異世界転生者ガイド(1つ前のバージョン)

文字数 1,019文字

「なるほど、お前たちの本拠地は……この道沿いに半日ほど歩いた場所に有る集落か……」
「は……はい……」
「戦闘員と非戦闘員はどれ位だ?」
「え……? 戦闘員?」
「兵隊その他の戦える奴と、そうじゃない奴は、それぞれ、どれ位の人数だ?」
「あ……あの……普通の農民ばかりですけど……。用心棒として村で雇ってる旅の戦士が2〜3人居るくらいで」
「はぁ? オークのくせに農業なんてやってるのか? 変った異世界だな……」
 元の世界で「トラ転する前に必ず読もう‼」と言われていた「異世界転生者ガイド」には、そんな話は書いてなかった。
 とは言っても、一冊三千円以上する本なので、俺が読んだのはブッ○○フで買った最新より1つ前の版だが……。
「えっ? オーク、何の事?」
「何を言ってるんだ? まあ、いい。で、用心棒以外は何人ぐらいだ?」
「は……はい……百人足らずで……でも……その内、三〜四十人ぐらいは子供と老人です」
「なるほど……俺1人でも楽勝だな」
「あ……あの……転生者さま……」
「何だ?」
「変な事しないで下さい。あたし、許婚(いいなづけ)が居るんです」
「ふざけんな。どこの世界に雌のオークに欲情する人間が居るか」
 そう言って俺は情報を聞き出した捕虜の雌オークに剣を振り下した。
『捕虜にしたゴブリンやオークは情報を聞き出した後に殺してもかまいません』
 俺達の世界でのベストセラー「異世界転生者ガイド」にも、そう書いてあった。
 異世界人とは言え、同じ人間とトラブルを起こすのは避けたいが……こんな醜いヒトモドキは同じ空気を吸っていると思うだけで吐き気がする。
 それに「異世界転生者ガイド」によれば、大概の世界で人間が最も数が多いようなので……オークやゴブリンを殺しても問題はないどころか、多数派である人間達も喜んでくれる筈だ。
 でも、俺は、相手がオークとは言え、不必要に苦しめるほど悪趣味ではない。
 一撃で楽にしてやった。
 ……明日の夕方までには、オークどもの部族1つがこの世界から消える。
 そして、このクソな世界も少しは人間にとって住み良い場所になっているだろう。

「異世界転生者ガイト」最新版より
 捕虜にしたゴブリンやオークは情報を聞き出した後に殺してもかまいません。
 ただし、一部の異世界のオークやゴブリンの間では「転生者に『人間がオークやゴブリンに見えてしまう』と云う効果のある幻術をかけた上で、わざと野放しにする」と云う悪質な悪戯が流行っているようです。注意しましょう。
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