令和の時代もパワハラとかあんねん

文字数 1,300文字

 令和の時代になっても、所謂「体育会系の職場」は存在する。職場によっては、気を抜けば命に関わる事故が起きる。そんな職場であれば、指揮系統がはっきりとした体育会系のやり方が合っているだろう。部下が命令を一切聞かないならば、ヒヤリハットどころではない。常にヒンヤリ、心臓に負担が掛かる。だが、こうも暑いと、そのヒンヤリすら欲しくなる。

 営業職、それは取引が決まっている会社を訪問する部署なら幾らか体は楽だ。決められたルートを使い、今までの実績やノウハウを活かせるのだから。一方、会社が相手でも、飛び込み営業は難易度が高い。そもそも、話を聞いて貰える事が稀だろう。大きな会社が相手なら、受付まで行って待って終わることもしばしばだろう。だが、その間だけでも、日差しに焼かれず空調の効いた空間で休めるのだろう。

 それに対して、一般家庭向け商品の営業は、体力の負担もメンタルへの負担も大きい。幾ら暴言を吐かれても次々に家を回り、居留守と分かっていようがパンフレットをポストに入れておく。それすらノルマがあるが、却って何もせずに街を彷徨くよりは気が楽だ。

 上司について回っていた新人の頃は、ただスキルを学ぶのに必死だった。上司は、とにかく声の大きなタイプだった。部下を叱責する声が大きければ、他の部署で働く人を呼び付ける声も大きい。それだけなら、被害は会社の中だけに留まるのだが、何分営業職である。それも、一般家庭向けの商品を扱う営業である。

 上司は、インターホンを押して反応が無いと、家に向かって大声で呼び掛ける人だった。特に、室外機が作動していて、居留守を使っているのがバレバレの場合は大きな声を上げていた。平日の昼に戸建てに居る人達。それは、引退世代か子育て中の世代が多い。そして、上司は引退世代が出て来れば半ば脅すように契約をさせ、子育て中の世代は子供が泣くまで声を荒げていた。その上、その声を聞いたからと更に家に向かって呼び掛けた。

 それを何度も繰り返す内に、早く独り立ちしたいと願う様になった。この上司のやり方で、問題にならない方が異常なのだが……どうやら、上司のやり方も方が契約数自体は多く、会社は儲かる。そして、上司はその儲かった金で買った高級なお菓子等を、担当エリアの警察に渡して住民からの通報を黙らせていたそうだ。その話、警察の上層部にバラしたら、さぞかし気分が良いだろう。ソシャゲの課金で戦いを有利に進められるのとは違い、それは不正行為でしかない。警察はどんな安いものでさえ、受け取ってはいけない決まりがあるからだ。だが、それを警察の上層部に告げたら、上司から報復をされそうだ。
 さて、スーツを着て炎天下を歩き回ったせいか、暑さで頭が回ら無くなってきた。仕方ない、自分の為にカフェで課金をしよう。安いバーガー店は夏休み中の学生が多いから休めない。なので、本当に必要以上の課金だ。高めのカフェに入って襟元を緩める。お冷は直ぐに無くなるが、高めの店であればサービスも良い。
 十分な休息を取り、腹も満たしてから仕事を再開する。上司のような強気にはなれないが、これからも死なない程度に仕事を続けよう。
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