第1話

文字数 605文字

「なぁ、近藤?どうしてお前はモテるんだよ?」

「あ?」

「だって、何人も女いるだろ?しかも取引先の女子社員ばっか」

「知ってたのか……肩書きだな」

「何?肩書き?」


近藤はポケットから名刺入れを出して、俺の前にばら撒いた。
近藤の名刺の肩書きは様々だった。


「これは、だいたいどんな女にも効くぜ」

〝宝石の様なキミに一目惚れしました
 近藤雄介〟


「これは、眼鏡した女に効くぜ」

〝眼鏡を取ってごらん?キミの瞳に恋した俺
 近藤雄介〟



「は?何だこの肩書き!」



「これは男と遊んでそうな女に効くぜ」

〝今夜どう? 近藤雄介〟



なるほど、女によって肩書きを変えて名刺を渡して落としていたんだな!
チクショー俺もモテたい!!

「なぁ、近藤。俺にもいい肩書き作ってくれない?明日お目当ての女の子の会社に行くんだ」

「しょーがねーな!同僚の頼みだからな」



次の日、俺は近藤が作った名刺を持って彼女の会社に来ていた。

黒髪がサラサラで美しい。猫みたいな瞳が可愛い。スカートから伸びた魅惑の足につい目がいってしまう。


「あの、私、こういう者です」


名刺を彼女の前へと差し出した。

名刺を見た彼女は一瞬で固まった。

でも次の瞬間にポッと頬を染め、俺の耳元で囁いた。


「あの……今夜空いてるのでその時ならいいですよ。実は私もあなたの靴下の匂い嗅ぎたいなって思ってたんです」


「は?」
靴下?匂い?


その名刺の肩書きはこれだ。


〝今すぐ、キミのハイヒールの匂いを嗅ぎたい
 青木颯太〟


end
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