第1話

文字数 701文字

 こうなることは、わかっていた。比べられたときに選ばれないということはわかっていて、それでもいいと思っていた。
 だがいざとなると悲しくなるものだ。これがもし、もしもただの恋愛での選択であったり、なにかの仕事の選抜だった場合ならよかったのだけれど。
 命がかかったこの状態で、選ばれないのはなぜなのかずっと朦朧とした意識で考えてしまう。同じ状況なのに、なぜあの人は抱きしめられているのだろうか。なぜ私は知らない人達に囲まれ、うるさい中で死に向かっているのか。私の手を取ってくれるのは、誰かいないのか。
 思えばずっとそうだった、何をしても二番目で諦めていた。私はそういうものなのだとずっとずっと思っていた。
 心にこびりついた、その錆の様な諦めはどうにかなるものではなかったのだ。
 赤色の光の中、いろんな人が騒ぎ走って助けを求めている人を探している。多くの人が助かればいいなと思う自分もいる。自分は死に向かっているだろうから。
 隣で抱きしめられたあの人と、抱きしめたあの人を見るのが辛いと初めて思った。二番目だと言うことがこんなにも辛いだなんで、いつぶりの感情だろうか。
 聞こえますか、という声に返事をしたつもりだが繰り返し聞かれる。声からしておそらく男性だろうが、それ以上の情報はわからない。目の前が小さな針の穴から世界を覗いているように小さいのだ。
 でもこれなら、あのふたりを見なくて済むのかもしれない。声もそこまで聞こえない。よかった。私は『彼らの中での私』でいられる。一番を望まない。
 でもやっぱり、二番目より一番目がよかったなと思う。そして最後に抱きしめられながら逝きたかった。さようなら私の一番目。
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