第1話

文字数 640文字

久しぶりに友人に誘われて映画館へとやってきた。最近映画には疎くてどのような作品をやっているのかわからないが、なにやらとても感動するドキュメンタリー映画があると言われてやって来たのだが……

「なんだよ、この映画?」
「何ってタイトル通りだよ」
「タイトルってこの『大食いチャンピオン藤谷寛二楼誕生の裏側』ってやつか?」
「そうだよ、めっちゃ泣けるらしいぞ」

大食いのドキュメンタリー映像で泣けるのだろうか、と友人のセンスを疑ってしまう。退屈過ぎて途中で寝てしまわないか心配だ。

そんなことを思いながら映画を見始めたのだが、俺の予想は外れた。寝るどころか思わず見入ってしまい、あっという間に映画は終わってしまった。藤谷寛二楼がこの大食いコンテストにかける思いや大会を通して育まれたライバルたちとの熱い友情、感動作という看板に偽りなしだった。

「ほんとに泣ける映画だったとは思わなかったよ」
「見てよかっただろ?」
「ああ。でもあれだな。なんかカレーが食いたくなってきたよ」

藤谷の出ていた大食いコンテストの決勝の品物がカレーだった。藤谷をはじめ、参加者たちが次々にカレーを食べる姿を見ているとなんだか食欲がそそられた。最後のエンディングの映像でもカレーを食べているシーンがたくさん使われており、観ているとこちらまでカレーが食べたくなってくる。

「俺もちょうど思ってたんだよ。近所に美味しいカレー屋があるらしいし、行こうぜ」

この映画の上映期間中の映画館近隣のカレー屋の売り上げは普段の5倍ほどだったらしい……
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