第2話

文字数 2,608文字


今日もアニメ放火殺人

20××年7月今日都市にあるアニメ会社が放火され社員36人が犠牲になると言う悲惨な事件が起こる。犯人は逮捕されたものの自身も大火傷を負い重症故に裁判もままならないと言う。
そして数ヶ月が過ぎたある日

怨めし屋に1人の女性が依頼にきた。

「どうも。ご予約の佐々木彩香さんですね?私こう言う者です。」
雷紋はいつもの様に名刺を渡す。
「さとーかみなりもんですか?」
「いえ、浅草寺ではありません。らいもんって読むんです。」
軽いやり取りをこなしつつ依頼の話を促す。
「そうでした。私、アニメ会社に務めているまして。」
「それで?ご依頼の方はどう言った件で?」
佐々木は少し俯いてから静かに語りはじめる。
「私は今日もアニメって言う会社で広報を担当していたんです。」
雷紋は聞き覚えのある社名を聞き驚愕していた。顔に出すと不審に思われると思い亨にテレパシーを送る。
(うぉぉぉぉぉぉ!亨?聞いたか?あの有名な今日アニの人だって!ブルーメタルパニックや鈴宮遥の野望とかケーヲン?を作った会社!)
(あぁ!去年放火された会社だっけ!)
二人は表情そのものは普段通りで話を聞く
「ご存じかも知れませんが今日アニは去年放火に遭いまして私の恋人がその……」
気丈に振る舞っていた佐々木は事件当時を思い出したのか目に涙を浮かべ言葉を詰まらせていた。それを察した雷門はいつの間にか透が用意した紅茶を勧める。
「心中お察しします。どうぞこちらを飲んで落ち着いてください」
紅茶の芳香と温かさで心を落ち着かせたのか佐々木は続ける。
「あの日も普通の日常だったんです。私は広報だし彼がいた第一スタジオとは距離があったんです。」
話を聞きながらも雷紋は彼女を優しく見つめ話を続けさせる。
「彼とは婚約もしていたんです。出勤前の会話が最後の会話でした。」
平和だった日常に突如訪れた不幸過ぎる事件。
落ち着いていた 彼女に変化が訪れる。これまで塞き止めていたものが怒りが悲しみがあらゆる感情が溢れ出す。
「犯人は!私の彼氏を!36人もの同僚を殺したの!殺しただけじゃなく制作中だったアニメもダメにしたの!全て灰になった!」
感情を剥き出しにした彼女を黙って見つめ少し思案する。確かに感情論で言えば許せないし36人も犠牲者がいるのであれば死刑は免れない。だから俺達が怨みを晴らすなんて事をしなくても然るべき判決が下される。だが、日本と言う国は何度も裁判がある上に何年もかかる。それは逆に言うと被害者も加害者も精神的に疲弊すると言う事になると同時に事件の記憶が薄れていくと言う事。監視カメラのメモリー等も寿命があるし完璧じゃない。やはりどこかで怨みを晴らす必要があるのかもな。雷紋は思考をやめて仕事に戻る。
「お前の怒りや悲しみを誰にぶつけたい?どう晴らしたい?」
「そんなの!犯人に決まってるじゃない!平穏だった日常を壊したあの男に怒りを感じない日なんてない!彼を亡くして悲しくない日なんてないわよ!あの男に怒りも悲しみも全部ぶつけてやりたいわ!」

感情を全て吐き出した佐々木に向けて雷紋は魔眼を光らせながら言う。
「お前の恨みしかと受け止めた。その怨み晴らしてやる!」
直後、佐々木はテーブルに突っ伏す様に気を失う。
「亨さっさと怨嗟の火を取り出してやれ。」
「おーけー!じゃ、失礼しまーす。」
のんびりした口調でランタンを背中から突っ込ませる事しばし。
「今回のも黒い良いオーラが取れた。しかし、
毎回鮮やかな魔眼使いだね。」
「皮肉か?俺の魔眼は怒りや悲しみを引き出すのと眠らせるくらいの2つしか使えないんだが?」
「いやいや!本音だよ!話を聞きながら依頼人に悟られる事なく魔眼による魔力の注入なんて普通できないっ!普通は眠らせる時みたいに一気にやるもんでしょ?」
雷紋はすでにその話題はしたくないのか会話を打ち切る。
「それはそうとして俺は佐々木に契約書を書かせる。亨は次の準備をしててくれ。」
「りょーかい。魔装室の準備してくる。」
亨はランタンを片手に奥の部屋へと消える。
雷紋は指をパチンと鳴らし佐々木を起こす。
「う、うーん?アレ?私は?」
「佐々木さんどうなさいましたか?」
雷紋は普段通りの表情で佐々木に接する。
「依頼をお受けいたしますのでコチラにサインをお願いします。」
「え?あっはい。お願いします。」
事務処理を終え雷紋も魔装室へと向かう。

魔装室で作業を終えた亨は紅茶を啜り雷紋を待つ。
「今回はどんな悪魔道具を使うんだろう?楽しみだなぁ?」
「それはもう考えてある。炎々HELLファイアを使う」
魔装室に入るなり雷紋はポケットからキャンディらしきものを取り出しながら言う。真っ赤な炎の様な色の球体を手のひらで弄ぶ。
「本気?それ悪魔でも消せる悪魔道具だろ?どーすんの?殺すの?」
亨の問いに雷紋はポケットから先ほどと同じ様な球体を取り出す。今度の球体は綺麗なスカイブルーだった。
「延々ライフセイバーも合わせて使う。」
「え?合わせるって?何するの?ソレっていわゆる死なない薬でしょ?」
「ああそうだ。死なない薬と対象だけを焼き尽くす炎々ヘルファイアを1つに合体させて2つの効果を発揮する道具を作った。名付けて炎延ライフファイアだ!」
「それって延々炎に焼かれるって事?えげつない!この悪魔!」
ニヤリと笑いながら雷紋は答える
「犯した罪は同様の苦しみをと言うのが俺の考えだよ。同じ苦しみと言うと36人分の恐怖と苦しみな訳だ。なので本来安息の時間である睡眠時のみ1万度の炎で燃えてもらう。延々ライフセイバーが命を延長してくれるから死ぬ事はない。」
それを聞いた亨は喜色満面の笑顔で問う
「最高だよ!さすが上級悪魔だ!それで?効果はどれくらい?」
「燃え尽きる→死ねずに苦しみ続けるを6時間ほどだ。苦しすぎて声も出せないだろうな。それを10年だな。だが死刑が決まれば効果を打ちす。死刑までは火刑が続くと言う事だな。」
「でもなんで10年なの?」
「刑が執行されるのがいつになるかわからないからな。取り敢えずの目安と言ったところさ。そうそう!看守の目を誤魔化すための悪魔道具も転送しておこう。」
こうして今日アニ放火魔は上級悪魔2人による暗躍の結果毎夜苦しむ事となる。

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登場人物紹介

佐藤雷紋(さとうらいもん)主人公。主に依頼人の本音を聞き出す役の他悪魔道具の改良メンテナンス等を行う。178cm75kgで妻子持ち。

鈴木亨(すずきとおる)依頼人の管理、事務処理、その他魔界とのやり取り担当。176cm70kgで妻子持ち。グレーのスラックスに糊の効いたワイシャツとベスト。ケミトルマッシュの髪型に二重瞼に少し幼めの顔立ち。

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