第1話
文字数 1,373文字
大人はいつだって退屈だ。
それは自由の象徴であるはずの冒険者でも変わらない。
義務、責任、関係、楔に囚われていてはすごい奴になんてなれない。だから、今日から俺が真の冒険者なんだ。
そう思っていたはずなのに……。
息が白く染まり大気が徐々に凍っていく。
後ろからはこの世ならざる死人、ゴーストの群れが迫ってきている。
初めてのダンジョン探索、規定では熟練の冒険者の動向が必要。だけど、無知な俺はここで一人命を無駄にしようとしている。
体温の低下で、もうろくに力が入らない。
それどころか逃げるための体力も身体を癒すポーションも使い切ってしまった。
「……意識が」
眠い。眠たくてしょうがない。
眠らないように理性を保っても、身体がそれを拒む。
いつのまにか冷たい手に覆われ、身体が凍っていくのが分かる。
涙すら出せないまま、短い吐息を最後に俺は……。
ふと凍る空気の中、黄色い炎を見た。
それは瞬く間に世界を黄金に変えていき、凍った身体を温かく包み込んでくれる。
ああ、なんて温かいんだ。
目覚めた時にはベッドの上だった。
どうやら通りがかりの魔法使いが助けてくれたらしく、俺は九死に一生を得た。
お礼が言いたいと助けてくれた魔法使いについてギルドの人に聞くと、酔っ払いのダブの名前が出た。
ギルドですれ違う機会も多く名前のインパクトとは裏腹に地味な印象だったために少し意外だった。
ダブの良く訪れる酒場に足を運ぶと、そこは知らない世界。
大人の冒険者が酒を片手に子供のようにはしゃいでいる。
その中心、机の上でへなへなになりながら踊っているのがダブだった。
話しかけようにも、そんな雰囲気ではなく、知ってか知らずか初めて酒場に入った俺を先輩たちは温かく迎えてくれた。
翌日には酒場での記憶がほとんどなくなっており、その日はずっと気持ち悪いまま吐いては寝てを繰り返した。
これが俗に言う二日酔いというものなのだろうか。
ダブと話せたのは、二日経った後だった。
酒場で陽気に踊っていた時とは違って、ダブは少し恥ずかしそうに謝礼を受け取ってくれた。
だけど、表情はどこか陰があって俺は初めて大人をかっこいいと思った。
ふとダブが首にかけているペンダントに目が行く。
銀色で少し派手な装飾。ダブはその視線に気づいたのかこれは仲間のものなんだと言っていた。
「ありがとうございました」
その言葉を皮切りにダブは手を振ってこの場を去っていく。
俺はその背にもう一度お辞儀をする。
身長は自分の方が高いはずなのに、その背はとても大きかった。
顔を上げると世界が少し変わって見えた。いつもは何気なく過ぎ去っていた景色に何か意味があるように思えて、その日はなかなか寝付けなかった。
それから数年が経ち、今日も何気なく酒場に入って行く。
もうそこにはダブの姿はないけど、代わりに仲間たちが俺を待ってくれていた。
お酒を飲んでいるとたまにダブのことを思い出す。
どれだけすごい魔法使いだって一人では生きいけない。だからこそ、人はいつだって繋がりを大事にするのだ。
「みんなありがとう」
俺がそんなことを急に言うもんだから、それを聞いた仲間は照れくさそうにしていた。
首にかけていた銀のペンダントを開く。
そこにはダブとその仲間たちが映っていた。。
それは自由の象徴であるはずの冒険者でも変わらない。
義務、責任、関係、楔に囚われていてはすごい奴になんてなれない。だから、今日から俺が真の冒険者なんだ。
そう思っていたはずなのに……。
息が白く染まり大気が徐々に凍っていく。
後ろからはこの世ならざる死人、ゴーストの群れが迫ってきている。
初めてのダンジョン探索、規定では熟練の冒険者の動向が必要。だけど、無知な俺はここで一人命を無駄にしようとしている。
体温の低下で、もうろくに力が入らない。
それどころか逃げるための体力も身体を癒すポーションも使い切ってしまった。
「……意識が」
眠い。眠たくてしょうがない。
眠らないように理性を保っても、身体がそれを拒む。
いつのまにか冷たい手に覆われ、身体が凍っていくのが分かる。
涙すら出せないまま、短い吐息を最後に俺は……。
ふと凍る空気の中、黄色い炎を見た。
それは瞬く間に世界を黄金に変えていき、凍った身体を温かく包み込んでくれる。
ああ、なんて温かいんだ。
目覚めた時にはベッドの上だった。
どうやら通りがかりの魔法使いが助けてくれたらしく、俺は九死に一生を得た。
お礼が言いたいと助けてくれた魔法使いについてギルドの人に聞くと、酔っ払いのダブの名前が出た。
ギルドですれ違う機会も多く名前のインパクトとは裏腹に地味な印象だったために少し意外だった。
ダブの良く訪れる酒場に足を運ぶと、そこは知らない世界。
大人の冒険者が酒を片手に子供のようにはしゃいでいる。
その中心、机の上でへなへなになりながら踊っているのがダブだった。
話しかけようにも、そんな雰囲気ではなく、知ってか知らずか初めて酒場に入った俺を先輩たちは温かく迎えてくれた。
翌日には酒場での記憶がほとんどなくなっており、その日はずっと気持ち悪いまま吐いては寝てを繰り返した。
これが俗に言う二日酔いというものなのだろうか。
ダブと話せたのは、二日経った後だった。
酒場で陽気に踊っていた時とは違って、ダブは少し恥ずかしそうに謝礼を受け取ってくれた。
だけど、表情はどこか陰があって俺は初めて大人をかっこいいと思った。
ふとダブが首にかけているペンダントに目が行く。
銀色で少し派手な装飾。ダブはその視線に気づいたのかこれは仲間のものなんだと言っていた。
「ありがとうございました」
その言葉を皮切りにダブは手を振ってこの場を去っていく。
俺はその背にもう一度お辞儀をする。
身長は自分の方が高いはずなのに、その背はとても大きかった。
顔を上げると世界が少し変わって見えた。いつもは何気なく過ぎ去っていた景色に何か意味があるように思えて、その日はなかなか寝付けなかった。
それから数年が経ち、今日も何気なく酒場に入って行く。
もうそこにはダブの姿はないけど、代わりに仲間たちが俺を待ってくれていた。
お酒を飲んでいるとたまにダブのことを思い出す。
どれだけすごい魔法使いだって一人では生きいけない。だからこそ、人はいつだって繋がりを大事にするのだ。
「みんなありがとう」
俺がそんなことを急に言うもんだから、それを聞いた仲間は照れくさそうにしていた。
首にかけていた銀のペンダントを開く。
そこにはダブとその仲間たちが映っていた。。