第1話

文字数 1,797文字

私は普段は会社員として働いている。現場仕事が主で、一人の時もあれば皆と一緒にという時もある。 
 先日何人かの社員と一緒に仕事をする機会があったのだが、その時にこんな事があった。
 その中のある者が予定時間より遅れて来た。そしてある者は持ってくるべき書類を忘れて来たのである。その事は百歩譲って仕方ない事だとしよう。一応、私がその現場を取りまとめるような役割をする立場であったので、その事を咎めたのだが、その時に言われた一人が「そんなに言わなくてもいいじゃないですか。仕事は仲良くやりましょうよ。」という発言をしたのである。私は空いた口が塞がらなかった。この人何を言ってるんだとさえ思った。
 しかし、ここで一つ問題なのは、「仕事を仲良くやる」という点では私も賛成であるが、心構えというのか仕事への取り組み方や姿勢が、人によって違うという点である。
 それは所謂、「卵が先か鶏が先か」議論に似ているところもあると思うのだが、仕事をする上で、まず色々なコミュニケーションも取って仲良くなるからこそ円滑にいい仕事ができるのか、それとも各々の技術やスキルを上げるからこそお互い信頼していい仕事ができるのか、という事である。どちらも正解であるように思うが、やはり前者の仲良くなるというところが引っかかるところである。
 つまり、仲良くなる=馴れ合い、ではないという事だと思う。私が先の仕事仲間の発言で引っかかっているのもどうやらその辺のところにあると思う。
 確かに仲良くなるのは大切である。しかしそれはコミュニケーションを取って相手を知る事はもちろん、仕事をする上であるなら、共通理解などを深める為のものでなければならないのではないか。だからといって、後者のように常に仕事ありきの関係で、ライバルや切磋琢磨し合う関係では、時に疲れてしまったりギスギスしてしまうであろう。故に、そこはバランスは必要だと思う。
 しかし、真面目な話をさせてもらえば、仕事とはお金をもらってその仕事に携わるプロである以上、やはりその仕事を頂いている方にとって利益になり満足してもらえる仕事をするのが筋なのではないだろうか。少なくとも私はそう考えている。なのでその仕事に携わる一人一人が自身の言動に責任を持ち、よりよりパフォーマンスを提供できるように取り組むべきである。
 あるサッカー選手の話で、自分のチームメイトとあえて仲良くし過ぎないようにすると言う話を聞いた事がある。なぜかと言えば、その選手は仲良くなるとチームメイトとの間で率直な意見が言い合えなくなるのを良しとしたくないからとの事であった。
 私はなるほどと思った。プロとして良い仕事をするなら、それは一理も二理もあるなと。
 それはあくまでトップアスリートだから必要で、私達普通の会社員にはそこまでストイック心構えは不要かもしれない。
 ただ一つ思うのは、いつもお互いの関係を気にして言い辛い指摘や意見を言わないのは、仲がいい、とは言わないのではないだろうか。そして相手の事を思っているからこそ、厳しく言ってくれる人もいるし、そこには打算的な関係がないが故に、その相手の事を信用できるという事もあると思うのだ。

 仕事をする理由・目的や取り組み方も人それぞれだと思う。故に皆が高い意識やモチベーションで仕事をするなどという事もありえないのかもしれない。それは仕方ないにしても、やはり仕事という時点でなあなあにしてはいけない部分はあるのだと思う。
 このご時世、言い方や内容によってはパワハラになり兼ねない。また、それを恐れて余計に他人に対し意見や叱咤のような事ができなくなっているのかもしれない。もちろんパワハラになるような発言をするべきでない。
 しかし、それを恐れて、生産性のある意見やその人の気付きになるようなアドバイスを与えるチャンスがなくなるのも、勿体ないように思う。言い方や、その相手に合わせた話し方というのも大切なのであろう。

 「いい仕事をする」と一言で言っても、それすら人によって様々な答えがあるのかもしれない。それ故、私が思う、いい仕事というものが正しいかも分からない。
 だからこそ、いい仕事をするという事を常に考え、またその仕事を共にする仲間と意見や考えを擦り合わせて行く事に成長の鍵があるのだろう。
 あなたにとって、「いい仕事をする」ってど
ういう事ですか?
〈完結〉

 

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