一口馬主に俺はなる!

文字数 869文字

正月休みも終わり、世間では仕事初めという空気感の中、観光施設で働く私はこれからようやく休みがとれる。世間とは逆の動きだ。
 久々の休み、妻と娘と3人でドライブがてら初詣に行く。目的地は徳島の薬王寺。妻が厄年の時に参ってから毎年行くようになった。車で片道約2時間の距離。ドライブが好きな私にとってはちょうどいい所要時間だ。ただ3歳の娘にとっては2時間も車の中にいるのはさすがに退屈なようで、しまじろうとアンパンマンのDVDは車の中に常備しておく。困った時はアンパンマン、神だ。
 いつも参る薬王寺は正月も過ぎているのでこの日も人はまばら。その上風も強くかなり寒い。3人で手を繋いで前屈みで歩く。
 本堂へ行くには結構急な階段を上っていく。厄年の人はその階段1段ずつに1円玉を置いて上っていく。詳しい事は分からないが、厄を除けるためにそうするらしい。この年は妻も私も厄年ではないので普通に階段を上っていく。
「これぜんぶのぼれるよ!スゴい?」
階段の一番下で娘が聞く。
「えー!それはスゴいぞ!お父さんよりスゴいぞ!」
大袈裟に言う。まあ途中で妻に抱っこしてと言うだろうなぁと思いつつ上っていく。ところが階段を上り始めると黙々と上っていく。そして一言も喋らず百段近くある階段を上り切る。
「えっ、ホンマにスゴいやん··」
びっくりし過ぎてあまり褒めてあげられない。この子にこんな集中力があったとは。我が子の成長を感じる。
本堂でお賽銭を入れて手を合わせる
(家族みんなが健康でありますように。出資馬達が怪我しませんように)
 薬王寺を参拝した後は徳島市街へ向け1時間かけてドライブ。ショッピングモールで買い物した後は鳴門競艇場の横にあるスーパー銭湯「あらたえの湯」でお風呂に入り晩ご飯を食べて帰るのが定番コース。この日もお風呂に入って、館内のソファで妻と娘が出てくるのを待つ。ヒマつぶしにSNSを開く。タイムラインの上に表示されるフォロー中の人達のストーリーを何気なく見る。すると競走馬の画像を背景にこんなコメントが
「今年こそサンデーレーシングで一口馬主になるぞ!」
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