許さない
文字数 3,973文字
「ねえ、裕太、私のこと好き?」
「もちろん、大好きだよ」
「じゃあ、愛してる?」
「愛してるよ」
「ふふふ」
「優香、どうしたんだい?」
「……うんん、なんでもない」
授業が終わり、放課後になった。俺はいつものごとく優香の居る教室へ向かおうとした。
「おう!裕太、今日も彼女とデートか?」
親友の和彦が声を掛けてきた。
「和彦か。まぁな」
「はぁ~、裕太の惚気話はきっついからな~」
心底いやそうな顔をする和彦。
「おい、どういう意味だよ和彦」
「いや、何、お前らの愛の重さがそのまま伝わってくるだけだから気にするな」
どことなく諦めたような顔をしてため息をつきながら言った。
「…なんか釈然としないが…まぁいいか」
「そうそう、何事も前向きに捉えないとな!」
その言葉に俺はムッとした。
「…なんか腹立つ」
というと、苦笑いしながら言ってきた。
「腹立つのはこっちだっつーの。あーあ、俺にも彼女出来ねぇかな?」
「作りゃいいだろ?」
和彦はなんか遠い目をしながら言った。
「そりゃできるならそうしたいけどさぁ…まぁ、俺はフラれたばっかりだしまだ良いかな?」
「何?お前フラれたの?」
「ムカ。お前、何時の日か誰かに刺されちまえ!」
「何だよそれ」
「なんでもねぇよ。あーはいはい。ごちそうさま。彼女持ちはあっち行った。せいぜい幸せになりやがれこの野郎!」
「言われなくてもそうするよ!」
こうして、いつものどおり、俺は優香の元へ向かった。
「またなの?」
「そうだよ、ごめんね?おじさん、悪い人なんだ」
そう言って、おじさんは毎日私を抱く。私は何も感じない。どこかが壊れているんだろう。
「たっぷり気持ちよくなって良いんだからね?」
「…………」
「ほら?ありがとうはどうした?いいなさい?」
「…ありがとう」
「ありがとうございますだろ?」
「……ありがとうございます」
そう言うと、おじさんは満足げな顔をして、獣のように私を貪り食った。
「ごめん!掃除当番だったから遅くなっちゃった!待たせた?」
「いや、大丈夫だよ」
俺は優香のクラスへたどり着くとちょうどよく出てきた。
「それじゃ、行こっか?」
「ああ」
俺は幸せを噛み締めながら、歩く。
「今日はどこに寄る?」
「ん~、裕太が決めて?」
「そう言われると結構困るんだよな」
俺はポリポリと頬を掻きながら、二人並んで歩く。そして、自然と絡まる手。所謂恋人繋ぎだ。
「私は裕太の居る所ならどこでもいいよ?」
優香は晴れやかに笑う。
「ん、わかった……じゃあ、そうだな……今日は公園に行って静かに過ごそうか?」
「ん、了解……ふふふ」
「優香?どうしたの?」
「うんん、幸せだなって思って」
彼女は顔を赤く染めている。
「そっか……実は俺もだ」
顔から火を吹くのではないかと思うくらい、熱くなるのを感じる。
しばらく歩き、公園へ到着する。いつものベンチに座る。眼の前では子どもたちが無邪気に遊んでる。
「なんか良いね。こういうの」
「そうだね」
「……」
優香がこちらをじっと見ている。
「ど、どうしたの?」
「うんん、かわいいなと思って」
俺の顔は更に赤くなったことだろう。
「そ、そうかな?」
「私はその顔、好きよ?」
「そ、そっか。あ、ありがとう」
一体俺の顔はどうなっているのだろうか。
「……」
「……」
二人は無言のまま、ベンチに座り、子どもたちを眺めている。時が経ち、日が暮れてゆく。最後の子供も居なくなったところで、俺達は立ち上がる。
「な、名残惜しいけど、また、明日な」
「うん。また明日」
