土中の遠吠え

文字数 352文字

君には見えるだろうか 
 あの海が
君には聞こえるだろうか
 この声が

山の中腹に眠る君よ
家畜と共に眠る君よ
そちらの世界にはありますか
君の好きだった散歩の時間が
 
草木ゆらめく獣道
坂に忘れてきた水筒の影
石段を一歩 一歩 また一歩
小さな祠のすぐ横に
 私達は君を埋めた

 私はすぐに帰郷した でも、
 すでに固く冷たくなっていた君
尻尾を回していたのが嘘のよう
最後の最後に 母の手を舐めた
と 全てが終わってから聞いて
 私はやっと涙を流した
 
もっと遊べばよかった
後悔しているのは
君だけじゃないんだ
 そう思いたい

追うように兄貴が亡くなり
あちらの世界で また
影を重ねて遊んでいるのだろうか
そういえば真っ先に帰ったのも
 兄貴だったよな

いつだったか 君の墓碑に
蝉の抜け殻が 付いていた
ああ 確かに 君だ
 聞こえるよ 力強い君の遠吠えが
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