第1話

文字数 730文字

「・・・何で見事にこんな処で落ちるのよ」
此処は天楼重工、主にトランプ機関関係の船が出入るする第5乾ドックの埠頭である
なにゆえ、天楼重工/装備製造・整備部/部長である私こと皆石組菜がコンナところに居るかと言うと・・・

「いやぁ、一寸風にあおられましてね?重ーい戦車を吊り下げてたってのもあって。つい」
軽薄に、そして少しの申し訳なさを含む声で話しかける機械頭ーサブロウターの「自己所有」するティルトローター機『コウノトリ』が、第5乾ドッグの沖合100mで墜落したからである。

「…で、私にソレを引き上げてほしい。と」
「そーですそーです!何より修理予定の戦車には、私特製のマル秘弾頭が詰んでありまして!」
何でそんなものを「自家用機」で運ぶのか…呆れながら私は準備にかかる。とはいえ、集中するだけなんだけど。

「解ったわよ。引き上げ先は第5乾ドックでいいわね。やるから暫く離れて」
…昔起こした事故から、私は近くに人が居るときに能力をで物を持ち上げられない。
特に、この機械頭の近くでは。

「あるぇー?まだ、気にしてるんですかぁ?」
人の気を知ってか知らずか、一番の被害者があっけらかんと聞いてくる。
勿論だ、今でこそ被害者の一人一人から「義手/義足の生活にも慣れました。部長も気にしないで下さい」と報告が有ったが、それでも私の心に後悔は残っている。

「気にしてなかったら、『離れて』なんて言ってないわよ。わかったら『離れて』」
語気が、荒くなる。思い出したくない物を、思い出す。
ふいに、頭を撫でられる
「解りましたよ。でも、僕はもう気にしてない事は覚えておいてください。」

返答は出来なかった。頭に残る冷たい感触が、皆石の心に深く沈み込んだ。
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