第1話

文字数 1,992文字

 著書多数、高名な旅行作家のバンコクからのlive座談会をYouTubeで視聴。外気温50度を超える灼熱地帯、スーダン、インドそれに中央アジア諸国の話題から我が地元沖縄まで話が弾み、YouTubeの中では長めの小一時間にもかかわらず、バックパッカーあがりの旅好き人間にとってたまらないコンテンツ、終始楽しく拝講できた。

 中でもスーダンの酷暑対策として「ゆっくり歩く」は、おもわず膝を叩いてしまうほど納得。私も在米中はサンフランシスコから二時間ほど東に位置する内陸部に住み、沖縄の蒸し暑さと全く異なる乾燥地帯特有の「じっとしていても身体の水分が蒸発していくのが分かる突き刺す暑さ」気温40度越えをしばしば体験。身体から水分蒸発の対策として長袖を着る、そしてやはり暑い時は外に出ずゆっくり動くのが一番と体得した。

 また座談会にていかに猛暑を乗り切るかという沖縄の暑さ対策には、「外を歩かない」、「わずかな距離でも車を使う」、「でもなぜかよく走っている」という沖縄の人間にとって耳の痛い話の数々、中でも「すぐ近くのコンビニへも車を使う」に及び、ふと考えさせられた。

 確かに、地元の人間である私の目から見ても、沖縄の人の車への依存度は異常なほど高い。

 外の蒸し暑さからできるだけ汗をかかず快適な環境を維持したい、ちょっとの距離だけど車あるから乗って行こうと、日頃から気軽に使える車が手元にあり、時間節約にためらいなく使ってしまう。これがほんの一握りの人たちだけの日常ではなく大多数の行動様式となると、これは他府県の人でなくても奇妙に感じるに違いない。

 さらに、常に車を使うことによって引き起こされる平日の慢性的な通退勤時の渋滞、広大な駐車場確保のためより郊外へと展開するショッピングセンターへの土日祝日の更なる交通渋滞。平日土日祝日と一年中休みなしに移動する先々で渋滞が派生、一体全体こんな狭い島にどれだけ車が増えればいいんだ、と意義を唱える声も勿論あれど改善には程遠い。
 これは単に道幅を広くすれば良いという問題ではなく、人と車との関わり方を考え直さねばならない節目に来ているのではないか、ほんの数十メートル先のコンビニに行くため歩かず車を使っていいのか、車への依存度が増々高まる中で沖縄の人々はどう考えているのか、気になって仕方ない。

 かくいう私も軽自動車を保有しているがほとんど乗らず通勤の足はもっぱらバイク、それも渋滞回避のため意図的に未明の5時半出、4時帰りとなりほぼ渋滞に巻き込まれずストレスなく帰宅することができる。たまに時間をずらし朝6時、6時半にしようもんなら、既に渋滞は始まり普段の倍近く時間がかかるのもしばしば。

 三十年近く故郷を離れていた人間からすれば、空港ビル、都市モノレールなどの沖縄の交通インフラ、我々が日常的に利用する道路整備は特に目を見張るものがあり、山を削りトンネル貫通、新たなバイパスを何本も開通させ昔に比べとても便利になったもんだとつくづく感心させられた。それでも年々増え続ける車の数やレンタカーを利用する観光客の増加が拍車をかけ、道路整備が追い着けずますます本島内とくに南・中部地域の渋滞はひどくなる一方。

 さらにグーグルマップは今や当たり前、そこまでする必要はないと思うのに、渋滞する道路を避け時間短縮の為より近道となる脇道を選ぶ傾向が顕著となり、車一台通るのがやっとの小道でさえ歩行者の通行にも支障をきたしながら渋滞が恒常的に発生。
 まさに負の連鎖、個々の合理的な判断は、社会における合理的な判断とはならず、逆に個々の損失につながる好例。
 沖縄の人々は南国特有のんびりしているなどと思われるかもしれないが、地元かつ県外海外にも住んでいた私のような人間からすれば、いやいや沖縄の人々こそせっかちに映る。

 都市モノレール駅から離れた職場が多く、またより郊外へとショッピングセンターが展開する沖縄において、人々はせっかく持っている手軽な移動手段である車を最大限に活用すべく、たとえ近距離であろうと、渋滞に巻き込まれても、燃料費がかさんでも、タイヤがすり減ろうと、事故のリスクが高まろうとも、仕事を維持するため、日々の生活のため意に介すことなく使い続ける。
 今日も冷房の効いた快適な車内、ラジオから流れる音楽やトークに心を和ませながら、一向に進まない渋滞に大きくため息をつくというのが沖縄の現状であろう。

 座談会で改めて指摘される沖縄の人間にとっては耳の痛い話だけど、車を使い続けることで渋滞を発生させる根本的原因も当のドライバー自身が十分理解しており、渋滞により貴重な自分の時間を失うことも、依存し過ぎて不健康になることも分かった上で、それでもあえて車を使わないと生活が維持できない沖縄の現実を如実に反映、考えれば考えるほど何かしらやるせなさを感じる。
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