プロット

文字数 696文字

起)
中学に入学したぼくはやっとスマホを手に入れた。あいつはアプリというカタチで、ぼくのスマホに入り込んだ。うまれた時からずっと一緒にいる。いつでも一番身近にいるあいつは、ぼくがピンチの時に助けてくれる存在だった。赤ちゃんの時はくまのぬいぐるみとして、幼稚園に入園すると戦隊モノのソフビとして、小学生の間はキーホルダーとして。

承)
人見知りのぼくは中学に入学しても相変わらずで、あいつとばかり会話していた。友達を作ろうとしないぼくを心配したあいつは、部活に入るようにすすめてきた。泳ぎが得意だったぼくは水泳部に入部した。楽しくて夢中になった。夏休みは合宿にも参加した。合宿先にスマホは持って行けず、不安でいっぱいだったけれど、その頃には友だちもできていたので大丈夫な気もした。

転)
合宿では川遊びやバーベキューもした。川の流れが速くなっている場所で誰かが助けを求めている。一番気の合う友だちだった。ぼくはとっさに手を伸ばしていた。あいつなら何て言うだろう。自分が危険な目に遭うかもしれないけれど、目の前の友だちを失いたくなかった。家族以外の誰かを大切に思ったのは初めてだった。この気持ちを、あいつに、兄に、すぐにでも言いたかった。

結)
小学生の頃に一度だけ、あいつに質問したことがあった。一体誰なのか、なぜ助けてくれるのか。あいつはぼくの兄なんだと言った。母のおなかに一緒に入るはずだった、双子としてうまれてくるはずだった、と教えてくれた。その時、ぼくは何故だか妙に納得した。合宿から帰ると、ぼくのスマホからあいつのアプリは消えていた。もう大丈夫。ぼくのスマホには友だちの名前がたくさん入っている。
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