第1話

文字数 853文字

月曜日
「あなたのミスをフォローするために仕事してるわけじゃないんですけど!!!」
相手はもちろん、フロア全体も静寂に包まれてしまった。取引先に怒る37歳独身彼氏なし。最悪の響きだ。
3年自分のアンガーコントロールをするために、自分の行動の最後に年齢独身彼氏なしとつけて響きが悪くなければよしとする。自分の中でそう決めたのに、週明け早々やってしまった。

火曜日
「なんでこんな効率悪いやり方するんですか?事務仕事に独創性とかいらないと思うですけど。」
2日連続でフロアが静寂に包まれてしまった。目の前にいる係長は黙って少し下を向いている。またやってしまった。上司に盾突く37歳独身彼氏なし。2日続けて最悪だ。

水曜日
コーヒーショップで気分を変えるために買ったコーヒーのオーダーが間違っていた。2日続けて最悪な行動をしてしまったせいだろうか。後ろめたさから間違えを指摘出来ず出されたものをいただくことにした。

木曜日
仕事を早めに終わらせてヨガ教室に。アンガーコントロールのために始めたヨガだか、これがことの他よくて続いている。ヨガで体調をコントロールする37歳独身彼氏無し。難はありそうだが悪くない響きだ。

金曜日
今週もようやく終わる。週末は自宅で映画を見るのが楽しみの一つだ。今回は恋愛映画。恋愛映画を見るたびに結婚について考える。30代は婚活を頑張っている人が多いイメージだが、こんなに毎週怒っていては婚活なんて遠い未来だ。世の中の同年代の女性は自分のアンガーとどう戦っているのだろうか。私のアンガー力が強すぎるのだろうか。アンガーの考察が始まり、気がつけば画面からはエンドロールが流れている。そして机の上の携帯にはLINEの通知が。
「係長に言ってくださったので助かりました。ありがとうございます。」
後輩からのお礼メールだ。自分のアンガーで誰かに感謝されたことが、嬉しかった。
「でも37歳独身彼氏なしを来週は一回も登場させないぞ!」
小さく呟きもう一本映画を見るためにチャンネルを取った。24:50、週末の夜はまだまだ長い。





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