第1話 鯉も睡る季節

文字数 142文字

 鯉が睡る。
 冷たい水の中で、

 音も無く、水底に沈む。
 鼻先にパンを投げても
 ミミズを投げても
 
 触手を動かすことはない。
 世間がクリスマスだろうと
 大晦日だろうと
 正月だろうと
 その胸鰭を動かすことはない。

 近い将来、
水中に春の陽光が差し込むと
その尾鰭をまたゆっくりと動かし始める。
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