冬の朝

文字数 519文字

冬の朝日は透過するハチミツだ
とろみの中に淡い熱を抱きつつ
わずかな海を感じさせる
それは慰めかもしれない
わたしたちは受刑者だ
サビた鎖が過去を縛るように
寝起きの頭は未来を束ねる
細い線が光の中に消えていく
ご飯を催促する猫の鳴き声が遠くに聞こえて
楽しかった思い出はモツ煮込みのように混濁
 する
わたしたちはどうしても起き上がれないまま
再度ハチミツに溺れていく
明るい酸欠だ
クラクラもフラフラも同じようなもの
誰も自転の速度に文句など言わないし
誰もグラグラの大地に安定など求めない
眠ろう
もう少しだけ
わたしたちはいま貝に生まれ変わる
貝に生まれ変わってようやく本当の家族にな
 っていく
もはや部屋の輪郭はドロドロに溶け
繋いでいた手は一つになって
家族の本当のあり方に疑問を呈する
重力は心地のいいプレッシャーか
それは光のように
黒い影のように
一瞬の自由はまるで悠久のオアシスだ
猫がフワフワの尻尾を顔にこすりつけていく
それでも海は冷めない
熱は失わない
突然のビッグバンにも
わたしたちは毎朝夢を見る
毎朝起きるという夢を見る
この世界のすべては黄金色で光しかないから
崩壊する現実的平衡感覚の中
重力すらとろけるように
地球の回転に追いすがるように
また今朝もハチミツのような涎が垂れる
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