第4話

文字数 7,646文字

「川を見に行こう」
 ミスタ・クラークは厚手の黒いコートを引っ掛けると、杖をついてドアを開けた。リビングの大きなツリーはもう片づけられていた。彼ひとりではたいへんだったろうに……。
「外には雪が。話ならここでも」
「いや、たまには外も歩かないとな」
 曇天だった。見上げると鉛色の雲が低く、重くハドソン川を覆っていた。
 雪は風景の輪郭をシンプルにする。複雑な木々の枝も、人間が作った建造物の形も、すべてを白くて丸みを帯びたひと続きのかたまりに変えてしまう。
 高台まで無言で歩いた。足もとで新雪を踏む音がして、はるか頭上ではタッパンジーを渡る風が海鳴りのように響いていた。
 僕は、彼が話すことがわかるような気がした。まず彼はすまなかったというだろう。僕はそんなことありません、と返す。どこへ行ったんでしょうね。そうだなあ。きっとそんな会話になる。それから僕らは黙り込んで川を眺め続けるだろう。実際に彼の顔を見たら責める気になどなれなかった。
 しばらく無言が続いたら質してみようか。三本のロープのこと。あれはあなたの家族なんでしょう。そんなバカなと彼は笑うだろうか。
 あのときは異様な光景に息を呑んだものの、不思議なことに恐怖は長く続かなかった。翌朝には錯覚だったのだとしか思えなくなっていた。ハンナの行動の方がはげしく僕をゆさぶった。
 当然だ。あんなこと実際にあるわけがない。それにもし、ミスタ・クラークのような人物までが底なしの闇みたいな過去をもっているとしたら、僕は世の中をどう考えたらいいのかわからなくなってしまう……。
 高台に着くと僕たちは、小さなベンチの雪を払い、腰を下ろして、雪化粧をした大河を眺めた。虹の橋がこの日は巨大な蛇のようだった。風が冷たい。
「ほんとうに美しいのは、冬だな」
 その通りだと僕は思った。弱った彼の目にもこの風景は見えているのだろう。
「ハンナのことは、すまなかった」
「そんなこと。彼女の人生ですよ」
「……そうだな」
「どこへ行ってしまったんでしょうね」
「彼女は次のメイドを見つけておいてくれたよ。おとといから来て、パワフルに家事をこなしてくれている」
「さすがハンナですね。よく気がつく」
 寒空に一羽、カモメが舞っていた。上空の風に逆らって懸命に進もうとしている。
「ひとつだけ伝えておきたかったんだ。ハンナがいなくなったので、もういいかとも思ったのだが、また同じようなことがあるかも知れない。余計なことかもしれないが、ちょっとした忠告だ。老人から、君への」
「なんです」
 ひと呼吸おいて、
「ハンナは、君には合わない女性だった」
「えっ」
 意外だった。彼は僕たちの仲を望んでいるとばかり思っていたのに。
「たしかに私は、ハンナに『結婚相手にヒロはどうだ』といったことがある。しかしあれは、君にその気がないことがわかっていたからいえたジョークだ」
「……どうして、ですか」
 風がひゅうと吹いた。僕の声は、少し不機嫌に響いたかもしれない。
「彼女はクールに見えるが、情熱的だ。ヒロにはわかるだろう」
 僕は黙っていた。
「それに、彼女はなんというか、複雑なタイプだ」
「複雑? なにがですか。どういうふうに」
「恋愛だよ。男性に対して、彼女は非常に複雑な反応をするタイプだ」
「男性に……ですか」
「実をいえば、女性にはときどきいるんだ。浮気とはちがう。ふたりの男性が同時に重なることはない。しかし恋人ができると、その次を考えずにいられない」
「……よくわかりません」
「彼女は素晴らしい女性だ。知性も行動力も、やさしさもある。パティが成長して子育てから解放されたら、きっと仕事で偉大な実績を残すだろう」
「僕もそう思います」
「しかしよい男と幸福にはなれないと思う」
