カノコの超能力
文字数 2,011文字
カノコには超能力がありました。
それは生まれつきのカノコの力でした。
どうしてそんな力があるのかは、分かりませんが、宇宙人が友達の秘密を教えてくれたり、未来が視えたり、果ては宙を飛べたりしたのです。
幼稚園で宙を飛んでみせると、友達はみんなスゴイ、と笑って喜んでくれます。
それで、カノコは調子にのって宇宙人が教えてくれたひみつをしゃべってしまいました。
「ミサちゃん、きのうおねしょしたんだってね」
いたずら心から出た秘密の暴露でしたが、ミサはどうして知っているんだとカンカンになって怒りました。
そんなミサにカノコは悪びれもなく言ったのです。
「だって宇宙人が教えてくれたから」
得意気になったカノコでした。
「宇宙人なんているわけないじゃない」
とミサは言いますが、カノコは「私にだけは分かるの」と笑って言います。
「たとえば、あしたは地震がおきるわ。わたしは未来も分かるのよ。超能力っていうの」
カノコの言う通り、次の日には地震が起きました。
幼稚園の友達たちは、超能力を持つカノコが薄気味悪くなってきました。
仲が良かったミサも遠巻きにカノコを眺めるだけです。
とても悲しくなったカノコは、おばあちゃんに相談しました。
するとおばあちゃんは言いました。
「それはカノコが悪いよ。超能力なんて誰も持っていないんだから。誰にも言ってはいけないことだったんだよ。これからは秘密にしているんだよ」
そう言って、カノコを抱きしめました。
カノコは泣きじゃくりながらおばあちゃんに約束しました。
「もう、超能力のことはだれにも言わない」
と。
それから月日がたちました。
カノコは社会人になっていました。
今までの人生で、超能力のことをひた隠してきた反動か、カノコはとても口数がすくない女性になっていました。
本当の自分を知ってくれる人もいない。
超能力で誰かの秘密が分かっても、未来が視えても、カノコは黙っていました。
それは、とても孤独でした。
それでも、カノコを愛するおばあちゃんが、カノコにはいました。
おはあちゃんは一人ぼっちのカノコにとって、唯一の心の拠り所でした。
たった一人でもいいんだ。
自分をこころから愛してくれる人がいれば。
カノコはそう思っていました。
そんなある日、カノコは夢をみました。
それは大好きなおばあちゃんの夢でした。
「カノコや。おばあちゃんもお迎えがきたようだよ」
「お迎え? なんの?」
「天国に行くのさ」
それを聞いてカノコは心臓がつぶれるかと思いました。
「やだよ! 天国になんて行かないで! ずっと私と一緒にいてよ!」
カノコは泣き叫びました。
カノコの超能力を知っているのは、今はこのおばあちゃんだけ。
そして、カノコの本当を知っているのも、おばあちゃんだけ。
おばあちゃんがいなくなったら、カノコはこの広い世界に独りぼっちになってしまいます。
「お迎えが来るのは順番だからしょうがないやね。でも大丈夫」
おばあちゃんは言いました。
「何が大丈夫なの?」
「私がカノコの超能力も天国へもって行ってあげるから」
おばあちゃんはにこりと笑いました。
「だから、もう友達の秘密を知ったり、未来が視えたり、宙を飛べたりすることは無いよ」
「それでも大丈夫じゃないよ! おばあちゃんがいなくなっちゃうなんて!」
カノコは子供のように泣きじゃくりました。
「大丈夫。さあ、手を出して」
カノコは差し出された手を握ります。
すると、その手から光をはなって冷たい感触がカノコからおばあちゃんへと流れて行きます。
「これで、もう本当に大丈夫。カノコはもう普通の人だよ」
そう言うと、おばあちゃんはカノコへ背を向けて、後ろに広がる草原を歩いて行きました。
カノコはおばあちゃんのあとを追おうとしたけれど、足がどうしても動きません。
おばあちゃんが見えなくなるまでカノコはその場で泣いていました。
目が覚めると、やはりおばあちゃんは亡くなっていました。
でも、その日は、宇宙人が秘密を話しかけてくることも、未来が視えることもありません。
試しに宙を飛んでみようとしたけれど、飛べませんでした。
「おばあちゃん……」
カノコはおばあちゃんの言った通り、超能力が消えていたのです。
今まであった超能力が消えているのは、とても不思議な感じがしました。
唯一カノコを愛してくれていたおばあちゃんがいなくなった今。
カノコは一人で生きて行かなくてはいけません。
いえ、もう超能力がなくなったから、誰かカノコを好きになってくれる人が現れるかもしれません。
おばあちゃんがいなくなって絶望に突き落とされたけれど。
もうカノコには、未来は視えません。
だから不安にもなるけれど、その代わりに未来に希望を持つことが出来ました。
たった一人でいい、だれかを愛し、だれかから愛されるようになれれば。
