第31話 復讐②

文字数 961文字

『048−765−××××』 

 恐らくこのホテルの電話番号だろう、セキュリティもクソも無いなと思ったが、コチラにとってはありがたい。武志はそれをコピーするとパスワードを入力する場所にペーストした。

 入室してから五分、このホテルのカメラ管理画面にたどり着くと、過去の映像データをクリックする、パソコンには八分割になった八つのガレージの映像が映し出されている。まずは三日前の事故があった時間まで遡る、思いの外クリアに映し出された画面に満足した、車が停まっているガレージは四つ、後は空いている、時間をさらに遡る。

 すると二番と表示されたガレージに、バックでワンボックスの車が入ってきた、巻き戻しているので実際には出ていった映像だろう。武志はその映像をクリックした、八分割されていた画面は二番の映像だけになり画面いっぱいに引き伸ばされた、そのまま逆回しを続ける、運転席から男が出てきて後ろのスライドドアに手をかけている、扉が開くと男がもう一人出てきて女性を担いでホテルの階段に後ろ歩きで消えていった。

 担がれていたのは姉の絵梨香で間違いないだろう、分かってはいたが――。武志は拳を強く握りしめる、さらに巻き戻しを続けると先程の二人とは違う、ガッチリとした体型の男が歩いてガレージに入ってきた、そのまま階段横に消えていく。

「糞どもが、三人いたってことか」

 武志は拳を握りしめて思い切りテーブルを叩くと、更に巻き戻していく、結局入室するまで他に動きはなかった。
 改めて、ホテルに車が入ってきたところから再生する、三人の男は顔を晒しているがもちろん誰か分からない。しかしコイツラが姉を無理やり攫って強姦し、路上に捨てた。意識が朦朧としていた彼女はフラリと国道に飛び出してしまいトラックに轢かれた。

 偶然とは思えなかった――。

『白石という男から、八百長の片棒を担げと提案があった』

 電話で確かに佐藤はそう言っていた、断ったことに対する報復、少し調べれば佐藤と姉が親密な関係であることは調べがつくだろう。

 奴らは白石という男の部下なのだろうか――。

「なんでもいい、皆殺しだ」

 武志は先日、佐藤から預かった白石の名刺を取り出して握りつぶした、まずはコイツから情報を聞き出すしかない、思いついた方法は短絡的で危険を伴うが、武志に迷いはなかった。
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