短編

文字数 701文字

流心川は激流で有名だった。
それでいて穏やかであると有名だった。
流心川を訪れた男はこう言った。
「元々全然あの川にいくつもりなんてなくてさ。ほんとは奥の森に入ってくつもりだったんだよ。けどさ気づいたら川に踏みいっててさ。自分でもよくわかんないんだよ。まぁそれはともかく川を見てみたらさ、すっごい流れなのよ。橋の上から川を見下ろしてたんだけどさ、ごうごう良いながら橋の…何て言うの?支柱、に水がぶつかってきてさ、すっごい怖かったのよ。なんかこのままこの川に引き込まれるんじゃないかってさ。ほんと、怖かったよ。」
この男の話を聞いて、川を見に行ったその人はこういった。
「実際に…彼の言う通り川に行ってみたんだけど…川は穏やかだった…。なんと言うか私を歓迎しているのかと思うくらいに…。川は笑っているような気がした…。橋の上にも乗って見たのですが…やはり心地好い音が流れるばかりで…安心したよ。」
後日、研究者が偶然この川に迷い込んだ。川を研究するつもりはなく、川の奥の森の方を研究しに踏み行った。彼女曰く
「予め決めて置いたルートを順調に進んでいてその途中に川があったんです。その時は川の流れは穏やかだったんですけど、私が調査用の器具を橋で取り出した瞬間、急に川の流れが速くなって轟音をたて始めたんです。流れだけでなく空気も変わってきて、私、怖くなってきて器具をしまったらまた元の流れに戻ったんです。最初は森に興味があって川に行ったんですが次は川の調査をしようと思います。」


しばらくしたのち彼女は行方不明になった。
人の心の触れてはならない部分を触れるのはもってのほか。
ましてや感情の起伏を調べようなんておこがましい。
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