存在は軽くて

文字数 833文字

孤独とは何だ?孤独を扱った作品は数多ある。オレもいくつか読んできたはずだ。でもありふれすぎていてあえて問うことはなかった。オレが自分の存在を疑わないように、孤独の存在を疑ったことがない。孤独はオレの人生に常につきまとってきた。では結局お前は何だ?お前は何故にオレにつきまとうのか?

今ならなんとなく分かる。孤独とは存在の軽さだ。存在の実感の薄さ。薄っぺらさ。存在の危機。そいつらを全部まとめて孤独と呼べばいい。オレたちは理解している。他者から観測されないものは、存在していないのと同じ。オレたちはそう理解してしまっている。最悪だ。くそったれだ。なぜだ?我思う故に我あり。デカルトが便利な思想を作ってくれた。なぜそれでは駄目なんだ?なぜそれで自分の存在を認められない?どうして他者からの観測を必要とする?

かく言うオレもずっと孤独の中にいる。ずっと孤独を感じている。部屋の中にいても、街を歩いていても、カフェにいても、どこでもオレは孤独を感じる。でも孤独を感じない場所がある。河の側だ。山の中だ。浜辺だ。田んぼの脇だ。そこではオレは孤独を感じない。そこでなら、オレは自分の存在を疑わない。風を感じて、水の流れを聞いて、葉のそよぐ音を聞いて、虫の音を聞く。それがオレだ。それが確固たるオレの存在証明になる。

街中で知り合いがオレを無視すると、オレは自分の存在を疑い始める。脆弱だ。職場で一人でご飯を食べていると、オレは自分の存在を疑い始める。脆弱だ。カフェの中でみんなが楽しそうに話しているの見ると、オレは自分の存在を疑い始める。脆弱だ。

脆弱だ。脆弱だ。脆弱だ。
どうしょうもなく脆弱なんだ。
でも、逆に考えろ。
孤独なんてのは所詮はその程度のもんだ。
大層なもんじゃない。
結局のところオレたちは存在している。
薄っぺらい存在かもしれない。
他者から認めてもらえないかもしれない。
でもオレたちは存在している。
消えてしまいたいと思っていたとしても。
オレたちは存在している。
それだけだ。

終わり

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