男の子目線

文字数 1,747文字


「柚樹くん…。大好き!」

 俺には自慢の彼女がいる。

 何もかもが可愛くて最高の彼女。

 学校一と言われる春奈と付き合っている俺は幸せものだ。

 だが…。幸せは長く続かないらしい。

 *数日後*

「きゃあ!」
「ああ。ごめんね。大丈夫?」
「あ、いや全然大丈夫です。っていうか柚樹先輩じゃないですか?」

 俺の名前もいろんなところに浸透してるんだな。

「そうだよ。君の名前は?」
「ルルって言います…。」
「そっかそっか。」
「あ、そうだ!私、学校中の人とSNS交換するって目標があるんですよ〜。だから交換していただけません?」

 ちょっと変な子だな。でも面白い。別に春奈から女の子と関わったらダメとか言われてないし、そこまで束縛されてないからいいか。

「あ、いいよ。じゃあこれ俺のアカウントだから。」
「ありがとうございます!」
「じゃあね。」

 これが地獄の始まりなど…。俺は気づかなかった。

 ***

 ここから毎日、少しだけSNSで連絡が来るようになった。

 そんな多くない量だったから会話を続けてしまった。

 なんとなく嫌な予感がしてはいたのだが、俺は全然考えずに会話を続けてしまった。

 ***

「せーんぱい。」
「おお。どうしたの?」
「先輩に会いたくて来ちゃった。」
「そうなんだ。」
「会いたかったのもそうなんですけど勉強も教えて欲しくて。」
「ああ。いいよ。」
「じゃあ3階の空き教室で教えてください!」

 あらら。SNSではよくしゃべってはいるけど直接話すのは初めてかな。

 ***

 空き教室に移動したら勉強を教えることに。
 なかなか覚えが早くこっちも楽だ。

 ルルが疲れた顔をしたので休憩をすることに。

「じゃあ、休憩しよっか。」

 ルルがしれっと俺の横の席に座る。
 何してんだと思ったが、彼女は流れるようにやや前傾になって俺の手に自分の胸を当てる。

 こんな胸は触ったことないなぁ。春奈はまな…。
 まあとにかく自分が持たないからとりあえず注意しよう。

「ルル。胸が当たってるよ。」
「わざと当ててるんだよぉ…。」
「え…?」

 は?
 そして彼女は俺の顔に自分の顔を近づけてキスをしようとする。
 俺は逃げようとするけど、彼女は必死で引っ張る。

 なんでそんなにキスをしようとするんだよ。

「先輩…。一回だけでいいからさ…。」
「え…。でも…。」
「こんなとこ誰にもバレないよ…。」
「一回だけだぞ…。」

 俺は渋々了解した。
 つぶらな瞳に少し心が揺らいでしまった。

 ただ、これが俺を地獄に突き落とす。

 遠くから足音が聞こえてドアが開く音がした。

 春奈だ…。

 彼女の唇は俺の唇に触れようとしているところだった。

 まずい…。
 そう感じた時にはすでに遅かった。

「ねえ。柚樹何してるの?」
「春奈まって。違うんだ…。」
「もういいから…。失望したから。」

 最悪だ…。終わった。

 *翌日*

 俺の浮気の噂は瞬く間に広がっていった。
 いろんな人から冷たい目線を向けられ、俺は底辺に落ちた。

 そして不思議にルルの名前はでで来ない。
 それどころか、ルルなんて存在しないらしい。
 ルルは偽名だったんだろう。

 そしてその日の放課後、俺は隅っこでちっちゃくなって絶望していた。
 そこにあいつがきた。

「せーんぱい。」
「お前…。お前のせいで…。お前のせいでこんなことになってるんだぞ!」
「本当に私のせいだけかな…?」
「はあ?」
「だって、私と一回だけキスするっていう決断したのは先輩だよ…?」
「いやだってお前が離してくれないから。」
「本当にそれだけ?」
「お前のつぶらな瞳がな…。」

 確かにそうだ。俺の心は少し揺らいでいた。

「じゃあ先輩…。そんなんで私とキスしようとしたってことは、春奈先輩とはそんな程度の関係ってことだよ。」
「そんなことない…。」
「先輩は今、何もかも失った。今あるのは私だけだよ…。」
「は…?」
「先輩…。私ならもっと幸せにするよ。だからさ、私を好きになって、私とそういうことして、私ともう一度やり直そ。」
「どういう…つもりだ…。」

 俺が必死に抵抗するとキスされる。

「先輩決断して。」
「わかった…。付き合おう…。」
「やったあ。」

 俺は覚悟を決めた。
 1人ぼっちになるよりは、誰かのぬくもりが欲しかった。
 今までずっと温もりに甘えてきたから余計に。

 しかしその3ヶ月後俺は捨てられた。
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