通告はしていた筈ですが、実は運営母体が変っておりまして……

文字数 760文字

「元A国大統領ビフ・タネン様でお間違いございませんか?」
 ダークスーツに絹のネクタイ。高級そうな黒(ぶち)眼鏡の愛想の良さそうな男は、俺にそう言った。
 白人……だろうが、他の人種の血も色々と混じっていそうな、不思議な感じの男だった。
「誰だ? どうやって、ここに入った」
「……の運営の代理人(エージェント)です。毎度、御利用、ありがとうございます。本日は非常に残念なお報せを……」
 ん? 今、何の運営って言った?
「残念ですが、貴方はやり過ぎました。現在の運営母体である我々と、かつての共同運営者の予定からの逸脱を修正可能な範囲に止める為に、貴方を削除させていただく事になりました」
「はぁ? ……あぁ、俺が使ってるSNSの運営のヤツか? だがよう、この国には表現の自由ってのが有ってな……」
「残念ですが、かねてよりの通告通り、運営母体は一時的に我が社になっております。我が社の方針から逸脱する方は、容赦なく削除するのが現在の方針です」
「おい、聞いてねぇぞ、いつからだよ?」
「はい、ミシェル・ノストラダムス氏を通じて行なった通告通り、西暦一九九九年七月からです」
「待て、その時代、SNSなんて無かったぞ」
「何か勘違いされているようですが……私は、現在、『この世』を運営しております『株式会社・地獄』の代理人(エージェント)でございます」
「へっ?」
「かつての共同運営者にして、我らが宿敵である『公益法人・天国』との一時停戦協定では、最終決戦の時まで、この世界は悪が支配して良いが、善や正義を完全に滅ぼしてはならぬ、となっております。貴方はやり過ぎました」
「お……おい……待ってくれ、何がどうなってる?」
「ええ、ですから……不完全な形ではありますが……我々と宿敵の今後の予定と……来たるべき最終決戦のルールは公開されていた筈ですが……例えば『ヨハネ黙示録』などで……」
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