9条信者はバカに見られるが……。
文字数 2,153文字
どうしてあんなに楽観的なんだろうなって。
普通に考えろよ、軍事力を持てないとか今の国際社会だと『殺してください』って言ってるようなもんだろ？
あんなもん役に立つかよ！
中国やロシアを見てみろ、あの数に自衛隊が勝てると思うか！？
な？
……憲法9条なんか廃止して、もっと軍備を増強した方がいいって。
いざという時に憲法9条ガーって言いながら死にたいのか、あいつら。
何が言いたいんだよ。
角が立つ言い方をするのはお前の悪い癖だぞ？
ごめんごめん。
まぁ、正直僕は憲法9条の廃止、或いは改正については反対派なんだ。
理由はちゃんとあるよ？
先ず絶対問題として、自衛隊は役に立たない。
その認識は多分共有されてるかと思うけど……どう？
あぁ……それは、そうだけどよ。
だから増強しなければいけない、そうするには――
話は最後まで聞けって。
自衛隊は役に立たない。今のままじゃ戦力が心もとない。
じゃあ仮にそれを増強するとして――そのお金や資源はどこから出るんだい？
……それは
増税、或いは諸外国からの融資。その辺が妥当なラインだろうね。
まあ仮にそれで増強出来たとしよう。はい、じゃあ戦争になりました。
日本の土地は中国やロシアよりずっと狭い。戦力増強にも土地の制約があり限度もある。
はっきり言って中国やロシアの軍事規模からすれば、日本が出来る軍備の限界なんて雀の涙だ。
まず間違いなく負けるだろうね。軍備増強をしたところで。
そうだね、やってみないと分からない。
じゃあそれで仮に守りきれたとしよう。
その頃には土地もぼろぼろ。人も何千何万と死んで残ってない。
もしかしたら僕も君も死んでるかもね。徴兵されて。
日本は戦争が出来ない。これは憲法9条の有る、無しに関わらず事実だ。
土地は狭く、資源も少なく、人も居ない。そんな日本が戦争をすれば、まず間違いなく碌な結果にならない。そんなことは、きっと君も分かっているだろう？
そうだけどよ。
だからって戦力を持たなかったら、中共やロシアは攻め放題じゃねぇか。
だから憲法9条があるんだよ。
憲法9条の存在によって、日本は国際社会に対して『私達の国は決して侵略を行いません』と、そう宣言しているんだ。
これがどういう意味を持つかは、今起きているウクライナとロシアの戦争を見れば分かる。
思い出してごらん。ロシアは何と言ってウクライナを攻める『理由』にしていたのか。
アレは確か……
『ウクライナがNATOに加盟すると、ロシアを侵略してくるかもしれない』って……話だったよな。
正解。ロシアほどの大国でも、国を攻めるには大義名分が必要なんだ。
何故だと思う？
何故って……そりゃ、大義名分もなしにいきなり殴りかかったら誰も味方してくれないだろ。何ならあいつは自分の欲で人を殴る奴だって思われて、逆に袋叩きにされるかも――ってあ。
分かったみたいだね。
いいかい、日本には憲法9条がある。憲法9条がある日本は、他国に対して決して自発的に侵略戦争を仕掛けない。仕掛けたくても仕掛けられないようになっている。
日本は他国の脅威になり得ない。
憲法9条がある限り、日本に対して侵略の大義名分を用意することは不可能だ。
あ……ああ、分かった、分かっちまった。
俺は、俺はなんてことを――。
ああ、気付けたみたいで良かった。本当に。
日本が憲法9条を撤廃すれば、撤廃したことを理由に日本を攻撃できるんだ！！！
あいつは他国を侵略するために、憲法9条を放棄したって言いがかれば！！！！！
大正解。
そしてその言いがかりは誰にも否定できない。
何せ撤廃してしまったらそう見られても仕方がないから。
憲法9条を改正させたがっている人たちが居るだろ？
多分、彼らの一部は中共の情報工作員なんじゃないかな。
日本が軍備増強なんてしても雀の涙で、しかも憲法9条を撤廃したことを理由に攻撃が出来る。
日本が目の上のたん瘤になっている中国からすれば願ったりかなったりだ。
中国は世界全部を相手に出来るほどの軍事力はまだない。
けれど日本とアメリカ以外を黙らせられるなら――。
それだけで十分だ、ってか……
だ、ダメだな。絶対だめだ、憲法9条だけは変えちゃいけない。
分かってくれたようでなにより。
――これを見ているみんなもね。
勿論――だからと言って自衛隊を捨てていい訳じゃないし、憲法9条を過信していい訳じゃない。
9条自体が僕達を守ってくれることは無い。9条が持っているのは、あくまで他国が日本に対して攻める理由を『作らせない』という役割だ。
最低限の戦力を持っていなければ、他国からの支援が意味を為すまで持ちこたえることも出来ない。
ウクライナを見れば分かるようにね。自衛隊は必要だ。
だが、だからと言って憲法9条を改正する必要はどこにも無い。
他国に攻める大義名分を与えるだけだ。それを理解して、仮に憲法改正の国民投票なんてものが行われた時には。
躊躇することなく、反対に票を入れなければならない。