優香が帰るのを見届ける。途中何度も振り返って手を振ってくれる。そして、見えなくなり、少しの寂しさが湧き上がってくる
「……また明日会えるじゃないか」
俺はそう独り言を言うと、反対の方向へ帰ってゆく。
「優香ちゃん、まだ中学生でしょ?」
「かわいそうに、お母さんもまだ若かったのに」
「癌が見つかった頃にはもう手遅れだったらしいわよ」
雑音が聞こえる。この場に居るのは母親と親交のあった方。母方の親類のみ。父親と父親の親類はここには居ない。
「優香ちゃん。これからのことをお話しましょ?」
「…………」
「こんなところにいないで、さあ、こっちへおいで?」
私は呆然としながら、その人の後をついていく。
「で、これからどうする?」
「うちはまだ息子と娘が大学卒業してないから無理よ?」
「うちは子供が生まれたばっかで、どうしようもない」
「私達は引き取れるけど…いつ死ぬかわからない歳だからね。それにお金もないし、優香ちゃんにかえって負担になると思うの。田舎だし、お友達とも別れることになるし…あなたのところは?」
「ウチが一番現実的か…ここから近いしな。学校も変えずに済むだろう。幸い、今年度でうちの息子は大学卒業だからな」
「それじゃあ、豊おじさんのところでいいかな?」
「…………」
「優香ちゃん、いいかな?」
「…………」
全員が困り果てている。
「まぁ、今はまだショックが抜けきらないでしょうから、とりあえず、おじさんの家に来なさい」
こうして、私は豊おじさんのところに引き取られることになった。
「裕太くん!」
帰り支度をしていた俺のところに珍しく優香が来た。
「おっ、お姫様のご登場だヒューヒュー」
「おい、やめろ。ガキかよ」
「何だと!」
「はいはい、裕太も、和彦くんも喧嘩しない」
「は~い、優香ちゃん」
和彦のやつは鼻を伸ばしている。何時かなかしたる。
「優香、こんな奴に構ってないで行こうぜ」
そう言うと和彦はヒデェとか言っている。
「こんなやつは酷いんじゃないかな?」
「優香もこいつの味方なのか?」
「裕太くんの味方に決まってるじゃない」
そう言うと優香はうつむいて顔をほんのり赤く染めている。
「だから、惚気はよそでやってくれ。こっちは腹いっぱいだっつーの!」
そう言われて、俺は気づく。ここが教室だということに。見事に教室に残ったみんなからニヤニヤとした野次馬心満載の目線を貰った。
「ゆ、優香、行こうか」
「あっ、ちょっとまって」
おれはまるで競歩でもやるかのように脱兎の如く逃げ出した。
「もう、そんなに逃げなくても良いんじゃないの?」
「……だって、恥ずかしかったから」
「私と付き合うと恥ずかしいの?」
からかっているのかと思い顔を見る。が、彼女はキョトンとした顔で小首をかしげる。
「(か、可愛い)」
「え?何?」
「い、いや、なんでもない。恥ずかしくなんて無いさ。だけど、さらし者になるのは嫌だし……優香を見て良いのは俺だけだ」
そう言うと優香は笑い始めた。
「なにそれ~、裕太、大胆な告白?」
そう言われ俺は頭の中が真っ白になる。
「い、いや、そういうわけじゃなくてだな」
「クスクス、大丈夫、わかってるから」
優香の優しい笑顔に戻った。そこで俺もほっとした。
「じゃあ、今日はどうする?」
「ん~、任せる」
「……わかった。じゃあ、また公園に行こうぜ。俺、あそこの雰囲気好きなんだ」
「いいよ。そうしよ!」
二人は並んで歩く。自然と手は絡み合う。そして、公園で日が暮れるまで過ごす。
「ねえ、裕太、私のこと好き?」
優香が唐突に聞いてくる。
「もちろん、大好きだよ」
「じゃあ、愛してる?」
「愛してるよ」
