第1話
文字数 1,479文字
バーン
有原美咲が教室のドアを勢いよく鳴らした。教室中がカースト上位の彼女に視線を浴びせた。
「あ~、もう最悪」有原のかすれた声が余計怒りを表している。勿論、教室の誰もその怒りの原因は分からないようだ。
「朝っぱらからどうしたの、美咲」心配そうに伊藤香織が声をかけた。有原とは小学校からの知り合いで一番の親友だ。
「今朝のニュース見てない?」
「あ、もしかして昨日の露出狂?」食い気味に教室の誰かが応えた。先日、香織らが通う女子校付近の公園に恥部を見せて回る露出狂が現れたのだ。四十後半の男だ。通学途中に通る公園だけあって朝から母に注意するよう言われていた。
「そう、それ。あれの被害者わたしなの」有原が怒りと恥ずかしさが入り混じった声を出した。
「え、じゃあ美咲男の人のあれ見たの?」教室中が有原の話に興味津々だ。中高一貫の女子高で幼いころから男女分けられて育てられた少女らは異性について知りたいことだらけだ。
「見た…」有原が頬を赤らめながら応える「あーもう最悪!初めてがおじさんなんて嫌だよ…」
いつも強気な有原が落ち込む姿は誰もが初めて見るものだった。それ程有原にとっては衝撃的な出来事であの男の姿が脳裏に焼き付いていた。
「香織は彼氏いるから見たことあるのよね…」有原が顔を上げ香織の目を見つめた。このクラスの中で異性との交際がはっきりしているのは香織一人だ。
「あれって?」突然のパスに何の事か香織にはさっぱり分からなかった。ような表情で応えて見せた。
「いや、分かるでしょ…」
「わかんないよ~」香織は嘘をついた。派手な見た目と裏腹に純粋な心を持った有原の恥ずかしがる顔が昔から好きなのだ。
「男の人の…」有原の顔がさらに赤くなる。
「男の人の?」香織はいたずらに訊き返した。
「マスクの下…」精一杯の発言に有原の顔は赤よりも赤になっていた「あ~もう恥ずかしいこと言わせないで」
最高の反応に香織は興奮した。
「ま~、あるけど…」大人しく普段は目立たない彼女に教室中が注目している。
「女の人とそんなに変わんないよ」
香織はまた一つ嘘をついてしまった。
「あ~、変な嘘ついちゃったよ…」
幼いころから愛用のぬいぐるみが乱雑に置かれたベッドの上に二人は腰を下ろしていた。香織宅にはその二人だけだ。両親は外出中らしい。
香織はじっと木下和樹の目を見つめる。何があったか訊いてほしそうな顔をするものだから和樹はまんまと香織に問いかけてしまった。
「どうしたんだ?」
「教えない…」香織は有原のことを思い出し、同じように可愛く顔を赤らめて見せた。
「教えたくない…」更に小声で付け加えた。
その声につられて和樹が香織の顎をクイっと掴んだ。彼女の愛くるしさに奥手な男のオスの部分がちらりと顔を出した。
―え…、予想外の和樹の行動に香織は本当に照れて見せた。
「いいじゃん、教えてよ!」和樹が迫った。つられて香織の呼吸が荒くなった。
マスク越しに香織の吐息の温度が和樹に伝わった。
「…見たことあるって言ったの」照れで声が詰まった。
「ん?亜空の使者?」
「マスクの下!和樹のマスクの下見たことあるって言ってしまったの!」素っ頓狂な和樹の聞き間違いに香織はつい感情的になった。
「あ、そういうことね」スルッと顎から手を放した。一瞬の沈黙が少女には無限に感じた。
「ならこれで嘘じゃないね」
そう言って和樹は自分のマスクを取り外し微笑んで見せた。
初めて見た和樹のマスクの下にある本当は少女に本当の興奮を与えた。
嘘では決して手に入らない少女の初体験だった。
有原美咲が教室のドアを勢いよく鳴らした。教室中がカースト上位の彼女に視線を浴びせた。
「あ~、もう最悪」有原のかすれた声が余計怒りを表している。勿論、教室の誰もその怒りの原因は分からないようだ。
「朝っぱらからどうしたの、美咲」心配そうに伊藤香織が声をかけた。有原とは小学校からの知り合いで一番の親友だ。
「今朝のニュース見てない?」
「あ、もしかして昨日の露出狂?」食い気味に教室の誰かが応えた。先日、香織らが通う女子校付近の公園に恥部を見せて回る露出狂が現れたのだ。四十後半の男だ。通学途中に通る公園だけあって朝から母に注意するよう言われていた。
「そう、それ。あれの被害者わたしなの」有原が怒りと恥ずかしさが入り混じった声を出した。
「え、じゃあ美咲男の人のあれ見たの?」教室中が有原の話に興味津々だ。中高一貫の女子高で幼いころから男女分けられて育てられた少女らは異性について知りたいことだらけだ。
「見た…」有原が頬を赤らめながら応える「あーもう最悪!初めてがおじさんなんて嫌だよ…」
いつも強気な有原が落ち込む姿は誰もが初めて見るものだった。それ程有原にとっては衝撃的な出来事であの男の姿が脳裏に焼き付いていた。
「香織は彼氏いるから見たことあるのよね…」有原が顔を上げ香織の目を見つめた。このクラスの中で異性との交際がはっきりしているのは香織一人だ。
「あれって?」突然のパスに何の事か香織にはさっぱり分からなかった。ような表情で応えて見せた。
「いや、分かるでしょ…」
「わかんないよ~」香織は嘘をついた。派手な見た目と裏腹に純粋な心を持った有原の恥ずかしがる顔が昔から好きなのだ。
「男の人の…」有原の顔がさらに赤くなる。
「男の人の?」香織はいたずらに訊き返した。
「マスクの下…」精一杯の発言に有原の顔は赤よりも赤になっていた「あ~もう恥ずかしいこと言わせないで」
最高の反応に香織は興奮した。
「ま~、あるけど…」大人しく普段は目立たない彼女に教室中が注目している。
「女の人とそんなに変わんないよ」
香織はまた一つ嘘をついてしまった。
「あ~、変な嘘ついちゃったよ…」
幼いころから愛用のぬいぐるみが乱雑に置かれたベッドの上に二人は腰を下ろしていた。香織宅にはその二人だけだ。両親は外出中らしい。
香織はじっと木下和樹の目を見つめる。何があったか訊いてほしそうな顔をするものだから和樹はまんまと香織に問いかけてしまった。
「どうしたんだ?」
「教えない…」香織は有原のことを思い出し、同じように可愛く顔を赤らめて見せた。
「教えたくない…」更に小声で付け加えた。
その声につられて和樹が香織の顎をクイっと掴んだ。彼女の愛くるしさに奥手な男のオスの部分がちらりと顔を出した。
―え…、予想外の和樹の行動に香織は本当に照れて見せた。
「いいじゃん、教えてよ!」和樹が迫った。つられて香織の呼吸が荒くなった。
マスク越しに香織の吐息の温度が和樹に伝わった。
「…見たことあるって言ったの」照れで声が詰まった。
「ん?亜空の使者?」
「マスクの下!和樹のマスクの下見たことあるって言ってしまったの!」素っ頓狂な和樹の聞き間違いに香織はつい感情的になった。
「あ、そういうことね」スルッと顎から手を放した。一瞬の沈黙が少女には無限に感じた。
「ならこれで嘘じゃないね」
そう言って和樹は自分のマスクを取り外し微笑んで見せた。
初めて見た和樹のマスクの下にある本当は少女に本当の興奮を与えた。
嘘では決して手に入らない少女の初体験だった。