「どうして」
「一ヶ所にとどまっていられないのだよ。先に進まずにいられない。それが不幸であってもだ。ハンナなら恋愛を望めばできるだろう。希望の男を手に入れて彼女は幸福になる。ところがそうなった途端、今度はそれを壊さずにいられなくなるのだ。不幸になる。そして、それを繰り返す」
「そんなこと、理解できません」
「それは私の説明が下手なのと、君の経験が足りないからだ。そういう人物に会ったことがないからだよ。あのスパゲティ男にしても、それが決定的なひと言になることは彼女にはわかっていたんだ。それなのにいってしまう。彼女は君には合わない。君は長いタイプだ。一年やそこらはいいだろうが、それより長い時間をいっしょに過ごすのはよくない。危険ですらある。お互いにとてもつらい思いをするだろう」
 僕は頬が火照るのがわかった。
「どうしてそんなことをいうんですか。それならどうして最初に……」
「男の浮気とはちがう。女性の場合はまったく複雑だ。彼女たちは、自分が自らすすんで不幸を求めているなんて思いもよらない」
「……わかりません。わかりません」
「いった通り、ただの忠告だ。意味を見出すかどうかは君次第だ。それだけだ」
「あなたにだって……」
 ふとそういうセリフが口を突いて出そうになったが、結局、僕はいえなかった。
 僕たちは黙って川を眺め続けた。そうするほかなかった。
 ハンナを失ったという実感が湧いたのは、このときだった。

 予定より二ヶ月も早く、三月に突然、帰国が決まった。
 左遷人事などこんなものだ。
 行き先は……予想以上にみじめなものだった。バブル時代のお荷物、赤字だらけのひ孫会社だ。僕はそこでまたしても経理をやる。どう転んでもよい結果など出るはずのない仕事だ。覚悟はしていたが、実際に辞令を見るとやはり落ち込んだ。僕はため息をつき、一切の仕事をやめた。
「外出してきます」
 社長にそう告げて、まだ肌寒い五番街を歩いてみた。あいかわらず人の波は楽しげだった。とうとうこの華やかな街に参加しないまま帰国するのか。そう思った。
 ふと、僕は小さな変化に気づいた。以前は浮かれたような人たちが気に障るだけだったのに、そのときは寄りそう恋人たちを見て微笑ましいような気分になったのだ。それに、五番街は笑顔の人たちばかりではなかった。ビルのすき間や物陰に、目立たないけれど、暗い表情の物乞いやうす汚い身なりの子どもたちも、少なからずいるのだった。
 突然、さまざまな問いに対する答えが期限を過ぎてからわかったような気がした。自分が小さく、とてもなさけなく思えて、僕はその場から動けなくなってしまった。
 五番街の人ごみの中で、肩を震わせて、僕は泣いた。

 ミスタ・クラークは、空港まで見送るといって聞かなかった。
「しかたないわね。ヒロのためだから。でもあたしもついていくわよ」
 新しい通いのメイドはドロシーといって、太った黒人の中年女性だ。容姿はハンナと似ても似つかないが、朗らかな性格は愛すべきものだった。
 ミスタ・クラークの足はだいぶ戻ったが、視力はどうやら時間の問題のようだった。
「なに、あのロープがあればだいじょうぶだ。ドロシーもいてくれる」
 彼は明るくいった。
 急な異動だったので忙しかった。家の賃借契約の解約、車の売却、そして荷造り。仕事では、ハンナの後任者として派遣社員の経験の長い日本人の女性を採用した。無愛想だが仕事は信頼できた。ぎりぎりに到着した後任者をランチに誘うのが、僕の最後の仕事になった。
「楽しくやることさ。いいところだよ、ニューヨークは」
 最終日は快晴だった。郊外にはもう光の気配があふれていた。あれから何度か降った雪もわずかに日陰に残っているだけで、川は懐かしい春の色を取り戻そうとしているところだった。
