第4話 9月13日

文字数 3,815文字

9月13日

 次の日キャップに渡されたメモに書いてあった場所に向かった。

 その場所は三鷹の幹線道路から一本奥に入った所にある何年も前に潰れたらしきパチンコ屋だった。
 
 パチンコ屋だった頃の入り口にあるガラスの自動ドアは動いておらず、そこから覗き込むと中は荒らされており至る所にパチンコ玉が散乱していてパチンコ台も何台か地面に散らばっていた。

 メモに書いてあった住所を改めて検索してみるがやっぱりこの場所だった。どうにか建物の内部に入れないかと周囲を回ると裏口がありドアノブを回すと鍵がかかっていたが一応ドアの横にあるインターホンを押してみると、意外にも呼び鈴がなりスピーカーから男の声がした。
 
「あなた誰ですか?」と愛想のない声がした。

「あの〜雲村に紹介されて伺わせて貰ったんですが。」

「ああ、じゃあ緒方さん?」

「はい。」と言うとドアの鍵からカチャっという音がした。

「入ってください。」と言われてたあとスピーカーからプツっと通話が切れる音がした。

 ドアノブを回すと今度はちゃんと回りゆっくりドアを開け中を覗くと、段ボールなどがいくつも積まれて置いてあるが、外観ほど汚くは無く中小企業の事務所といった感じでだった。

 建物の中に入り目的地もわからず歩いているといくつもある箱の一つが蓋が開けっぱなしのまま置かれており中にはパチンコ屋さんの制服や景品ポスターなどが入っていた。

 電気のスイッチを見つけ付けてみるがブレーカーが落ちているのか何も起こらく昼だというのに薄暗い部屋を覗くがさっきインターフォンに出た人の姿はどこにもなく、仕方なくあたりを行ったり来たりすると上と下に行く階段を見つけた。

 上に行く階段は何処からか外の光が差し込んでいて明るかったが地下へ行く階段は真っ暗で踊り場より先は暗闇になって全く先が見えなかった。

 出来れば地下には行きたくなかったので先に二階に上がってみるが一階と同じ様に大したものは無くダンボールや折り畳み机やパイプ椅子が有るだけだったので、なくなく地下の階段を降りることにした。

 一階まで降り、スマホをライトをつけ恐る恐る一歩一歩と降りていき踊り場までつきUターンして降りようと一歩踏み下ろした瞬間、ぱっ天井の伝統がついた。

 それと同時に驚いて、階段を踏み外し右足がジーンなりいきなり頭が動いた為だガンガンとした感じがした。

 階段を降りると目の前に、コンクリートが打ちっぱなしの長方形の4メートルほどの短い廊下がありその突き当たりに鉄でできた頑丈そうな扉とその横にカメラ付きのインターホンがあった。

 インターホンのボタンを押そうとするとするとスピーカーから先程の声がし「カメラに目を向けて。」と言われたので言われるがままにカメラを見ると、ガチャリと扉から音がした。

「入ってきてください。」と言われ扉を開けて入ると、同じようにコンクリート打ちっぱなしの廊下が7メートルほどあり左右に2個ずつと突き当たりに一つの扉があり左右の扉を一つずつ開けていくと 二つはトイレと風呂でそれ以外には鍵が掛かっていた。

 最後に突き当たりの扉を開けると20畳ほどの1dkのマンションの様な部屋で中に入っていくと一番奥に一人の男がいくつもディスプレイがあるパソコンに向かって座っていた。椅子がくるっと周りこちらを向く男はお洒落な顎髭に横長の四角いメガネをかけた意識が高そうな男だった。

「遅かったですね。」

「いや、出来れば此処までの来方を教えて欲しかったです。」

「あれ、雲村さんに聴いてないんですか?」と相手は驚いたように言った。

「え、いやここの住所だけ教えられただけですけど。」

「あれ〜おかしいな、昨日雲村さんが貴方に伝えておくって言ってたから。・・・そうか、じゃあちゃんと僕が出てけばよかったですね。すいません。」

「いやいや、こちらこそうちの雲村がすいません。」

「いえ、大丈夫ですよ。それより貴方は?」

「雲村さんに聴いてないですか?僕は池谷と言います。デイトレーダーをやってて、ちょっとパソコンに詳しいんで雲村さんに頼まれごとをされるんで手伝ってるんですよ。」

「あ、そうなんですか、いやなんか妙な所に住んでるから、やばいハッカーか何かかと思いましたよ。」

「ああ、でも雲村さんに言われてハッカーみたいなこともやってますよ、捕まるようなこと無いと思いますけどね。」とニコニコしてその男は言った。

「キャップってどんな事を池谷さんに頼んでるんですか?」

「興味あります?」

「ちょっと。」

「雲村さんにはお世話になってるんで秘密です。」と丁重に断られた。

 池谷さんに映像データが入ったUSBメモリーを渡すと金属のラックに置いてある大きく黒光する据置のパソコンケースに差し込むと、ディスプレイの前に座りキーボードをカタカタ打ちはじめ、画面の一つに映像が映し出され私はそれを後ろから見ていた。

