第1話

文字数 2,306文字

起)
神経質で胃痛持ちのため、 中学受験日にトイレから出られなくなって地元中学に進学するこ とになった織元光。 しかし、その地元中というのは彼が内心で 「カス中」 とバカにしていた日須第一中学校。 彼は軽く絶望したが、 実はカス中、 結構頑張っている中学校なのだ!  学 力は県で5から10位を彷徨い、 部活動も県大会には出られるくらいの実力がある。 しかし、 周りにあるのが私立超進学校や部活ガチ勢中学校(全国ベスト4入っちゃう) その他陽キャ パリピ中学校のため、 残念なことに霞んでしまい、 何かあるごとに「カス中」 とディスられているだ けなのだ!
さて、めでたくカス中に入学した光は、クラスメイトのキャラの濃さに驚く。 自分が自己紹介の時 「織元光」 と名乗ると、それを縮めて 「オリコーくん」 と呼び始めた蒲 田廻 (思ったことが口をついて出てしまうタイプらしい)。 そいつと仲が良いマジシャンの 足立夢幻。 「日本語は小学校一年生分しか喋れない」 自称グローバル人のイケメン、マック ス (早口すぎてフルネームが聞き取れなかったので略称のみ記しておく ) etc.
承)
カス中の方針で、 入学式から2週間後にドラマコンペと呼ばれる演劇発表会がある。 クラス で一致団結し、ともに高め合う新たなステップに到達するため、(強制で) 1クラス1つ演 劇を発表するのだ。 光のクラスは演目を決めるため、 アイデアを出し合っていた。 具体的な 方向性まで決めるために、 発案者が劇の一部を演じたのだが.....。
「王道でシンデレラとかどう? 『や、やだ! ガラスの靴がピッタリだからって、舞踏会 この時にあなたに見惚れてたりとか、してないんだからね! (やっだー、王子様かっこいい!  好き!) 』シンデレラ...いや、ツンデレラでした」
「王道っつったらアラジンと魔法のランプでしょ! 『...なんだって? ランプの魔神? 僕の願いを3つだけ叶えてくれるの? ….そうかそうか、じゃあ取り敢えず俺が死ぬまで言 うことを聞け。 あと酒だ酒持ってこい』 アラジンと魔法のランプ...いや、廃人と魔法のラ ンプでした」
他にも「ヤンデレラ (ヤンデレなシンデレラ)」「ドン引きの子豚 (色々とドン引き)」「〆切り雀 (締め切りを迫ってくる) 」「辛雪姫 ( 「マジつらみ」 が口癖)」 などなど。 王道と言いつ つ変化球を投げてくるクラスメイト (主に廻だが) に爆笑が止まらない光。 投票を行い、 シンデレラシリーズを演じることが決定した。 『シンデレラ』 『ツンデレラ』 『ヤンデレラ』 『デレデレラ』の4コンボを漫才形式で展開させようというのだ。 光は演出を担当することになり、裏方の柱にやりがいを感じる。 クラスの一体感も出て来て、意外とカス中も悪くないんじゃないかと思い始めたのだった。
そして、濃く、 ある意味地獄とも言える一週間を経て、 本番が近づいてきた。
転)
ところが、 急に担任が 「クラス全員が配役を持って舞台に上がらなきゃいけないんだっ た!」 と今更新たな条件を追加してきた。どうやら職員会議でその説明のあった日に出張していて知らなかったらしい。 ほとんど完成し、 あとは練習あるのみなのに、と 皆がっかりし、焦りも生まれる。 非はないのに謝る担 任を見て、 光はなんだか申し訳ない気持ちになった。 そこで、 細々とした小さな役をたくさ ん作り、 裏方だったクラスメイトにも役を割り振ったのだった。
本番。 例によって光はお腹が痛くなり 「腹痛に悶絶する通行人B」 を熱演することとなっ た。 そこまではまだ悪くなかった(良くはない)のだが、 舞台のシートにつまづいてしまい、 盛大にコケてしまう。 さらに悲惨なことにカツラまで取れてしまったので、不名誉にもシンデレラシリーズ以上の笑いをとっ た。 しかし光は、 次にどう動いていいかわからない上に胃がキリキリ叫んでいてパニックになり かけていた。そのとき、 夢幻が颯爽と舞台に登場し、 場を収めにかかった。「 この通行人を転ばせたのは この私だ! ウィッグをとったのもこの私! タネと仕掛けしかございません、 あなたは見 破れる? are you ready?」 マジシャンとして観客に挑んで、小さなハプニングを揉み消 す作戦のようだ。 そうわかった瞬間、 幕下から廻とマックスが飛び出した。 そこからはアド リブである。 光は舞台から逃げ出したあと保健室で丸まっていたので見てはいないが、 体育 館から聞こえてきた歓声は、 自分たちのステージの成功を意味していた。
結)
劇の面白かった順に3位までが表彰される閉会式で、 光のクラスは第2位を受賞し、副賞と
して 「劇の設定時間を大幅に超えていたで賞」も貰った。
いい感じで教室に戻ると、 担任が待ち構えていた。おめでとう、ありがとうとひとしきり盛 り上がったあと、光は恐ろしいものを目にする。
「え、まさか」
天井から下ろされたスクリーンには、自分たちの劇のビデオが映っていた。 マックスが「僕 が先生にビデオ撮っといてって言ったんだ」 と屈託のない笑みを浮かべたが、光はそれどこ ろではなかった。 だってそんなの、 公開処刑だ!
「うわぁやめて!」
このクラスは劇を通して一致団結し、 そしてある意味劇を通して分裂したのである。
さて、光たちは知るよしもないが、このクラス、 他の生徒もしくは先生から 「あそこは、ち よっとやばいね」 と囁かれている。
これは、とんでもないモンスター達にオリコーが振り回される話。
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