第1話

文字数 945文字

ここは、生の終わり。いわゆるあの世というやつだ。

私は、サバンナを駆け巡る人間で言うチーターという動物のメスだ。
生きていた頃は草原を走り回り、自分のために何十頭もの草食動物を狩っていたものだ。
だが、わたしは平均的なチーターよりも早死したらしい。
まぁ、確かに子を成すこともなく独身のまま死んでしまったのである意味自分でも納得だ。
なぜこんな事になったかというとある動物の雄との出会いが原因だ。

その雄は人間で言うガゼルで、群れからはぐれたのか一匹だけでぽつんと草原にたたずんでいた。
良い獲物が見つかったと喜び狩りの準備をはじめると、ふと雄のガゼルと目があった。
これはまずいか?と狩りの失敗が頭をよぎるとなぜか、向こうの方からこちらにやってくるではないか。

「やぁ。もしかしなくても僕を食べようとしているのかい?別にいいよ。」

いきなりのとんちんかんな発言に私は言葉を失った。

「人間に捕まるよりはずっとましだよ。」

私の驚きを察知したのかガゼルはそう付け足した。

「人間を憎んでいるの?」

「そう。だから奴らに捕まる前にこの生を終えたい。」

そう言ったガゼルはつかれた目をしていた。

「理由は聞かないでくれ。どうが僕を食べてほしい。」

その時だ。

ブロロロロロロロ!!!!

けたたましい音の洪水が流れてきた。
これは人間が移動するために使っている鉄の生き物だ。

「「!!?」」

ガゼルと私、二匹とも硬直して何が起こるのかと戦々恐々した。

ただ

何も起こらない

鉄の生き物は

ただ

そこに止まってこちらを観察しているようだった

しかし

ダァアアアアン!!!

銃声が響き渡る

「!!どうして!!」

ガゼルの言葉はもっともだと思う。
なぜか銃弾はわたしのお腹に打ち込まれた。

「だから人間は嫌いなんだ!僕の命の恩人まで殺すなんて!!!」

(恩人ってどういうことかしら)

少しずつ暗くなっていく意識に沈みながらそんなことを考えた。





そして今
天国というところにいるのだが
どうやら私は子供の頃、狩りの練習に子どものガゼルを捉えたが失敗して逃がしてしまったこと
その子どものガゼルのそのまた子供があの雄のガゼルだったらしい

いまは、大自然の天国のなかでゆうゆうと暮らしている

そこに一匹の老いたガゼルがやってきた。

「やっと見つけた。絶対天国にいると思ったんだ。」

それも、そうね
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