みーつけた

文字数 2,000文字

  一人寂しく夏休みを過ごしている大学2年生の田中裕司。友達は皆地元に帰り、彼女もおらず、暇な夏を過ごす田中。

 そんな田中の唯一の楽しみはホラーだった。田中は昔からホラー映画やホラー系の動画などを見ることが好きだった。大学生になってからは、ほぼ毎日ホラーを見えていた。だが、小さい頃から見ていたので、かなり耐性がついていた。最近では、『こっくりさん』などの降霊術にも手を出し始めていた。

 そんな中、バイト帰りに田中はある廃墟と化した保育園を見つけた。ボロボロの建物で草木が生え散らかっていた。その光景を見た瞬間、田中は思った。

 ここで『ひとりかくれんぼ』したい。

 今よりも強い刺激を求めた田中はここでひとりかくれんぼをすることを決意する。思い立った田中は速かった。すぐに必要な材料を集め、真夜中に例の保育園へと足を運んだ。

 近くには、少しだけ民家もあった。だが、丑三つ時を超えていたこともあり、明かりはついていなかった。更に、あたりに電灯はなく曇っていたため、スマホの明かりだけが頼りだった。

 生暖かい風、錆びれた遊具、取っ散らかったおもちゃ。田中の口角は自然と上がる。

 田中は一通り保育園の中を探索する。隠れる場所を探しているのだ。そんな中、田中は教室の奥に子供の背丈ほどの押し入れが横一列に並んでいるのを見つける。手始めに一番左の戸を開けてみる。もう古く、木製の襖であることから、開けるのに少し苦労する。

 ガタッ! ガララ

 中には子供たちが遊ぶおもちゃが入っていた。押し入れは6つあった。そして、左から3番目には何も入ってはいなかった。光を当て、大体の広さを目で測る。自分が入れるスペースを確認できた田中はここを隠れ場所として定めた。

 やっとひとりかくれんぼの準備をしようと持ってきたカバンに手をかけた時だった。田中の視界にあるぬいぐるみが映った。なぜかそのぬいぐるみを拾い上げる田中。

 物凄く汚れていたが、それはクマのぬいぐるみだった。クルクル回して調べる田中はあることに気づく。タグに名前が書いてあったのだ。

『あい』

 おそらく自分で書いたのだろう、大層汚い字だった。そこで人形を捨てていくのかと思いきや田中はあろうことか、その人形を使い、ひとりかくれんぼをやることを考えたのだった。

 田中は持ってきたペットボトルで洗面所に水を張った。そして、

「最初の鬼は田中、最初の鬼は田中、最初の鬼は田中」

 ぬいぐるみを水に沈めた。田中は押し入れに隠れた。テレビがないのでスマホで砂嵐を流して代用した。10秒が経過し、田中は再びぬいぐるみの所へ戻る。

「あーいちゃん……見ーつけた」

 ぬいぐるみにカッターをぶっ刺す。

「次はあいちゃんが鬼」

 田中はすぐさま押し入れに隠れる。久々の刺激に高揚しているのか、田中はニヤニヤと笑みをこぼす。押し入れの中は敢えて、真っ暗にしているので、どんな顔をしているのかわからないが、おそらく物凄く不気味な笑みを浮かべているのだろう。

 1時間が経過した。あたりに人の気配は全くしない。田中の体にも何の異変も起きていない。

(やっぱ何も起こらないか……)

 落胆する田中だったが、久々のゾクゾクするような体験に本人は満足していた。さあ、終わりにしよう。戸を開けようとした時だった。


 ドンッ!


 隣の部屋で何かが落ちた。しばらく動きを止める田中。すると……

 ドンドンッ! 

 ガタガタ!

 ペタペタッ

 明らかに自然で出せる音の範疇を超えていた。あまりの急な出来事に田中の顔から笑顔が消える。音はドンドンでかくなってき、更には……

「アハハハ」

 女の子の声だ。こんな真夜中に小さな女の子の楽しそうな声が確かに聞こえた。その瞬間、田中はこれは人間ではない

だと悟った。

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 突然、狂ったように笑いだす女の子。田中はもうその場から一歩も動くことが出来なかった。全身には鳥肌が立ち、奥歯も震え始めた。そんな時だった。急に、笑い声が止む。

 助かった。そんなことを思うのも束の間だった。

 ペタペタペタペタ

 

は田中のいる部屋に入ってきた。そして……

 ペタペタペタペタペタペタペタッ!!

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」

 部屋の中を縦横無尽に走りながら、取りつかれたように笑いだす女の子。あまりの恐怖に田中は涙目になりながら、耳をふさぐ。

(頼むッ! もう止めてくれ!)

「アハハハッ―――」






















































「たーなかさん……みーつけた」
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