 なにもいわず、ミスタ・クラークと並んで川を眺めてから、僕たちはドロシーの車に乗り込んだ。
「しかし、本当にあんなものでいいのかな」
 JFK空港に向かう途中、ミスタ・クラークがいった。みやげの希望を問われ、僕は彼の油絵を求めたのだ。青いセザンヌだ。
「あれはいい絵ですよ」
「君のそういう好みは、いまだに理解できないところがある」
 そういいながら楽しそうに笑う。
「ありきたりの置き物なんかより、よほど記念になります」
「ふむ。それにしても、たった十ヶ月だなんて私にはとても信じられない。君とはもっと長い時間を過ごしたような気がする」
「僕もです。あなたにはたくさん教わりました。どれだけ感謝してもたりません」
「あたしも残念よ。ヒロのおかげで、あたしは日本人の見方が変わったわ。ヒロは本当に頭がよくてキュートだわ」
 迫力の体格でぐいと迫られると、思わず身を引いてしまう。が、うれしいせりふではある。
「ありがとう。着いたらメールを書きます」
「また遊びにいらっしゃい。今度はいい人とね。あたしの家に招待するわよ」
「私の目が見える間にしてくれよ。君の相手を、きちんと見届けたいからな」
 空港に着いて、チェックインをすませた。荷物が運ばれていく。
 セキュリティの前で、ミスタ・クラークと最後のハグをした。
「元気でな」
「あなたも」
「気をつけてね」
「ありがとう、ドロシー」
 行こうとすると、
「ヒロ」
「はい?」
「投げやりになってはいけない。これは忠告だ。私にも不遇の時代はあった」
「……はい」
 涙をこらえた。再び握手をし、その手を振って別れた。
 ひとりになった。
 出発ロビーのベンチに腰かけ、先のことを考えると、大きなため息が出た。この十ヶ月は素晴らしい時間だったと、後で思い出すのだろうと思った。
 内示が出てから、転職を考えないでもなかった。悩んだ挙句、僕は不名誉な辞令に従うことにした。理由はやはり怖かったからだ。蔑みの視線にさらされながら飛び出す勇気もないのかといわれれば悔しいが、転職市場で自分の無価値を思い知らされるのはもっと嫌だった。それに――今の会社の系列にいれば、ニューヨークの記憶とどこかでつながっていられるような気がしたのだ。
 秋の風景の中で感じたやりきれない感情は、まだ胸のうちにあった。このまま持って帰ろう――冬から春にかけて僕はそう決心していた。ハドソン川は黒いものを捨てるには美しすぎた。いつか溶けてなくなるかもしれないし、膨れ上がって僕を押しつぶすかもしれない。どちらになるにせよ、まだしばらく時間はあるだろう。
 心残りはふたつあった。
 ひとつはいうまでもなくハンナのこと。彼女とはあれきりになってしまった。ほんの数ヶ月前まで隣りにいたのが信じられなかった。もうひとつは、あのとき彼がつぶやいたセリフのことだ。なぜか知ってはいけない気がして、最後まで訊けなかった。
 宙に浮くロープのことは、今では九十九パーセント見まちがいだと思っている。あの夜の僕は酔っていた。奇妙な話を聞いて、僕の精神も不安定になっていたのだと。でも、もしかしてと思うこともあった。あれが本当のことだったとしたら。彼の故郷、南部の大河のほとりには不思議な魔法をもつ人々がいて、なつかしい家族の霊たちと静かに暮らしているとしたら……。
 本当のところはわからない。でもそれでいいのだろう。世の中に謎は山ほどある。それらすべての答えなど、きっと必要ではないのだ。それが答えだ。
 ミスタ・クラークは小さな謎をたくさんもっていた。家族の写真のない家、片づけられたクリスマスツリー、そして三本のロープと不思議な話。でも彼という謎を解く必要など、僕は少しも感じなかったじゃないか。
 それから、僕はこうも思った。