しばらく無言が続いた。そして、急に優香が笑った。
「ふふふ」
「優香、どうしたんだい?」
一瞬顔が陰ったような気がした。
「……うんん、なんでもない」
俺はその答えに不安を覚えると同時に、背筋がゾクリとした。
「え?何?嘘、ねぇ、お父さん!お父さん!嘘でしょ、ちょっとやめて!やめてよ!誰か、助け」
助けてと叫ぼうとした瞬間に殴られた。何度も何度も。
「うるせぇ!お前は黙ってろ!お前は!黙って!俺の言うことを!聞けば良いんだよ!おら!おら!」
ベッドに押し倒された私は、恐怖以外の何物も感じない。抵抗はしているが次第に服がはだけていく。
「いや!やめて!どうして!なんでこんな酷いことするの!きゃっ」
父親の目はギラついている。今から人を殺すんじゃないかというような物騒な雰囲気だ。
「だから!うるせぇって!言ってんだろ!」
再度殴ってくる。そして、服が破れ、絹のような肢体が顕になる。私は身体を隠すように手で覆う。が、父親に組み伏せられてしまう。
「いや!いやだってば!お願い!やめて!」
「うるせぇ!いい加減だまりやがれ!」
抑えて縦を一旦離して、今度は腹を殴られた。苦しくて呼吸が出来ない。
「ヘッ、ヘヘッ、お前は母ちゃんに似てるからな。たっぷり可愛がってやるからな!」
そう言われた瞬間身体の一部に痛みが走り、私は気を失った。
「ねえ、裕太、私のこと好き?」
「もちろん、大好きだよ」
「じゃあ、愛してる?」
「愛してるよ」
「ふふふ」
「優香、どうしたんだい?」
「……うんん、なんでもない」
そう、なんでもない。ただの日常。私はすでに壊れてる。家に帰れば、また義父に犯されるのだろう。私は許さない。男という存在のすべてを。だから、ことごとく男を壊すことにした。
「なんでもないんだけど……なんだか楽しいね?」
「……あ、ああ。そうだね」
偽りの仮面を被って。
「もちろん、大好きだよ」
「じゃあ、愛してる?」
「愛してるよ」
「ふふふ」
「優香、どうしたんだい?」
「……うんん、なんでもない」
授業が終わり、放課後になった。俺はいつものごとく優香の居る教室へ向かおうとした。
「おう!裕太、今日も彼女とデートか?」
親友の和彦が声を掛けてきた。
「和彦か。まぁな」
「はぁ~、裕太の惚気話はきっついからな~」
心底いやそうな顔をする和彦。
「おい、どういう意味だよ和彦」
「いや、何、お前らの愛の重さがそのまま伝わってくるだけだから気にするな」
どことなく諦めたような顔をしてため息をつきながら言った。
「…なんか釈然としないが…まぁいいか」
「そうそう、何事も前向きに捉えないとな!」
その言葉に俺はムッとした。
「…なんか腹立つ」
というと、苦笑いしながら言ってきた。
「腹立つのはこっちだっつーの。あーあ、俺にも彼女出来ねぇかな?」
「作りゃいいだろ?」
和彦はなんか遠い目をしながら言った。
「そりゃできるならそうしたいけどさぁ…まぁ、俺はフラれたばっかりだしまだ良いかな?」
「何?お前フラれたの?」
「ムカ。お前、何時の日か誰かに刺されちまえ!」
「何だよそれ」
「なんでもねぇよ。あーはいはい。ごちそうさま。彼女持ちはあっち行った。せいぜい幸せになりやがれこの野郎!」
「言われなくてもそうするよ!」
こうして、いつものどおり、俺は優香の元へ向かった。
「またなの?」
「そうだよ、ごめんね?おじさん、悪い人なんだ」
そう言って、おじさんは毎日私を抱く。私は何も感じない。どこかが壊れているんだろう。
「たっぷり気持ちよくなって良いんだからね?」
「…………」
「ほら?ありがとうはどうした?いいなさい?」
「…ありがとう」
