これがSNSの意見の大勢だ

文字数 973文字

 これまでずっと自称ミュージシャンだった学生の頃の友達が、何とか、本当のミュージシャンへの第一歩を踏み出した。
 動画投稿サービスで、自作の歌がバズり……と言っても「これまで何の実績も無かった『自称』が付くミュージシャンにしては」と云う程度だが……サブスクでの配信が決定したのだ。
 とうとう、そこそこは有名なラッパーの駱之介がMCをやってるラジオ番組に出演する事になった。
 まぁ、友達なので宣伝を手伝ってやるか……とSNSに書き込みをしたら……?
 あれ?

「ミュージシャンやってる友達が駱之介のラジオ番組に出ます。出演日は……」
と入力した筈なのに、何故か「駱之介」が変換出来ない。
 使ってるPCのIMEに「駱之介」を単語登録してる筈なのに……何故か、駱之介の名前の元になった落語家の名前である「楽之介」に変ってしまう。
 どうなってんだ、こりゃ?
 メモ帳で書いてコピペすると……「もしかして『立川楽之介』」と云う検索サイトで良く見る言葉がポップアップで表示された。

 何だこりゃ? と思って、そのSNSのヘルプを見てみると……どうやら、ある単語や文章が入力間違いの場合は、訂正や注意を行なう機能が実装されたらしい。
 入力間違いかどうかは……その時、その時のトレンドで決まり……たまたま、俺がラッパーの「駱之介」の番組について書き込みをしようとした時、その名前の元になった落語家の「立川楽之介」の引退が決まり、そっちがトレンドになってたらしい。
 おいおい、何を考えてやがる。
 こんな「小さな親切、大きな御世話」機能は要らねぇよ。

 流石に、この機能は不評なようで、あっちこっちからクレームが来て、「機能改善」をする事になったらしい。
 まぁ、そもそも、こんな機能は廃止すべきだと思うが……。

 そして、友達がラッパーの駱之介の番組に出た後、ダラダラとラジオを聞き続け……やがて、ニュース解説番組が始まった。
 今日のテーマは、政府による例の伝染病対策のどこが駄目だったのか?についての解説だった。
 それを聞きながら、俺は、思わずSNSにこう書き込んだ「#与党は解党しろ」。
 だが、「書き込み」ボタンを押した次の瞬間、画面に表示されたのは……。
「#野党は解党しろ」
 待て、例の「小さな親切、大きな御世話」機能、どこからのクレームを元に、どんな「機能改善」をしたんだ?
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