第1話

文字数 999文字

病気をもらわないようにと、子どもが一歳になるまではできるだけ外出自粛していたが、コロナによって延長を余儀なくされ今に至る。
何日か前に夫から提案された「お母さん感謝デー」が本日無事に開催された。
日頃家事、育児を頑張っている私にランチでもしておいでと言うのだ。
子どもにご飯を食べさせてくれる上に、夫のポケットマネーからお小遣いまでいただき有頂天になったが、「だけど、コロナにかかったら恨むからね」の一言で凍りつく。
外食に送り出しといてそれは厳しくないか?と思いつつも、ありがたいことには変わりないので、決してかかりませんと誓って家を出る。
普段外食しないのでどれだけの人がランチに繰り出しているのかわからなかったが、リーズナブルなイタリアンのチェーン店に向かった。
今のご時世だし、そんなに人もいないだろうと思っていたら駐車場はほぼ満車で、ガラス張りの店内はお客さんで賑わっていた。
夫への誓いが頭をよぎり、ここでは食べられない!と思った。
とっさに第二候補が思いつかなかったがなんとか絞り出し、次の店へとハンドルを切る。
第二候補はちょっとお値段高め(だったはず)だし、そんなに人はいないだろうと思いながらまあまあの距離を走らせると、そこにも車は五台停まっていた!
さっきよりはマシだが、まさかここにも人がいるとはと頭を抱える。
私は要は、無人の飲食店を探していたのだ。
一軒目よりは少ないが、値段も気になって新たな候補を脳内検索するも思いつかず、スマホのお気に入りに何かないかと探すとあるではないか、いつか行ってみたいと思っていたチェーン店だ!
ここまで来たらもう行くしかないと、とうとう第三の地へ旅立ったが、着いてみればそこも車がいっぱい、もうこれ以上は夫にも迷惑がかかると諦めて店に入る。
結果的に私は百人近くも収容できる、最もクラスターが起きそうな店を選んでしまっていた。
しかも、運転中は早く出てきそうな物を注文しようと思っていたのに、いざメニューを前にするとボロが出て、いかにも時間がかかりそうで熱くてなかなか食べられなさそうなビーフシチューを頼んでしまった。
注文した後で後悔するも後の祭り。せめてもの償いで、料理が来るまではマスクをして雑誌をめくる。
ビーフシチューを食べ終わって店を出る時には、けっこうな人数が並んで待っていた。
コロナ禍と言っても日曜日だし、みんなわりと外食してるのね…と痛感した一日だった。
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