第1話

文字数 1,470文字

あるところにチノちゃんというおんなのこがいました。
「わたしはチノちゃん。もう、ひとりでなんでもできるの。はみがきもできるし、ひとりでねることもできる。じてんしゃだってのれちゃうんだ」
あるひ、おかあさんからおねがいごとをされました。
「チノちゃん。おかあさん、いまてがはなせないから、このおべんとうをやまのうえのおばあちゃんのところにもっていってくれない。ひとりでいける?」
するとチノちゃんは、
「そんなのかんたんよ。チノちゃんがひとりでもっていってあげる」
チノちゃんは、おおきなおべんとうばこをリュックにいれて、いえをしゅっぱつしました。
チノちゃんのおばあちゃんは、おやまのてっぺんにすんでいます。
きょうはおひさまがでていてとってもあたたか。チノちゃんはげんきよくやまみちをすすんでいきました。
しばらくするとおおきないわがみえてきました。なんとおおきないわが、みちをふさいでいるではありませんか。これではさきへすすめません。
「よいしょ。よいしょ」
チノちゃんがいっしょうけんめいおしても、びくともしません。
「どうしよう・・・」
するとチノちゃんのうしろのほうから、おおきなからだのクマさんがこえをかけてきました。
「どうしたんだい?」
「クマさん。おおきないわがあって、さきへすすめなくてこまっているの」
「どうれ、オイラにまかせろ」
するとクマさんが「えいっ」と、いわをもちあげてどけてくれました。
「ありがとう」
クマさんのおかげで、さきへすすむことができました。

しばらくすすむと、わかれみちがありました。そこにはみちあんないのかんばんがありましたが、むずかしいかんじでかかれていて、チノちゃんはよめません。
「どうしよう・・・」
するとチノちゃんのあたまのうえに、スズメさんがとんできてこえをかけてきました。
「ちゅんちゅん、どうしたの?」
「スズメさん。どっちがおやまのてっぺんにいくみちかわからないの」
「ちゅんちゅん、わたしがおそらをとんでみてきてあげる」
するとスズメさんはぴゅーっととびあがって、おそらをぐるぐるととびまわってからもどってきました。
「ちゅんちゅん、わかったわ、こっちのみちよ」
「ありがとう」
スズメさんのおかげで、さきへすすむことができました。

それからも、みちにまよったり、かわをわたったり、たくさんこまったことがありましたが、そのたびにどうぶつさんたちがたすけてくれました。
そして、やっとおやまのてっぺんがみえてきました。
おばあちゃんはおうちのまえでまっていてくれました。
「おばーちゃーん」
チノちゃんがかけよっておばあちゃんにだきつくと、おばあちゃんはチノちゃんのあたまをなでながらいいました。
「おやおや、ひとりでここまでくることができてすごいね」
するとチノちゃんは、あたまをおおきくよこにふっていいました。
「うんうん、ちがうの。チノちゃんひとりじゃここまでこられなかったの。みちのとちゅうでできないことがいっぱいあって、どうぶつさんたちがたすけてくれたの」
するとおばあちゃんは、ふふふっとほほえみながらいいました。
「そうだね、だれにでもできないことはたくさんある。でもね、いっしょうけんめいやれば、だれかがたすけてくれるんだよ。そして、こまっているひとがいたら、こんどはチノちゃんがたすけてあげられるといいね」
「わかった。こんどはチノちゃん、おかあさんのことたすけてあげる」
それからふたりでおべんとうをたべながら、チノちゃんはここにくるまでのぼうけんを、おばあちゃんにはなしました。そのかおは、とてもじしんにみちあふれていました。

おしまい
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