『一匹の子羊』

文字数 1,200文字

私は愛を探し続ける迷子の子羊だった。
両親に愛を求め、友達に愛を求め、恋人に愛を求め、満たされない部分を物で満たし、満たされたと思ってはまた欠けていく。
欠けを埋めるために、また探す。
そんなことを35年間ずっと繰り返していたが、私の求める『愛』と一致するものはどこにも見出せなかった。

そんな私も結婚し、こどもを授かった。
様々な意見があったが、このタイミングを選んで宿ったという確信が何故かあった。
幸せを噛み締める間もなく、様々な事が重なり、妊娠初期に一人で育てる決意をせざるを得なくなった。心の状況は一変した。孤独、不安、哀しみ、怒りを日々抱え、そんな状況に反して育っていく、こどもを守らないといけないプレッシャーに押し潰された。

私は自立心を積極的に育む家庭で育った。
それも影響し、人に頼る事が得意ではなく、自分の力で乗り越える事が自分の評価や自信に繋がっていた。

出産後も変わらずに自分の力で走り続けていた中、心身ともに限界を迎え、全く動けなくなった。思い返せば、そこまでしないと神様に頼れないことを悟られていたのだと理解できる。

ある日、神様は無力になった私の元に一人の友人を遣わして下さった。
約十年前から、彼女は神様の愛について伝え続けてくれていたが、聞き流していた。それを理解するまでには自分との葛藤が沢山あった。

そんなある日、心を開かない頑固な私が、雷に打たれるような体験をした。誰かが私に触れているような感覚と共に、今までの自分の在り方を悔やむ気持ちが溢れ、そんな私を待ち続けてくれていた愛に触れ、涙が止まらなくなった。

ようやく私は、探し続けていた「どんな時も変わらずに在る愛」に出逢った。何からも得ることができなかった安心感を得た。

自分は無価値だと思っていた私に、無条件に愛を与えてくれる人の事を知りたいと願った。
夢中になってその人の言葉を読んだ。
心の奥底を覗かれているようにドキッとする時、素直に受け止めれない時もある。
でも、それさえも理解した上で寄り添ってくれる深い愛をいつも感じている。
その度に、私もその人を愛したいと強く願った。

『言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。ヨハネによる福音書‬ ‭1‬:1』

言葉は神である。
神は私たちを照らす誠の光。

その言葉一つ一つによって私の心は日々洗い清められ、創り変えられている。

神様は共にいてくださり、協働してくださる。
その体験を重ねるごとに信頼関係を築き、私は、羊飼いの元に辿り着いた羊飼いの声を聞き分ける子羊となれた。

心が平安に満たされ、愛で満ちると、自ずと惜しみなく大切な人へと分け与えたくなる。
恐れる事なく分け与えられるのは、与えられる愛が尽きる事も枯れることもない確信があるからだろう。

私は生きている現在に安住の地を得た。
これ以上の恵みはない。

どの時代に置いても変わることのない神様の愛と言葉を、私も伝えていく人となりたいと思う。
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