第1話

文字数 865文字

 2021年5月の出来事である。
神奈川県から出ないで下さい。密を避けて下さい。ルールを守って下さい。ってのを踏まえつつ。かみさんと子らを引き連れて人生初の「磯釣り」に行った。以前から堤防や海釣り公園等には行くこともあったが、子らがまだ小学生と云うこともあり磯釣りはなかなかハードルが高かったのだ。然しながらこのコロナ禍で人混みを避けるには磯が良いのでは? と強風の中イソイソと出掛けて来たのである。さっそく断崖絶壁に立ち、まじまじと海中を見つめると、真っ白な波のうねりの奥には美しい青が見え隠れしている。素晴らしく美しい。コレが海釣りの真価だと直感的に感じ、軽く頭の中に稲妻が走る。僕は磯釣りに目覚めてしまったかも知れない。「磯釣りの夜明けが来たぜよ」とか何とか言っている僕を横目にかみさんと子らはせっせとタイドプールへと消えていった。現実問題、父の威厳なんてものはこんなもんだろう。しかし、そんな父の心は確実に踊っている。先ずは何かと使い勝手の良いバスロッドにジグを付け様子見だ。楽しい。後二〜三投したらいよいよこの日のために買っておいた磯竿を出そう。そう思った瞬間、手元にビリビリッと痛みが走り抜ける。なんだ! さっき感じた衝撃を遅ればせながら手元で感じているのか?否、違う。雷だ! 気づけば空一面がカミナリ雲に覆われその場一体に放電し始めている。それとほぼ同時にリールを持つ手にバチっと電流が流れたのだ。痛い。普段浴びている静電気の二倍は痛い。駄目だ納竿だ。磯釣りのロマンを体感した矢先の撤退だ。久々のボウズだ。結局、近くのタイドプールで遊んでいた子らに撤退命令を出しつつ同じくタイドプールにて餌釣りをしていたかみさんにも声をかけ……「あっ」その竿先を見るとしっかりとベラが掛かっている。素晴らしいボウズ逃れだ。よし、これで心置きなく帰れる。そしてまた一つ「磯釣り」と云う楽しみが増えた僕に乾杯。そして、コロナ禍に苦しみつつしっかりと現地で営業をしているお土産屋さんへの貢献も忘れずして帰ろう。頑張れ日本!ありがとう城ヶ島。
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