「ありがとうございますだろ?」
「……ありがとうございます」
そう言うと、おじさんは満足げな顔をして、獣のように私を貪り食った。
「ごめん!掃除当番だったから遅くなっちゃった!待たせた?」
「いや、大丈夫だよ」
俺は優香のクラスへたどり着くとちょうどよく出てきた。
「それじゃ、行こっか?」
「ああ」
俺は幸せを噛み締めながら、歩く。
「今日はどこに寄る?」
「ん~、裕太が決めて?」
「そう言われると結構困るんだよな」
俺はポリポリと頬を掻きながら、二人並んで歩く。そして、自然と絡まる手。所謂恋人繋ぎだ。
「私は裕太の居る所ならどこでもいいよ?」
優香は晴れやかに笑う。
「ん、わかった……じゃあ、そうだな……今日は公園に行って静かに過ごそうか?」
「ん、了解……ふふふ」
「優香?どうしたの?」
「うんん、幸せだなって思って」
彼女は顔を赤く染めている。
「そっか……実は俺もだ」
顔から火を吹くのではないかと思うくらい、熱くなるのを感じる。
しばらく歩き、公園へ到着する。いつものベンチに座る。眼の前では子どもたちが無邪気に遊んでる。
「なんか良いね。こういうの」
「そうだね」
「……」
優香がこちらをじっと見ている。
「ど、どうしたの?」
「うんん、かわいいなと思って」
俺の顔は更に赤くなったことだろう。
「そ、そうかな?」
「私はその顔、好きよ?」
「そ、そっか。あ、ありがとう」
一体俺の顔はどうなっているのだろうか。
「……」
「……」
二人は無言のまま、ベンチに座り、子どもたちを眺めている。時が経ち、日が暮れてゆく。最後の子供も居なくなったところで、俺達は立ち上がる。
「な、名残惜しいけど、また、明日な」
「うん。また明日」
優香が帰るのを見届ける。途中何度も振り返って手を振ってくれる。そして、見えなくなり、少しの寂しさが湧き上がってくる
「……また明日会えるじゃないか」
俺はそう独り言を言うと、反対の方向へ帰ってゆく。
「優香ちゃん、まだ中学生でしょ?」
「かわいそうに、お母さんもまだ若かったのに」
「癌が見つかった頃にはもう手遅れだったらしいわよ」
雑音が聞こえる。この場に居るのは母親と親交のあった方。母方の親類のみ。父親と父親の親類はここには居ない。
「優香ちゃん。これからのことをお話しましょ?」
「…………」
「こんなところにいないで、さあ、こっちへおいで?」
私は呆然としながら、その人の後をついていく。
「で、これからどうする?」
「うちはまだ息子と娘が大学卒業してないから無理よ?」
「うちは子供が生まれたばっかで、どうしようもない」
「私達は引き取れるけど…いつ死ぬかわからない歳だからね。それにお金もないし、優香ちゃんにかえって負担になると思うの。田舎だし、お友達とも別れることになるし…あなたのところは?」
「ウチが一番現実的か…ここから近いしな。学校も変えずに済むだろう。幸い、今年度でうちの息子は大学卒業だからな」
「それじゃあ、豊おじさんのところでいいかな?」
「…………」
「優香ちゃん、いいかな?」
「…………」
全員が困り果てている。
「まぁ、今はまだショックが抜けきらないでしょうから、とりあえず、おじさんの家に来なさい」
こうして、私は豊おじさんのところに引き取られることになった。
「裕太くん!」
帰り支度をしていた俺のところに珍しく優香が来た。
「おっ、お姫様のご登場だヒューヒュー」
「おい、やめろ。ガキかよ」
「何だと!」
「はいはい、裕太も、和彦くんも喧嘩しない」
「は~い、優香ちゃん」
和彦のやつは鼻を伸ばしている。何時かなかしたる。
