第1話

文字数 2,805文字

私は占いが好きで、占い師や占いライターをやったことがあるくらいだったのです。
自分で占うのも好きだし、他の占い師さんにお願いするのも好きだった。

過去形なのは、占い師にお願いをするのを、今月でやめてしまったからです。
なんかもう、占い結果に一喜一憂する自分が、面倒だなと思ったし、さらにやめようと決めたきっかけが「すごく当たる占い師に出会って怖くなった」というのもありました。

最初の、占い結果に一喜一憂というのは、例えば「××をしたいのですが、それは私に向いていますか?」と、占いを頼むんですよ。
そこで「イエス、ぜひやるべき」「ノー、それは進む道ではない」とか答えが出ます。
結果を読んで「よしがんばる!」「今回はパスだな」と、決めてしまっていました。
しかしよく考えれば、私はなにも始めていないし、本当にそれは「イエス」「ノー」で割り切れたことだったのか。
思い返せば、怠ける理由が欲しかったのかもしれません。あとは、スタートラインに立つ勇気が無かったとかね。

この、イエスノー占いは、ココナラでたいへん安価だったので、よく利用しました。
まあ「安価」というのもワナだったんでしょうけど。

自分でなにもスタートせずに、先に占いで結果を求めて、それであきらめてしまう自分が、どうかなあと思いました。

占いというのは、ハマると、キリがないんです。
年運とか、健康運とか、お願いしたりしましたが、回答が気に入らないと、また別の占い師に依頼するという、すごい悪循環になりました。
良い結果が出れば疑うし、悪い結果が出れば不安になって、次の占い師を探す……。
私は結構な依存状態に陥ってしまったのです。

そんなこんなで、とある関西の有名占い師に「来年の運気を教えてください」って依頼したんですね。
これが!すごく当たったのです!
特に「5月に注意。健康運は底に陥り、創作活動もひとやすみとなるでしょう」という、ドンピシャな予言をいただきました!
実際に今年の5月は、持病の悪化で、創作活動どころではなくなりました。ヤバかったくらいの一か月でしたよ。
しかし。
これは(ちょっとオカルトな話ですが)「あの占い師さんが未来を引き寄せたのでは?」と思うようになりました。
占い師は、未来を当てる人と、良くも悪くも引き寄せる人がいる。
私の仮説ではありますが、ちょっとそういうのを疑っています。

だから「5月に注意。健康運は底に陥り、創作活動もひとやすみとなるでしょう」という予言は、私の未来を当てたのではなく、私に与えられたものだったのだと、確信のような気持になりました。
これはきっと、天から「あなたは占いに頼り過ぎです!」という、注意だったのかもしれません。

それから、占い師のTwitterで「占い師は依頼者の(業や、負の感情のようなもの)を被る。しかし、依頼者だって同様に、少しは被る。影響がないわけはない」というようなつぶやきを読みました。
これだ!こういうのは絶対にある。
だから、占いの結果に、都合よさを求めて、いろいろさまようと、いろんな業や負の感情を、こっち(依頼者側)も、かなり背負うことになる。

すごく反省した私は、即ココナラを解約しました。
参考になったな、と思うことも多々ありましたが、自分の努力を顧みなかった安易さに、猛反省したのです。

しかし人間はなぜ占いにハマるのでしょうか?
人によっては、数百万円の課金も、珍しくありません。
私は、占い師側にもいたので、ヘビーユーザーな依頼者を、何人もお見かけしました。
共通しているのが「孤独感を持っている」「未来への強い不安」「ストレスによる暗示のかかりやすさ」でした。
友人もいるし、パートナーにも恵まれているのに……というような人でも、心に闇を抱えて、どうにもならない孤独感と闘っているケースがあります。
だから、私が所属していた占い会社では「身近な人と会話をしましょう、という回答は厳禁です。そもそも占いに来る人には、深い会話をしてくれるような人が、そばにいないのです」と、注意されました。
だから、ヘビーユーザーな依頼者は、占い師を絶対の指導者のように見てしまう。

そして「未来への強い不安」です。
仕事は続くのか、結婚はできるのか、というようなことが、不安材料になるタイプが、世間には多くいます。人によっては、良い階級の家に生まれついて「この暮らしはいつまでできるのでしょうか?」と何度も問うことがあります。
それは本人の気質や体調が、社会に合わないなど、どうしようもない事情があったりします。家族問題、パートナーとの不仲なども。
しかし、そういったケアをしてくれる場所は、本当に少ない。
せいぜいカウンセリングでしょうか。しかしカウンセラーは、未来を提案しない。
ヘビーユーザーな依頼者が欲しいのは、未来を確信させるスピリチュアルな言葉なのです。

そういった不安を重量化して、最終的にメンタルは「暗示にかかりやすくなる」状態になります。
そうなると、洗脳状態に近いから、占い師への依存も止まらなくなる。
さらにノルマを課す占い会社も、当然あります。
占い師そのものが、上司からノルマと言われれば(生活かかってるし)ヘビーユーザーな依頼者に対して、支配的な態度になるでしょう。
こうなると、占いへの高額課金は、当然の流れになります。

ただここまで来ると、占い師そのものにも、すごいストレスになるので、何百万円も引っ張れる人は稀ですね。
でも可能かどうかと問えば、できます。
そういうのに引っかかると、本当の洗脳になってしまうのです。

占い依存は、薬物やアルコール同様に扱うべきだと、私は思います。
でも占い依存って、まだまだ軽く見られるから。
某ユーチューバー精神科医が、笑いながら「占いなんて、くだらないし、ウソなんですよー」と言い放ったのを見て、私は、この人は何も知らないし、見えていないんだろうなと思いました。

占いがくだらなくて、ウソなら、なぜ大金を払う人が止まらないのか。
洗脳状態になってさらに、占いに通う人が存在するのか。
一切説明もなく、笑って終わりにした精神科医を見ると、そしてその意見にいいね、がいくつもついたのを見ると、結局「そもそも占いなんか」と見下した状態が、今の社会であり、その隙をついて、どんどん占い依存者が(そしてその家族が)困惑しながらも増産されていくのでしょう。

とりあえず私は、占い師にお願いするのをやめました。
今は娯楽として、毎日の運勢をネットで読むくらいです。そして読んだ直後に忘れちゃうんですが……。
そんなのが適当で良いのかもしれませんね。

※占い師の名誉として書き足しますが、ほとんどの占い師は「依頼者が地に足の着いた考えになりますように」と、占いの結果を告げます。
大金を取るような、ひどい占い師は、全体からみて少数派ですよ。
でも基本的に占い師を、あちこち回るものではないと思います。あんまり頼るのもね……。

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