詩人の一生

文字数 382文字

私のことは夢だと思ってください
まぬけな泥棒のように
よごれた手拭いを頭からかぶって
詩について考えているのです
お金を払って不便を買い
必死になって不幸の練習をする
あたまの中に
言葉が浮かんでは見失い
不安のため池
底の見えない泥の中を
やみくもに手探りで
両肘の感覚はとうになく
あぶくのように消えていく
その繰り返しなのです
あさがきて
ひるがきて
よるがきて
過去は未来が決めるのだと
頑なに信じて
いや
そのはずなのですが
まずは謝らせてください
わたしはあなたを愛しています
わたしはあなたを守りたい
真実なんてどうでもいいのです
リアルなんて必要ありません
共に手を取り合って
静かに微笑み合って
幽かな喜びを分かち合って
はるも
なつも
あきも
ふゆも
てのひらに残るのは
言葉の死骸だけなのです
その影に光を当てれば
あなたの涙が恋しいのです
私のことは夢だと思って
どうか夢だと思って諦めて
そうして生きていきましょう。
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