きっと幸せになれる、と。
END
それは生まれつきのカノコの力でした。
どうしてそんな力があるのかは、分かりませんが、宇宙人が友達の秘密を教えてくれたり、未来が視えたり、果ては宙を飛べたりしたのです。
幼稚園で宙を飛んでみせると、友達はみんなスゴイ、と笑って喜んでくれます。
それで、カノコは調子にのって宇宙人が教えてくれたひみつをしゃべってしまいました。
「ミサちゃん、きのうおねしょしたんだってね」
いたずら心から出た秘密の暴露でしたが、ミサはどうして知っているんだとカンカンになって怒りました。
そんなミサにカノコは悪びれもなく言ったのです。
「だって宇宙人が教えてくれたから」
得意気になったカノコでした。
「宇宙人なんているわけないじゃない」
とミサは言いますが、カノコは「私にだけは分かるの」と笑って言います。
「たとえば、あしたは地震がおきるわ。わたしは未来も分かるのよ。超能力っていうの」
カノコの言う通り、次の日には地震が起きました。
幼稚園の友達たちは、超能力を持つカノコが薄気味悪くなってきました。
仲が良かったミサも遠巻きにカノコを眺めるだけです。
とても悲しくなったカノコは、おばあちゃんに相談しました。
するとおばあちゃんは言いました。
「それはカノコが悪いよ。超能力なんて誰も持っていないんだから。誰にも言ってはいけないことだったんだよ。これからは秘密にしているんだよ」
そう言って、カノコを抱きしめました。
カノコは泣きじゃくりながらおばあちゃんに約束しました。
「もう、超能力のことはだれにも言わない」
と。
それから月日がたちました。
カノコは社会人になっていました。
今までの人生で、超能力のことをひた隠してきた反動か、カノコはとても口数がすくない女性になっていました。
本当の自分を知ってくれる人もいない。
超能力で誰かの秘密が分かっても、未来が視えても、カノコは黙っていました。
それは、とても孤独でした。
それでも、カノコを愛するおばあちゃんが、カノコにはいました。
おはあちゃんは一人ぼっちのカノコにとって、唯一の心の拠り所でした。
たった一人でもいいんだ。
自分をこころから愛してくれる人がいれば。
カノコはそう思っていました。
そんなある日、カノコは夢をみました。
それは大好きなおばあちゃんの夢でした。
「カノコや。おばあちゃんもお迎えがきたようだよ」
「お迎え? なんの?」
「天国に行くのさ」
それを聞いてカノコは心臓がつぶれるかと思いました。
「やだよ! 天国になんて行かないで! ずっと私と一緒にいてよ!」
カノコは泣き叫びました。
カノコの超能力を知っているのは、今はこのおばあちゃんだけ。
そして、カノコの本当を知っているのも、おばあちゃんだけ。
おばあちゃんがいなくなったら、カノコはこの広い世界に独りぼっちになってしまいます。
「お迎えが来るのは順番だからしょうがないやね。でも大丈夫」
おばあちゃんは言いました。
「何が大丈夫なの?」
「私がカノコの超能力も天国へもって行ってあげるから」
おばあちゃんはにこりと笑いました。
「だから、もう友達の秘密を知ったり、未来が視えたり、宙を飛べたりすることは無いよ」
「それでも大丈夫じゃないよ! おばあちゃんがいなくなっちゃうなんて!」
カノコは子供のように泣きじゃくりました。
「大丈夫。さあ、手を出して」
カノコは差し出された手を握ります。
すると、その手から光をはなって冷たい感触がカノコからおばあちゃんへと流れて行きます。
「これで、もう本当に大丈夫。カノコはもう普通の人だよ」
そう言うと、おばあちゃんはカノコへ背を向けて、後ろに広がる草原を歩いて行きました。
カノコはおばあちゃんのあとを追おうとしたけれど、足がどうしても動きません。
おばあちゃんが見えなくなるまでカノコはその場で泣いていました。
目が覚めると、やはりおばあちゃんは亡くなっていました。
でも、その日は、宇宙人が秘密を話しかけてくることも、未来が視えることもありません。
試しに宙を飛んでみようとしたけれど、飛べませんでした。
「おばあちゃん……」
カノコはおばあちゃんの言った通り、超能力が消えていたのです。
今まであった超能力が消えているのは、とても不思議な感じがしました。
唯一カノコを愛してくれていたおばあちゃんがいなくなった今。
カノコは一人で生きて行かなくてはいけません。
いえ、もう超能力がなくなったから、誰かカノコを好きになってくれる人が現れるかもしれません。
おばあちゃんがいなくなって絶望に突き落とされたけれど。
もうカノコには、未来は視えません。
だから不安にもなるけれど、その代わりに未来に希望を持つことが出来ました。
たった一人でいい、だれかを愛し、だれかから愛されるようになれれば。
きっと幸せになれる、と。
END