第1話

文字数 430文字

仕事の関係で渋谷に行くと、渋谷スクランブルスクエアなる施設を初めてみた。
Shibuya Scramble Square

スクランブルスクエアそばのエスカレーターに乗っていると、前の若者が振り返って話しかけてきた。
「あれ? 経済学部だっけ」
???

急になんだろうと怪しんでいると、私の後ろから、
「そう。経済だよ。ゼミは入ってないけど」の声。

どうやら、若者二人がエスカレーター上で私をサンドイッチにして話しているらしい。
「俺はゼミ入ってるけど、けっこう楽しいよ」
「そっか~。俺も入れば良かったかなぁ」

どうやら二人には間にいる私が見えていないようだ。
幽霊。エスカレーターに乗りながら、ゴーストの私。

人が間にいるのに――まさに”人間”――話し続けるなんて、俺をコケにしてんじゃねえ!
などと、苛立つことは全くなかった。

そのときの私はゴーストだったから、肉体を抜け出して俯瞰して見ていたのだろう。
(俺も大学時代はゼミに入ったよ。楽しくはなかったけど)
幽霊の声は、こだましない。
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