第3話

文字数 401文字

 かぶせられた黒い袋をはずされ、フレッシュな空気を求めてあえいだのと同時、ぼくは四辺をみまわした。
 地下室なのか窓はない蛍光灯に埃っぽい石床を白くみせて電気のおよばない範囲は暗黒。
 だいぶ広い部屋らしい。空気は冷んやりと無機質な匂いがした。
 そんなことよりなにより、ぼくの胸をドキンと打ったのは、その室内に無数の人間がぶら下がっていることだった。天井の梁から下がった縄に首吊りしているというのではない。
 そもそも梁などないのだ。
 女も男も空に首をつっこんでいる。だからぶら下がっているというよりも、浮いているというべきかもしれない。そこは表現に迷うところだが、とにかく男女は空に首を投じてぼくの周囲頭上にいて、数え切れない人数だ。
 地下に空などあろうはずはない。
 しかし彼らの首から上は、その頭のかたちに皆、青空になっていた。頭部が白い雲をながす青空となり、彼らはその部屋にぶら下がって(浮いて)いた。
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