 ミスタ・クラーク、ハンナ、そして僕の人生が、この十ヶ月だけあの街で交差した。別々の方向から伸びてきて、ほんのわずか絡まりあい、再びほどけて別れていった。三本のロープとは僕たちのことでもあった。

 席につくと内ポケットの携帯が震えた。びっくりした。契約は月末まで残っていたが、かけてくる相手などもういないはずだ。時計代わりに持っているだけだった。
「――え、なに。なんで」
 思わず声が出た。ハンナだった。
「も、もしもし。ハロー」
「よかった、つながって。もう機内?」
「そうだよ。っていうか今どこ。今までいったい。ちょっと待て。どうして機内だって知ってるんだ」
「社長よ。あなたの帰国が決まったって、メールをくれたの」
「社長が?」
 僕は、なんとなく未練たらしくて送らなかったのだ。
「あの人は知っていたのよ。でもそんなことはいいの。離陸まであまり時間がないんでしょう。今からとても大事なことをいうから、よく聞いて」
「久しぶりなのに、いきなりなんだよ。こっちがどれだけ心配したと」
「お願い。黙って」
「社長が知らせてくれなかったらどうするつもりだったんだ」
「自信があったわ。ねえ、ちょっと黙って私の話を聞いて」
「だって――オーケイ」
「いい子ね」
 ベルト着用のアナウンス。ハンナは一息つくと、こういった。
「私、日本に行こうと思う」
「へ」
「ただしそれにはあなたの同意が必要なの。あなたが私を受け入れてくれるなら、私はあなたを追いかけて、娘といっしょに日本へ行きたい」
 僕は鼓動が速くなるのを感じた。――ああ、なんという展開。
「そんな……急に。だって君、それはつまり」
 ハンナははっきりといった。
「そう、プロポーズよ」
「電話で? 女性のほうから? 飛行機の中で? こんなせわしないときに? 突然? おかしいだろう。こういうのは、なんというか、ちゃんと約束をして、時間をたっぷりとって、ムードのあるレストランかどこかで、夜景を見ながら、少し酔っぱらったりして、するものじゃないのかい」
「そんな時間はないし、日付変更線を飛び越えて行くのだから夜も昼もないわ。お酒は、そうね、後でワインをもらったら」
「パティはどうなの。子どもの心は複雑だぞ。彼女は本当に納得しているの」
「心配なんかいらないって知ってるくせに。ねえ、ヒロ。ダーリン」
 その声は甘くなつかしい匂いを思い出させた。
「ダ……。なんだい」
「本当は迷ったのよ。あの夜のジョンの話を聞いて。なぜかわからないけれど、あの話はとても怖かった。この世には絶対に逃れられない邪悪があって、私は決して幸せになれない、なってはいけない、そんな絶望を覚えた。ジョンの意図がわからなくなって、悪意さえ感じられて、悲しかった。だってあのとき――」
 一瞬、怯えたような声。
「あのとき?」
 ハンナは……いわなかった。
「――あのとき、私、自信がなくなったのよ。だからあなたと少し距離をおこうと思ったの。勝手よね。わかってる。ジョンにも改めてお礼をしなきゃ。でも私も苦しんだの。時間が必要だった」
「……うん」
「私、考えたわ。ジョンが話してくれたあの家族は不幸だったのかって。ノーだと思う。悲しい出来事が起こってしまったけど、それまでの幸福は本物だった。悲しい運命につながっていたとしても、彼らの幸福はそのとき、たしかにそこにあったのよ。それはかけがえのない彼らの幸福だったのよ」
 彼女のいおうとしていることが、何となくわかった。
「私はこう思う。遠い将来に起こるかも知れないなにかをおそれて、目の前の幸福をつかもうとしないのは、おろかなことなのよ。幸福を追い求める努力をためらっていたら、その人はきっと不幸のまま終わってしまう。本人が気づかなかったとしても、それは不幸なのよ」
「うん。……うん」
 僕はうなずいた。
「なにかいって。あなたの話も聞きたいわ」
