第1話

文字数 742文字

「明後日夜空いてる?俺んち来ない?」
LINEの通知が来ると同時に既読した。
「何時ですか?」
返信はすぐにした。
「1時?うーん、10分くらい前でも平気。遅くまで仕事だからこの時間でごめん。」
会うにしては遅い。
「遅いですけど大丈夫です。二人ですか?」
二人かどうかは重要なポイントだ。
「俺も友達呼ぶから、何人か誘ってよ。」
二人じゃないのか。がっかりだ。
「夜遅いので難しいかもしれませんが、声かけてみます。飲み会ですか?」
またいつもの飲み会だろうと思って尋ねた。
「飲み会っていうか。もっと過激なこと?」
過激なこと?嫌な予感しかしないが聞かずにはいられない。
「過激なことってなんですか?」
少し返信の速度が落ちてこう返ってきた。
「うーん、乱交パーティー的な?」
一番想像したくなかった返答だった。

彼は人気者だ。そんなことは私もよくわかっている。好意を抱いているし、どうにかなればいいとは思っている。
最初は出待ちを待っているファンの一人に過ぎなかった。足繁く通い、手紙や差し入れを渡して徐々に仲良くなっていた。
ダイエットはもちろん、ボブだった髪は彼好みのロングにした。はじめは1cmヒールを履いていたが、3cm.5cmと女らしく見えるよう徐々にヒールの高さも高くした。いつか、ファンから少しだけでもいいから進んだ関係になるために。
連絡先を交換してからは、距離が近くなるけれど頼まれることの内容もあれと思うことが多くなってきていた。でも信じていた、いつか一瞬だけでもいいから特別になれることを。


「すみません。」
24時50分を待って一言だけ返信をした。その後、何度も見返したLINEを横にスライドして削除した。連絡先を交換した時あんなに嬉しかったのに、連絡先もブロックした。

こうじゃない。こうじゃないから。








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