言葉の受け取り方
文字数 1,829文字
『努力』って、よく聞く言葉。
なにかのために、努力する。努力しろ。努力した方がいい。努力しよう。
俺の周りにもいっぱい居るさ。
将来のために、自分のために、友達のために、親のために。何かをし続ける。何かを始める。
｢なぁ｣
奴の肩が一瞬だけ大きく動く。驚き過ぎだ。
｢え、あぁ。何｣
他の誰にも見えないように、スマホの画面を見せる。そしたら、他の誰にも聞こえないように、そっと囁く。
｢これ、お前か｣
この言葉は疑問じゃない。『確認』だ。
｢え｣
口が薄く開いたまま。目にスマホからの光が反射している。
｢違うよー｣
奴は作った笑い声で、誤魔化してみせる。本人も、意味が無いことを知っていてなんだろう。
｢僕、この人よく見ててさー、でも結構マイナーな方かと思ってて、びっくりしちゃった。君も見てるの？｣
探って来てる。
俺はこいつのこういうところが好きじゃねぇんだよ。バレてるってほぼ確定してんのに、表向きでは隠しておいてって。嘘をつらつらと。
｢あぁ。最近知ってな｣
好きじゃないからこそ、乗ってやろう。
｢そっかぁ｣
これで探り合いはなかったことに。
睨みつけるように、目を細めて笑ってやるさ。
あー腹立つ。
こいつは歌が上手い。はずだ。というか、さっきの反応を見る限り、この歌声はこいつで間違いないだろ。
耳にイヤホンぶっ刺して、その動画の音を聴く。
そうだ、お前は歌が上手い。
指を動かせば、画面が動く。
俺はこの絵を見たことが、ある。
『○○で一番好きなキャラ』
『今日、めちゃ上手くかけた』
そんなやつの最新作。
『授業中に描いた落書き』
いや授業中に描くなよ。反射的に奴の方向を向いてしまう。今そいつの手にあるのは、ペンじゃなくスマホだ。
こいつはわかりやすい。名前も、絵柄も文章の書き方も。そのまんまじゃねぇか。
｢なぁ｣
｢はい？｣
まさに『キョトンとした』顔だな。
｢さっき授業中に絵、描いてたでしょ。どんな絵描いてたの？｣
これは、絵を見せたくないのか、なんでそんなこと知っているのか、はたまたどうして知りたいのか。疑問か？疑いか？似たようなもんか。どんなことに迷っているんだろうな。
｢よく見てるねぇ。これだよ。このキャラ知ってる？｣
知ってるよ。さっきネット上で見たのと一緒。
｢いやぁ、知らないなぁ。え、でも、めっちゃ上手だね｣
何に対しての『でも』なんだ？
｢ありがとう！｣
何に対してのありがとうなんだ。
その笑顔が、その絵が、あぁもう、いいや。
こいつは絵が上手い。
｢ねぇ｣
｢あ？あぁ、あんたか｣
このクラスで1番好きじゃない奴。
｢これってさ、知ってる？｣
もちろん。よく知ってるさ。
｢いや、見たことないかも｣
｢そっか。これね、自分が書いた話を、ネットに乗っけて色んな人に見てもらえるサイトなんだけどさ、あなた、よく本読んでるから｣
｢電子書籍は読まないんだ｣
意識的に、『困ったような』顔を見せつける。
｢あ、そうなんだ。うーん。もし良かったら、ここに私が書いた話があるから、あなたに読んでもらいたかったんだけど｣
知ってるよ。読んだことあるよ。昨日も新しいの投稿してたよね。全部読んでるよ。
｢え、まじ。教えてよ、時間あったら読むから｣
｢ほんと？良かった。読んだら是非とも感想を教えてね｣
あぁもう本当に。喉が細くなった感じだ。
お前は話を書くのが、上手いんだよ。
俺は音痴だと思う。俺の得意分野じゃない。だから歌は上手い方じゃなくてもいいんだ。
俺は絵が下手だと思う。自分の得意分野じゃない。だから絵を描くことから逃げれたんだ。
俺は、
俺は話を書くのが好きだ。得意と言うと、書かされてるみたいで好きじゃないから、『好き』だ。
好きなものは自慢したい。
自分が好きなものは褒められたい。
だからたくさんの本を読み、自分の『好き』を研究して、好きなものを育ててきた。いわば、『努力』してきた。はずなんだ。
でもさ、それを越えられるとすっげぇ悔しい。
諦めたもんは別にいいんだよ。だからこそ諦めなかったものは駄目なんだろうな、越えられちゃ。
結局は好みの問題だし、優劣をつけるもんじゃないんだろ。それでも1度でも自分の中で『越えられた』なんて思っちゃ、崩れちまうんだよ。
世の中まで視界を広げりゃ、なんにも1番になれない。なのに知り合いの中で1番に、なんて。笑えてくるね。あー悔しい。
自分の『努力』が1番好きだって言える日まで、挫けちゃ駄目なんだろうな。
｢なぁ｣
好きじゃない奴と、目が合う。
