第1話

文字数 1,052文字

「過去の自分は他人」
と、芸人のいとうあさこが言っていた。
と、声優の佐倉綾音がラジオで言っているのを聞いた。
あやねる!

今回、私は”とある男”の過去の文章を入手した。
文章は10年前のもので、コンビニでの立ち読みを店員に注意された”とある男”が、乱雑な文字でその心境を書き連ねている。

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仕事帰りに〇〇〇(※コンビニの店名)で立ち読み途中に、「立ち読みはやめてください」と店員のおばちゃんから注意を受けた。

「こちらは商品ですので、立ち読みはご遠慮ください」とのことだが、「商品の中身を見て吟味しているのだから、別にいいのではないか?」と思った。

もし俺が日々の仕事や些事を通してどうしようもない苛立ちや鬱々とした気持ちを抱えていて、週に一度特定の雑誌の特定のマンガをコンビニで立ち読みすることだけを生きがいにしている人間だったら、口論や暴力事件が発生しても決しておかしくはないかもしれない。

まあ、現実は即行、立ち読みを中止した訳だが。

立ち読みが禁止となると、雑誌を購入する者は、その雑誌の雰囲気や連載中のタイトルや著者、知名度や信用だけを頼りに買わなければならなくなる。
そんなのは、立ち読みしたい側の詭弁かもしれないが。

店の経営者が、何も商品を購入せず、ただ立ち読みするだけの輩を快く思わないことは理解できるが、立ち読みを歓迎するくらいの心意気であってほしいと思う。

また、雑誌なんかはその中身が商品で、それに対して価格が設けられている。
制作側は立ち読みで済まそうとする人に、購入しようと思わせるだけの物をつくらなければならないのだろう・・・等とも思った。

(雑誌の)面白さと歴史、(著作者の)肩書きや知名度が大切になってくる。

「立ち読みヤメロ」の一言で色々なことを考えてしまう俺は、その場で反論したり店員に殴りかかる者なんかよりもよっぽど危ない奴なのではなかろうか――
何て考えてしまう只今AM5:21。

中学からずっと立ち読みをしていた(商品も買うが)最寄りのコンビニで、ひとつの楽しみが封じられてしまった・・・。
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いかがだろうか?
この文章はノートまるまる1ページに渡り、呪詛のように書かれていた。

「何て自分本位な、甘ちゃんクソ野郎だ!」
私は”とある男”に対して思った。

立ち読みという、金銭を失いたくない消費者による、ただのワガママ行為を正当化し、まして雑誌の作り手にまで責任を転嫁するクズっぷり!
まさに底辺の中の底辺。

ちなみに私は、ちょうど10年前から、コンビニでの立ち読み行為を辞めている。
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