「この映像ですか?」

「はい、この奥の大きなガラス窓にの奥をよく見えるようにしたいんです。」

「わっかりました。」と何かを考えるように言った池谷さんはコレまで以上の勢いでキーボードを打ち始め、ディスプレイに映し出された映像が何枚ものフィルターを通したように、、少しずつ暗くなっていき奥の白くぼやけていた所が見る見る見やすくなっていった。しかしよく見えるようになってくるのと同時に車通りが激しい所が画像が荒く見にくくなってきた。

「これ以上は綺麗にならないですかねえ?」

「え?、出来ます。」と池谷さんはさも当然のように言った。

「え、そうなんですか、よく最近の映画とかでそう言ったのは出来ないって言ってたからできないと思ってましたよ。」

「ああ、最近よく聞くようになりましたね。でも本当はできるんですよ、ただそういう技術はトップレベルの組織しか使ってないしトップシークレットなんですよ。」

「じゃあなんで池谷さんが使えるんですか?もしかしてスパイ?」

「いやいや違いますよ、こう言った技術ってその組織のエージェントなら結構誰でも使えるんですよ。でそんな人たちの中には時々おっちょこちょいの人が居たりして、居酒屋で気持ちよくなるとポロッとアカウントのIDとかパスワードとか簡単に喋っちゃう人が居るらしいんですよ。」

「居るらしいって、もしかしてそのIDとパスワード?」

「いや〜、いいお酒飲ませたら簡単に教えてくれました。」

「それバレてないんですか?」

「まあ大丈夫だと思いますよ。その人と時々呑んでるし、その時はちゃんと奢ってます。」と池谷さんはけろっとした顔で言った。

「そういう技術って他にもあったりするんですか?」

「色々有りますよ、どんなことでも分かってしまう検索エンジンとか、全世界の電話の通話を傍受して何を話しているか調べる物とか。」

「それって高いんですか?」

「大丈夫1万円でなんとかしますよ。」と人差し指を一本たてる池谷さんを見て、世界の諜報機関のコンプライアンスは大丈夫なのだろうかと心配になった。

 次第に映像が拡大され、画像の荒ささがに綺麗になっていき事件の様子がよくわかるようになってきた。

「こんなもんでどうでしょうか?」と言われ映像を再生すると見たかった場所がはっきりと写っていた。

警官の話では下水管の圧力が上がりマンホールの上にいた軽トラックがその圧力で吹き飛ばされたと言っていたが、その瞬間の映像にはマンホールが飛んだ様子も圧力が上がった原因の下水が飛び散った様子も写っていなかった。

「凄いですね、この車どうしちゃったんですか?」と池谷さんは驚いた様子で言った。

「超能力なんですかねえ。」と映像を見ながら私は呟いた。

「超能力ですか〜。そういえば冷戦中アメリカとソ連では超能力の研究がされてたらしいですよ、知ってました?」

「胡散臭い年末の番組とかで見た気がします。」

「まあ、噂なんですけどね。どうも昔有名になったユリゲラーもCIAの超能力スパイだとか。」と言われずっと胡散臭くなった。

「そう言うのって何処に取材にしに行けば良いんですかねえ?」

「えっ、取材ですか?アトランティスですかねえ。」

「アトランティスって沈んだ大陸の?」

「よく知ってますねえ、でも違います月刊の方です。」

「月刊アトランティス?ディアゴスティーニとかアシェットですか?」

「違いますよ。同じ雑誌ですけどこっちは、オカルト専門誌です。」

「オカルトですか?」

「そう、川口浩探検隊とか。」

「ああ、藤岡弘探検隊とか矢追純一とかですね。」

「そうそう水曜スペシャルみたいな企画です。」

「大丈夫ですかね?そういうとこで取材して。」

「緒方さん、メンインブラックって知ってます?」

「宇宙人が出てくる映画ですよね?知ってますよ。」と言われ例の黒尽くめの男たちを一瞬思い浮かべた。

「あの映画でトミーリージョーンズがゴシップ誌から情報を探すでしょ。アレですよ。」

「アレは映画でしょ。」

「蛇の道は蛇ですよ。」

「はあ。」探すあてもなかったので月刊アトランティスの編集部にアポを取って行ってみることにした。
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