｢俺の作品もあるから。気が向いたら探してみてくれん？感想付きで｣
なにかのために、努力する。努力しろ。努力した方がいい。努力しよう。
俺の周りにもいっぱい居るさ。
将来のために、自分のために、友達のために、親のために。何かをし続ける。何かを始める。
｢なぁ｣
奴の肩が一瞬だけ大きく動く。驚き過ぎだ。
｢え、あぁ。何｣
他の誰にも見えないように、スマホの画面を見せる。そしたら、他の誰にも聞こえないように、そっと囁く。
｢これ、お前か｣
この言葉は疑問じゃない。『確認』だ。
｢え｣
口が薄く開いたまま。目にスマホからの光が反射している。
｢違うよー｣
奴は作った笑い声で、誤魔化してみせる。本人も、意味が無いことを知っていてなんだろう。
｢僕、この人よく見ててさー、でも結構マイナーな方かと思ってて、びっくりしちゃった。君も見てるの？｣
探って来てる。
俺はこいつのこういうところが好きじゃねぇんだよ。バレてるってほぼ確定してんのに、表向きでは隠しておいてって。嘘をつらつらと。
｢あぁ。最近知ってな｣
好きじゃないからこそ、乗ってやろう。
｢そっかぁ｣
これで探り合いはなかったことに。
睨みつけるように、目を細めて笑ってやるさ。
あー腹立つ。
こいつは歌が上手い。はずだ。というか、さっきの反応を見る限り、この歌声はこいつで間違いないだろ。
耳にイヤホンぶっ刺して、その動画の音を聴く。
そうだ、お前は歌が上手い。
指を動かせば、画面が動く。
俺はこの絵を見たことが、ある。
『○○で一番好きなキャラ』
『今日、めちゃ上手くかけた』
そんなやつの最新作。
『授業中に描いた落書き』
いや授業中に描くなよ。反射的に奴の方向を向いてしまう。今そいつの手にあるのは、ペンじゃなくスマホだ。
こいつはわかりやすい。名前も、絵柄も文章の書き方も。そのまんまじゃねぇか。
｢なぁ｣
｢はい？｣
まさに『キョトンとした』顔だな。
｢さっき授業中に絵、描いてたでしょ。どんな絵描いてたの？｣
これは、絵を見せたくないのか、なんでそんなこと知っているのか、はたまたどうして知りたいのか。疑問か？疑いか？似たようなもんか。どんなことに迷っているんだろうな。
｢よく見てるねぇ。これだよ。このキャラ知ってる？｣
知ってるよ。さっきネット上で見たのと一緒。
｢いやぁ、知らないなぁ。え、でも、めっちゃ上手だね｣
何に対しての『でも』なんだ？
｢ありがとう！｣
何に対してのありがとうなんだ。
その笑顔が、その絵が、あぁもう、いいや。
こいつは絵が上手い。
｢ねぇ｣
｢あ？あぁ、あんたか｣
このクラスで1番好きじゃない奴。
｢これってさ、知ってる？｣
もちろん。よく知ってるさ。
｢いや、見たことないかも｣
｢そっか。これね、自分が書いた話を、ネットに乗っけて色んな人に見てもらえるサイトなんだけどさ、あなた、よく本読んでるから｣
｢電子書籍は読まないんだ｣
意識的に、『困ったような』顔を見せつける。
｢あ、そうなんだ。うーん。もし良かったら、ここに私が書いた話があるから、あなたに読んでもらいたかったんだけど｣
知ってるよ。読んだことあるよ。昨日も新しいの投稿してたよね。全部読んでるよ。
｢え、まじ。教えてよ、時間あったら読むから｣
｢ほんと？良かった。読んだら是非とも感想を教えてね｣
あぁもう本当に。喉が細くなった感じだ。
お前は話を書くのが、上手いんだよ。
俺は音痴だと思う。俺の得意分野じゃない。だから歌は上手い方じゃなくてもいいんだ。
俺は絵が下手だと思う。自分の得意分野じゃない。だから絵を描くことから逃げれたんだ。
俺は、
俺は話を書くのが好きだ。得意と言うと、書かされてるみたいで好きじゃないから、『好き』だ。
好きなものは自慢したい。
自分が好きなものは褒められたい。
だからたくさんの本を読み、自分の『好き』を研究して、好きなものを育ててきた。いわば、『努力』してきた。はずなんだ。
でもさ、それを越えられるとすっげぇ悔しい。
諦めたもんは別にいいんだよ。だからこそ諦めなかったものは駄目なんだろうな、越えられちゃ。
結局は好みの問題だし、優劣をつけるもんじゃないんだろ。それでも1度でも自分の中で『越えられた』なんて思っちゃ、崩れちまうんだよ。
世の中まで視界を広げりゃ、なんにも1番になれない。なのに知り合いの中で1番に、なんて。笑えてくるね。あー悔しい。
自分の『努力』が1番好きだって言える日まで、挫けちゃ駄目なんだろうな。
｢なぁ｣
好きじゃない奴と、目が合う。
｢俺の作品もあるから。気が向いたら探してみてくれん？感想付きで｣
