短編『友達ガチャ』

文字数 3,062文字

 ふじしまたかしくんは ようちえんに にゅうがくしました。にゅうえんちけっとで 10れんがちゃを 1かい まわしました。

Nあかぎ たろう
Rきのした さくら
Nよこやま おぷてぃます
Nきど ゆうじ
Nかわの さとる
Nやまだ かなこ
Nとなみ ゆうすけ
Nうじたに あい
Nさえき こじろう
Rおおつか りゅういちろう

 ねんちょうさんまで おともだちと なかよくたのしくすごしました。


 ふじしまたかしくんは、しょうがくせいになりました。にゅうがくおめでとうちけっとで 10れんガチャを1かいまわしました。

Nあかぎ たろう
Nたに こうへい
Rくにむら じゅん
Nきど ゆうじ
Nさえき こじろう
Nたかはし すぴか
Rはやし みちる
Rふかや みか
Nさえき こじろう
Nやまだ かなこ

 2まいになったノーマルともだちの『あかぎ たろう』と『きど ゆうじ』と『さえき こじろう』と『やまだ かなこ』は ごうせいして レアともだちになりました。


 藤島隆くんは小学3年生になりました。クラスがえチケットで、10れんガチャを1回まわしました。

N徳田 絶宇守
N赤木 太郎
R御津宮 玲子
N國村 潤
N福山 元気
N花園 春美
R海江田 誠
N矢島 ここあ
N城戸 雄二
N佐々木 炎皇斗

 所持げん界数が少ないので、友だちがいっぱいになってしまいました。だから、いらないノーマル友だちをポイントにかん元しました。


 藤島隆くんは小学5年生になりました。クラス替えチケットで、10連ガチャを1回まわしました。

R御剣 尋
N水木 繁子
SR冬月 桜花
N赤木 太郎
R吉賀 陽毬
N佐藤 浩二
N猿山 凛一
N村上 悠人
N鈴木 今鹿
R斗南 蓮

 初めてSRを引けて藤島隆くんはとても喜びました。『R赤木 太郎』が2枚になったので、合成して『SR赤木 太郎』になりました。


 藤島隆くんは中学生になりました。中学入学おめでとうチケットで、10連ガチャを1回まわしました。

N小川 直哉
N反町 拓海
N海老名 清
N本宮 花子
R辻岡 龍二
N森 宏
N中島 悟
N石井 久美
N原田 みなみ
N中川 徒夢

 あまり良い友達が引けなかったので、藤島隆くんはとても困りました。どうしても新しいSRの友達が欲しかったので、SR赤木太郎を売ってそのポイントでSR剛田敦史を手に入れました。


 藤島隆くんは高校生になりました。高校入学おめでとうチケットで、10連ガチャを1回まわしました。

R渋沢 翔
R郡山 鳴門
N島田 紳助
R巻 雪子
N西林 童夢
R利根川 飛呂彦
SR新田 京子
R水野 亜美
N竹原 阿佐
R猪口 紅巴

 藤島隆くんは頑張って偏差値の高い高校に入ったので、レアリティの高い友達が多く引けました。

 でも本当に欲しかった『SSR三ノ宮 アリア』は引けませんでした。課金したかったのだけれど、お小遣いが足りませんでした。勉強も難しくて、バイトをしている時間もありませんでした。

 他の人が『SSR三ノ宮 アリア』を引いたのを見て、とても悔しがりました。


 悔しさをバネに勉強をした藤島隆くんは、そこそこ有名な私立大学に入りました。テニスサークル入会チケットで、SSR一枚以上確定5連ガチャを1回まわしました。

R宇津木 希夢
SSR儀仗 星羅
R富沢 由紀夫
N藤田 鉄平
SR能登 由香

 人生初のSSRの友達を引くことができて藤島隆はとても喜びました。それも皆が羨ましがる『SSR儀仗 星羅』です。彼は時々調子に乗って周りに自慢したりしましたが、基本的に『SSR儀仗 星羅』をとてもとても大事にしました。


 大学を卒業した藤島隆は大きな会社に入社しました。入社チケットで3連ガチャを1回まわしました。

SR加茂 重成
R哀川 透
SR武田 真須美

 レアリティの高い友達でしたが、その価値はSSRには及びません。藤島隆は『SSR儀仗 星羅』だけレベルを上げ続けました。
 レベルが最大になったところで、課金アイテムの結婚指輪を使い『SSR儀仗 星羅』を『UR藤島 星羅』に進化させました。アルティメットレアは実装されている最高のレアリティでした。


 家庭を持った藤島隆は仕事に励みました。その功績が認められスピード出世をしていきました。

 そんな彼のもとに同窓会チケットが届きました。久しぶりに復刻5連ガチャを1回まわしました。出てきのはNとRばかりで、手元に残しておくような友達はありませんでした。
 がっかりした藤島隆は、どうせろくな当たりがなかったのだろうとリストを見ました。すると、どうでしょう当たりの中に『SSR三ノ宮 アリア』を見つけてしまったのです。
 燻っていた忘れていた情熱が沸き上がってきました。苦労していた高校時代と違って、今はお金を持っています。藤島隆はすぐさま課金して10連ガチャをまわしました。しかし『SSR三ノ宮 アリア』は出ません。

 1万、3万、10万、50万、ついにはクレジットカードの限度額いっぱいまでガチャをまわしました。その甲斐あって、ついに『SSR三ノ宮 アリア』を手に入れることができました。
 藤島隆は大枚をはたいて手に入れた『SSR三ノ宮 アリア』のレベルを頑張って上げました。お金と時間はかかりましたが、ついにレベルを最大にすることができました。
 こうして高校時代の鬱憤は完全に晴れました。晴れたはずなのに、時間が経つにつれて『SSR藤島 星羅』と『SSR三ノ宮 アリア』だけでは満足できなくなりました。

 次々に魅力的なSSR友達が登場するのです。お金の力でその友達が手に入ると知ってしまっては、もう止まりません。

 藤島隆はガチャを回し続けました。

 『SSR渋川 愛美』『SSR葛葉』『SSR水嶋 イチゴ』『SSRレイラ・タチバナ』『SSR大泉 艶子』『SSR豊崎 凛』……。

 欲しいものが手に入るまで課金し続けました。

 いくら給料が良くてもお金は足りなくなってしまいます。そこで藤島隆は古くなった友達をポイントに還元していきました。まずはNとR友達を全て、そしてSRもほとんど売り払いました。


 それでもお金は足りません。そこで藤島隆は考えました。別に自分のお金でガチャを回す必要はないんだと。そこで彼は会社のお金を使って課金を続けました。

 会社のお金は彼の財布とは、文字通り桁が違いました。そのお金で藤島隆は一日中ガチャを回し続け、SSR友達をいっぱい揃えました。

 しかし、悪いことはいつかはバレます。不正が発覚して藤島隆のアカウントは停止になりました。もちろん会社もクビです。警察にも逮捕されました。

 彼が最後まで残していた『UR藤島 慶子』も『SSR儀仗 慶子』に戻りました。


 月日は流れ藤島隆は刑務所を出ました。出所記念チケットで友達ガチャを1回まわしました。

SSR赤木 太郎

 藤島隆は喜びました。

「おお、オレにもまだ運が残っていたようだ。お互い歳をとったが、また昔のように友達としてやっていこう」

 それを聞いた赤木太郎は、怪訝そうな顔をしていました。

「何を言ってるんだ? いまさらノーマル友達なんて必要ないんだぞ」

 『N藤島 隆』はポイントにも還元されず、そのまま捨てられてしまいました。
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