強そうな彼にも悩みがあるんだろう。もちろん智也さんにも、理沙ちゃんにも。私の悩みだって、これで解決したという訳ではない。これからもずっと、生きていく限り、人は悩む。けれどそれに対してどう向き合うかという事なんだろうなと思った。私は嫌なことから目を背けて、嫌じゃないみたいなフリをして生きてきた。だから苦しくなってしまったんだと思う。無事に生き返れたとして、いきなり全部は変えられないけれど、少しずつ、向き合い方を変えていけたらいいなと思った。

 心にあった重りが取れたような気分でいると、ふと視線に気付いた。瑞稀さんが私の表情の変化を観察していたようだった。
「じゃ、俺はもういいよな」
そう言って瑞稀さんは車のドアを開けていた。
「え?瑞稀ちゃん、それどうやったの?」
智也さんが運転席のドアを開けようとガチャガチャ動かしているが、開かない。シートベルトも外れないようだ。
「お前らは目が覚めたらここから出れるんじゃねぇの」
まばたきをした次の瞬間、瑞稀さんはいなくなっていた。お先に、という声だけが最後に聞こえた。
「なるほどね」
ドアもシートベルトも諦めたらしい智也さんがこちらを見た。
「まだもう少しいるけど、俺も多分起きそうだわ。また学校でな」
「うん。あの、ありがとう。ただの顔見知りなのに、来てくれて」
「ただの顔見知りでも、気まぐれで人助けしようって思う人間はたくさんいると思うよ。いつも完璧な人間なんていないから、傷付いたり傷付けられたり、そんなのはあると思うけど、許してやってよ。他人も自分自身も」
「うん」
智也さんの言葉にまた涙が出て、下を向いて拭った。

 顔を上げると、車ごと智也さんもいなくなっていた。
 何故か沈んでしまわない水の上に、私と理沙ちゃんはいつの間にか手を繋いで立っていた。
「私は最後まで一緒にいるね」
「ありがとう」
 何かもっと言いたいことはあったが、口にできたのはそれだけだった。そんな私に、理沙ちゃんは優しく微笑んだ。そして、どうやって帰るんだっけと辺りを見回した。

「うげ。あれ、見てよ」
嫌な感じ、と呟いて、理沙ちゃんは遠くの空を指差した。
どこまでも青が続いていくと思っていたけど、違ったようだ。理沙ちゃんが示す先には濃い霧があった。そしてその霧の下に、橋があった。木で出来ていて、所々黒ずんでいる。二人で渡ったら、橋は崩れ落ちてしまうのではないかと思った。
「あれが智也くんの言ってた橋だね。あんな汚い橋、絶対渡りたくないよね?」
理沙ちゃんは私の手をぎゅっと握りながら問いかけた。
その橋を見るのは初めてのはずだったが、昔とても来たかった場所のような気がした。懐かしい感じと、あんなに好きだったのにどうしてか今は気持ち悪いと感じる、という不思議な感情が押し寄せた。
「うん。近付きたくもないね」
気味悪そうな顔をして答えた私の顔を満足そうに見た理沙ちゃんは、私の手を引っ張って、来た道の方を振り返らせた。

 その瞬間、水が無くなっていた。代わりに、光に照らされたように輝く真っ直ぐな一本道と、その道を囲むように緑があった。緑はよく見ると青々とした田んぼだった。さっきの水に、一瞬にして苗が植えられ、育ったかのようだった。田舎のおばあちゃんの家を思い出した。
「振り返らないで、来た道だけを見て真っ直ぐ進んでね」
 待ってるから、という最後の言葉は空から降ってきたように聞こえた。理沙ちゃんもいなくなっていた。
 不安な気持ちが無いわけではなかったが、早く帰りたいという気持ちの方が強かった。橋は渡らない、そもそも振り返らない、真っ直ぐ進む。頭の中で反復させながら、私は足を進めた。三人に早く会いたいという思いが、私の心を背後の霧から、古ぼけた橋から、どんどん引き離していった。
 歩いていたはずの私の身体は気がつくとふわりと宙に浮いていた。浮遊感がゆりかごのように心地良く、泣き疲れていたことを思い出し目を閉じた。



 トンネルを通り抜けたような感覚で目が覚めると、ぼんやりと霞む視界に映る、白い天井、白い壁、白いベッド。最初、天国にいるのかと思った。
 一瞬の後、機械の音や父の声、バタバタという人々の足音が聞こえたので、私はここが現実の世界で、病院の中だろうということに気付いた。
 身体は重く、手も口も動かしづらかったが、かろうじてズボンの右ポケットに小さな硬い物が入っていることを確認できた。
 そしてもう一度目を閉じた。透き通るような青い空。キラキラと輝く水面。あの美しい青を、瞼にもう一度思い浮かべた。
 
 きっと大丈夫。
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