「優香、こんな奴に構ってないで行こうぜ」
そう言うと和彦はヒデェとか言っている。
「こんなやつは酷いんじゃないかな?」
「優香もこいつの味方なのか?」
「裕太くんの味方に決まってるじゃない」
そう言うと優香はうつむいて顔をほんのり赤く染めている。
「だから、惚気はよそでやってくれ。こっちは腹いっぱいだっつーの!」
そう言われて、俺は気づく。ここが教室だということに。見事に教室に残ったみんなからニヤニヤとした野次馬心満載の目線を貰った。
「ゆ、優香、行こうか」
「あっ、ちょっとまって」
おれはまるで競歩でもやるかのように脱兎の如く逃げ出した。
「もう、そんなに逃げなくても良いんじゃないの?」
「……だって、恥ずかしかったから」
「私と付き合うと恥ずかしいの?」
からかっているのかと思い顔を見る。が、彼女はキョトンとした顔で小首をかしげる。
「(か、可愛い)」
「え?何?」
「い、いや、なんでもない。恥ずかしくなんて無いさ。だけど、さらし者になるのは嫌だし……優香を見て良いのは俺だけだ」
そう言うと優香は笑い始めた。
「なにそれ~、裕太、大胆な告白?」
そう言われ俺は頭の中が真っ白になる。
「い、いや、そういうわけじゃなくてだな」
「クスクス、大丈夫、わかってるから」
優香の優しい笑顔に戻った。そこで俺もほっとした。
「じゃあ、今日はどうする?」
「ん~、任せる」
「……わかった。じゃあ、また公園に行こうぜ。俺、あそこの雰囲気好きなんだ」
「いいよ。そうしよ!」
二人は並んで歩く。自然と手は絡み合う。そして、公園で日が暮れるまで過ごす。
「ねえ、裕太、私のこと好き?」
優香が唐突に聞いてくる。
「もちろん、大好きだよ」
「じゃあ、愛してる?」
「愛してるよ」
しばらく無言が続いた。そして、急に優香が笑った。
「ふふふ」
「優香、どうしたんだい?」
一瞬顔が陰ったような気がした。
「……うんん、なんでもない」
俺はその答えに不安を覚えると同時に、背筋がゾクリとした。
「え?何?嘘、ねぇ、お父さん!お父さん!嘘でしょ、ちょっとやめて!やめてよ!誰か、助け」
助けてと叫ぼうとした瞬間に殴られた。何度も何度も。
「うるせぇ!お前は黙ってろ!お前は!黙って!俺の言うことを!聞けば良いんだよ!おら!おら!」
ベッドに押し倒された私は、恐怖以外の何物も感じない。抵抗はしているが次第に服がはだけていく。
「いや!やめて!どうして!なんでこんな酷いことするの!きゃっ」
父親の目はギラついている。今から人を殺すんじゃないかというような物騒な雰囲気だ。
「だから!うるせぇって!言ってんだろ!」
再度殴ってくる。そして、服が破れ、絹のような肢体が顕になる。私は身体を隠すように手で覆う。が、父親に組み伏せられてしまう。
「いや!いやだってば!お願い!やめて!」
「うるせぇ!いい加減だまりやがれ!」
抑えて縦を一旦離して、今度は腹を殴られた。苦しくて呼吸が出来ない。
「ヘッ、ヘヘッ、お前は母ちゃんに似てるからな。たっぷり可愛がってやるからな!」
そう言われた瞬間身体の一部に痛みが走り、私は気を失った。
「ねえ、裕太、私のこと好き?」
「もちろん、大好きだよ」
「じゃあ、愛してる?」
「愛してるよ」
「ふふふ」
「優香、どうしたんだい?」
「……うんん、なんでもない」
そう、なんでもない。ただの日常。私はすでに壊れてる。家に帰れば、また義父に犯されるのだろう。私は許さない。男という存在のすべてを。だから、ことごとく男を壊すことにした。
「なんでもないんだけど……なんだか楽しいね?」
「……あ、ああ。そうだね」
偽りの仮面を被って。