ある女学院の慣習

文字数 789文字

「この学院ではね、これが制服みたいなモノなのよ……」
 二一世紀も半ばとなった今では、普通の中学・高校では制服は、ほぼ廃止されている。
 学校の制服なんて、あたしにとってフィクションの中のモノだった。幼稚園の頃からずっとだ。
 しかし……選ばれた少女しか入学出来ない、この女学院は違う。
「サイズの調整は、これでいいかしら?」
「はい、お姉様」
 この学院では先輩と後輩が擬似的な「姉妹」となる。
 そして、新しく入学した「妹」の制服の最後の仕上げをするのは「お姉様」の役目だ。
 あたしも、いつか「妹」が出来た時には……「お姉様」と同じ事をするのだろう。
 学院の「外」の人達が考えるような、甘酸っぱい擬似恋愛では無い。
 何から何まで本気の……()()()()()だ。
「貴方がここを卒業した時、この服を脱ぐ事になるでしょう。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()
 そうだ……この「制服」の制御AIは、あたしの動きを覚え、卒業後にあたしが着る事になる「仕事着」に移植される。
 あたしは、「お姉様」が最終調整をしてくれた()()()()()の起動ワードを唱える。
 あたしにも、いつか、()()()()()()()()()()()()()()()()、「妹」が付く事になる。
 胸に有るこの女学院の校章……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のシンボルに光が灯った。
 まだ、ぎこちない……でも、いつか……あたしの分身となった強化装甲服の制御AIは、あたしの動きを一瞬前に予想出来るようになり……そして、パワーとスピードだけでなく、滑かで自然な動きを兼ね備えたものとなるだろう。
 その頃には……この姉妹関係(ツーマンセル)は終り……あたしと「お姉様」の絆は、青春の短い間だけの関係から、大人同士の友情に変貌しているだろう。
 あたしは、今、この時、伝統あるこの女学院の過去から未来へと続く歴史の連鎖(くさり)の一環となったのだ。
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