 僕はいつか問い質してしまうだろうか。
「同じだよ」
 あの夜のミスタ・クラークのせりふを。
「そんなことないでしょう」
 元夫に投げかけた彼女の言葉の真意を。
「ほんとうにその通りのことを考えていたんだ」
 そして僕たちは傷つけあうのだろうか。
「うそばっかり。じゃ、別のことでもいいわ。なにか聞かせて」
 でも、今は――
「……愛してるよ」
「ええ?」
「愛してる」
「――私も」
 電話の向こうでパティの絶叫が聞こえた。
 しばらく前からキャビンアテンダントが怖い顔でこっちを睨んでいる。僕は送話口をおさえて、こう告げた。
「もう少し待ってくれ。今、プロポーズのまっ最中なんだ」
 キャビンアテンダントは驚いた顔をし、ついで微笑んで、ウィンクを寄越した。

 飛行機はその後、電気系統のトラブルが見つかったとかで、離陸がだいぶ遅れた。おかげで僕たちはその間、ずっと話をすることができた。
「あなたは気づいてなかったでしょう。ジェーンは会社のお金を横領していたのよ」
「まさか」
「ヒロの前任者は、月末の点検を彼女にやらせていたでしょう。そんなのダメよ。彼女が小切手を切って、彼女が照合する。誰がチェックするのよ」
「うーむ」
「私、初日に気づいたわ。でもあなたがどう出るかわからなかったから、騒ぎにするよりもいいと思って、いま辞めるなら黙っておいてあげる、って条件を出したの」
「まさかリタも」
「リタとは今でもお友だちよ」
「あんなに強くひっぱたいたのに」
「あれはお芝居。私が頼んだの」
「どうしてそんなこと」
「あなたの困った顔、キュートなんだもの」
「はあ?」
「それだけじゃないわ。彼女のブースには、かわいいカエルのイラストがたくさん飾ってあったでしょう」
「そうだったかな」
「これだもの。あれはぜんぶ彼女が描いたの。彼女はイラストレーター志望だったのよ。残業できなかったのは、夜のスクールへ通っていたからなの」
「そうだったのか」
「私は一目見て才能を感じた。だから知り合いの編集者に紹介してあげたの。そしたら採用がきまった。今じゃあのカエルはけっこう人気あるのよ」
「へえ」
「本当はふたりの仕事を見て、これなら十分ひとりでやれると思ったの。辞めてもらうにはどうしたらいいかしらって考えたのよ」
 やっぱりスーパーウーマンだ。
「ひとつ、いいかな」
「もちろん」
「どうして僕に恋をしたんだ」
「そんなことは訊かないものよ。恋とケンカに理由はないの。理由のないこともあるの」
 無性に彼女に会いたくなった。
 ハンナは声のトーンを低くして続けた。
「昨日ね、家を出て初めて母親に電話をしたの。好きな人を追いかけて日本へ行くつもりだって伝えた。そしたら母は、おめでとう、がんばりなさいって、それだけをいってくれた。八年ぶりなのに。胸が熱くなったわ」
「……そうか」
「ああ、とてもあなたに会いたい。フライトが待ちきれない。まるで十代の少女に戻ったみたいな気分よ」
「僕も会いたい。おかしいな、ほんの二十分前まで、君との思い出はもう何百マイルも彼方のことみたいだったのに」
「始まるのよ、新たに」
「そうだな」
 彼女はひと息ついてこういった。
「私ね、日本ってはじめてなの」
「うん?」
「日本語も満足にしゃべれないのに、だいじょうぶかしら」
「君がそれをいうのかい」
「そうよ。本当は不安でたまらない。でもあなたを信じてついていくの。守ってね。お願い」
「……わかってるよ」
 一瞬、目的地の天気が気になった。晴れているといいな、と思った。
「わかってる」
 もう一度、僕はいった。
<了>

・このお話はフィクションです。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み