第1話

文字数 1,095文字

6時限目の世界史が終わり、帰りのホームルームで眠くなった俺は途中で寝落ちしてしまった。「おーい、起きろー」という友達の声で目が覚めて、慌てて時計を確認するも、帰りのホームルームからは5分程しか経っていないようだった。友達が爆笑していたので、「おい笑うなよぉ」とふざけながら友達の方を向いた。その時、友達の頭の上に「悪」という文字が書かれたプレートのようなものが乗っていることに気づいた。
「頭に何着けてるんだ?」と聞くと、友達は不思議そうに「何も着けてないぞ?まだ寝ぼけてんのか?」と返した。いや、そんなはずはない。俺は完全に起きてるし、目がぼやけてるような感じもない。そして俺は、その悪と書かれたプレートを皆が着けていることに気づいた。その後も何人かに聞いて回ったが皆、口を揃えてそんなもの着けていないと言った。友達が「本当に大丈夫か?」と聞いてきたので、俺は「だいじょぶだいじょぶ、でも今日ちょっと1人で帰るわ。」と友達を突き放すように学校から逃げ出した。
学校を出ても道行く人は皆、悪というプレートを頭に着けて歩いていた。俺は、ついに超能力に目覚めたのか?とワクワクしたり、自分だけが見えているという疎外感から少し怖くなったりして情緒がおかしくなった。少し道を歩いていると、俺はもう1つの異変に気づいた。それは中学生くらいの背丈の女の子が着けていたプレートだった。それは悪というプレートではなく善と書かれたプレートだったのだ。俺はもしかして…と思い、少し考えて結論を導きだした。これは悪人か善人かを示しているのではないか、と。基準はわからないがおそらくそうだろうと考えた。そして基準はものすごく低いものなのだろうとも考えた。だっておかしいじゃないか。同級生や友達、先生、道行く人がほとんど悪人だなんて。俺は善人はどんな人なのだろうと町を探し歩いた。
すると、善人の集団を見つけた。それは保育園児だった。園児何人かが入れるカートで散歩をしているようだった。それを悪のプレートを着けた保育士が押している。なんだかよくわからないが皮肉を感じた。
それ以降、善人は見つからず、気づいたら家に着いていた。俺は家から好物のハンバーグの匂いがしたので、急いで家に入りリビングに向かうと、妹と両親が食卓を囲んで座っている。そして俺はまた少し怖くなった。家族全員悪と書かれたプレートを着けていたからだ。まぁ友達も悪だったのだし、と自分を説得させようとした時俺はあることに気づいて、不安の中に少しの期待を混ぜながら洗面所へ向かった。そこで俺は鏡を見ながら「はぁ。まぁそうだよな」とため息混じりに落胆の声を上げた。
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